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第四章 動き出した時間 場面五 奥津城(四)

 ゲルマニクスのことを偉そうに言うこともできない。ドゥルースス自身、父の抱いている思いなど、その万分の一も理解できてはいないのだろうと思う。それでも、ユリウス・カエサル家に養子に入るという決断が、父にとっていかに大きなものであったか、その片鱗ぐらいは感じ取れる気がする。弟としてゲルマニクスを支えて欲しい―――そうドゥルーススに告げた時、ティベリウスはどこか辛そうだった。ローマのために、父は何かを捨てたのだった。それはネロ家というべきなのか、もっと大きな―――父のルーツとも言うべきものなのか。ドゥルーススには判らなかった。

 だが、もう問うまいと思う。事実のみを静かに告げた父。釈明もせず、理解すら求めない父は、九年前、ロードス島へ去った時と少しも変わらず孤独で厳しかった。だがその背を、今ドゥルーススはとても近しいものに感じたのだった。紛れもなく父として、息子として。

 何に祈ればいいのか判らない。祖父にか、神々にか―――。だが、ドゥルーススは祈った。

 どうか―――この父と共に行けますようにと。

 力ある者たちよ。その力を、どうかこの身にお授け下さい。命が尽きる日まで、この孤独な人と共に進んでゆけるように。それは祈りであり、誓いでもあった。


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