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第六章 属州の反乱 場面五 元老院(四)
ドゥルーススはもう一度、必ず明日早々にアウグストゥスに会い、このことを伝えると約束した。
「遠路ご苦労だった。部屋を用意させるから、ゆっくり休んでくれ。それとも、ここに泊まるよりも家に戻る方がいいか」
セイヤヌスは微笑する。
「嬉しいお心遣いですが、公務中ですので」
「帰ってやればいい。それぐらい喜んで許可するよ。何なら子供たちに顔を見せるだけでも」
重ねて勧めると、セイヤヌスは丁寧な口調で言った。
「ありがとうございます。では、明日少しだけ」
「何人いるのだ?」
「残念ながら、妻は一人です」
人を食った返答に、ドゥルーススはつい噴き出す。
「子供だよ」
「男が二人です」
セイヤヌスも笑いながら答える。ドゥルーススは席を立った。この男は父相手にもこんな調子なのだろうか。まさかとは思うが。想像すると少しおかしかった。




