表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
194/243

第七章 イムペラトル 場面六 夜明けの海(二)

 アントニアは立ち止まって貝を拾い、砂に洗われた小さな丸い石を拾い上げ、それを女奴隷に手渡した。ティベリウスは義妹の白い指先や、ほっそりした首や、結い上げられた豊かな栗色の髪、マントを身につけていても判る、華奢な肩を眺めるともなく眺めながら、黙ってその後ろに続いた。

 変化の少ないロードス島での生活の中では、手紙が大きな楽しみの一つだった。義妹は約束したとおり、ドゥルーススのことや邸のこと、そしてローマで起こった様々な出来事まで、実にこまごまとティベリウスに書き送ってくれた。一年や二年のことならともかく、七年もの間、途切れることなくそれは続いたのだ。その数は百通を優に越え、細かいものも合わせればひょっとすると二百通ぐらいあるかもしれない。ローマに戻ってからその話をすると、義妹は頬笑んで言った。

「そんなにたくさん書いたかしら。あまり意識していなかったのだけれど、七年分ですものね」

 ティベリウスは私室の文箱を見せた。父の遺品で、元々文箱ではなく衣装箱だったのだが、これほど多くの手紙をまとめて保管できる文箱などそうはない。証拠を見せられて、義妹はちょっと赤面した。

「本当に、全部わたしの手紙?こんなにたまっていたの」

「七年分だ」

「ティベリウス、どうかお願いだから捨てて下さらない? つまらないことばかり書きちらしてしまって」

 無論、そんなことが出来るはずもなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ