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第四章 動き出した時間 場面四 後継者(六)

 日々は、恐ろしい勢いで過ぎていった。

 ガイウス・カエサルの遺体はミュラの地で荼毘に付され、軍団兵たちによって遺骨がローマの地に運ばれた。広場で追悼演説をしたのは、弟のポストゥムスだ。葬儀は春の空気の中、厳粛な雰囲気の内に行われた。ほどなくアウグストゥスとティベリウス及びポストゥムスの、そして、ティベリウスとゲルマニクスとの、二つの養子縁組が元老院で報告され、許可された。

 この時の元老院は、ユリウス議事堂で行われた。年老いてはいても、いまだに張りとある種の力を失わないアウグストゥスの声が、静まり返った堂内の隅々にまで響いた。

「この国のため、わたしはティベリウス・クラウディウス・ネロ並びにアグリッパ・ポストゥムスを、ユリウス・カエサル家の養子に迎えたい」

 元老院の議場に足を踏み入れるのは、九年ぶりのことだった。皆、一様に好奇の視線でアウグストゥスとティベリウスを見た。「この国のため」という表現を、後で人々は面白おかしく噂したものだった。アウグストゥスがわざわざこの言葉を附したのは、今回の養子縁組は孫の死でやむを得ずしたことであり、決して本心からの望みではない、ということを、この第一人者は告白しないではいられなかったのだ、と。

 養子縁組は満場一致で承認された。そしてこれもアウグストゥスの要請で、ティベリウスには再び五年期限で更新の可能性がある「護民官特権」が付与され、二十二人の政務官からなる政策決定委員会(コンシリウム)(内閣)の常任委員となることが認められた。政策決定委員会のメンバーは、現在は第一人者アウグストゥス、執政官二名、法務官、財務官、造営官、監察官から各一名、それに抽選で選ばれた十五名の元老院議員で、計二十二名。これにティベリウスが加わって二十三名になる。現在の常任委員はアウグストゥスただ一人であり、引退前のティベリウスでさえ、この立場は与えられていなかった。この立場にあったのは、今は亡きアグリッパ将軍ただ一人だったのだ。ティベリウスは公私共にアウグストゥスの後継者に昇格したのだった。

 ティベリウスは養子縁組が承認されてから、成立するまでの間に少しの猶予をアウグストゥスに願った。

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