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第七章 イムペラトル 場面四 国父アウグストゥス(一)
建国暦七六〇年(紀元八年)が明けて、春を迎える前にティベリウスは久しぶりにアウグストゥスと対面した。場所はローマではなく、アドリア海西岸に位置し、ローマ人の入植以来二七〇年の歴史を持つ古都アリミヌムだ。ローマからはフラミニア街道を通り、ポピッリア街道を経てアクィレイアに至る途中にある。アクティウムの海戦に勝利し、「アウグストゥス」を名乗ったばかりの頃のアウグストゥスに捧げられた巨大な門が街のシンボルとなっているこのゆかりの街を、アウグストゥスは地方視察も兼ねて訪れていた。ティベリウスはゲルマニクスを伴い、五百マイル(七四〇キロ)の道のりを南へと下った。
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