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第七章 イムペラトル 場面三 アウグストゥスの焦燥(二)

 数千という単位で続々と到着する兵たちに対し、まず悲鳴を上げたのは、会計監査官を始めとする軍の事務部門だった。

 行軍中の食糧は当然携えてくる。だが、その後の彼らの生命を維持する責任は、当然のこととして本営にかかってくる。

 彼らを収容する施設も不足どころの話ではなかった。ローマよりもずっと北に位置するこの地は、冬は雪に鎖される。テントを張った仮陣営で冬を越すというわけにはいかない。単純に寝泊りするだけの空間のみならず、浴場も医療施設も、これだけ多数の兵に提供できる規模のものではない。

 戦力の面から考えても、新兵や退役兵たちは、訓練を施さなければ戦力にはなりえない。訓練のためには時間も人手も要る。今まさに戦役を続行中という状況で、そんな余裕はどこにもなかった。

 そして、最も頭が痛いのは、指揮官の不足だった。

「一体アウグストゥスは、一人の指揮官がどれだけの兵を指揮できると考えているのだろう」

 アウグストゥスを(けな)すことなどまずなかったティベリウスだったが、さすがにこの時ばかりは苦笑交じりにサトルニウスに漏らした。言われたサトルニウスも苦笑するしかない。

 アウグストゥスは、軍事的な才能の欠如ということもあったが、本質的に机上作業の人間だ。重要な戦いではさすがに前線に立ちはしたが、実際に指揮を取ったのは神君カエサルであり、将軍アグリッパであり、ティベリウスやドゥルーススだった。実戦で指揮を取った経験がある人間なら、一人の司令官に十五万もの兵を与えるなど初めから考えもしないはずなのだ。

 まして、今回の戦役において、実際に戦われている戦闘のほとんどは少人数によるゲリラ戦であり、局地戦だ。平原に布陣して行う大規模な会戦ではない。

ティベリウスが早々に方針を決めなかったなら、軍の機能は恐らく完全に麻痺していただろう。

 ティベリウスは、アウグストゥスに書簡を送った。


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