表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔取引  作者: 藤ミサ
1/1

デビルズトランザクション

藤原奏は手を伸ばした。朦朧とした意識の向こうに伸びている無機質に白く、どこか暖かい手を握ろうと。


「俺は死ぬのか。」


そして意識の糸はプツリと切れた。





「...さん。.に...さ..ん。兄さん起きて!」


どこからか聞こえる可愛らしい声に奏は重い瞼を開ける。

そこには妹の実がエプロンを着けて立っていた。


「今日は学校行かない。」


そう吐き捨て逃げるように寝返りをうつ。


「もう。すぐ夏休みで、あと少しの辛抱だからがんばろうよ兄さん。」


「兄さんは今日から夏休みなんだ。」


「ほら、早く起き...て!」


奏が我が儘な子供のようなことを言うと実が布団を引っ張りだした。

その後結局学校へ行くことになった。





奏は幼い頃に母を亡くし、妹の実と二人で暮らしていた。父親は研究者をしていた。だが、現在は行方不明である。


「今日はどこで時間を潰そうか。」


実に押し出される形で家を出た奏は夏の日差しを浴びながら学校とは真逆の方角に進んでいた。学校へ行く気はさらさら無い。奏は学校が嫌いだった、なぜならあいつらは悪魔という存在を神として見ているからだ。悪魔が取引で希に与えてくれる力を欲していたりするのだ。


「とりあえずここで休むか。」


歩き始めて数分。地下へと繋がる細い階段を見つけて下ると、そこに喫茶店があった。

入店するとそこは閑散としていた。黒いコートを着た客が一人、そして髭を生やした白髪の店主らしき者が一人いた。


「席は自由に座りな。」


店主が穏やかな声で言ったので、適当にカウンター席に座った。何も入っていない鞄を下ろす。


「コーヒーを一杯。ブラックで。」


何か頼まないとばつが悪いので必ずあるであろうブラックコーヒーを注文した。するとはいとだけ返事をしてコーヒーを慣れた手つきで作り始める。

やることもないので店内を見渡す。木を素材としたシンプルな喫茶店で明かりも柔らかく少し暗い。そうぼんやりと思っていると壁に貼られた髪が目に飛び込んできた。


(非合法悪魔処理ギルド黒の巣解散)


張り紙にはそう書かれていた。


「どうしたんだい?まじまじと見て。」


抽出したコーヒーを奏の前に置いて店主が訪ねる。


「あぁ。黒の巣というギルドはなんで悪魔を退治をしていたのに政府に敵対されたのかなぁって。」


「あー、それは世の中の悪魔に対する考えが変わったからだ。」


「どういうことですか?」


「君もときどきこう思うことはないかい?悪魔と契約したら強大な力が身に付くんじゃないかって。」


「そういうことですか。」


奏はそう呟いてコーヒーを啜る。


「最初は政府も悪魔という存在を気味悪がって武力で殲滅させようとしていたんだ。でも彼らは悪魔の力に欲望が働いた。」


「おじさん詳しいんだな。関係者とか?」


奏が冗談で言うと店主は手を振った。


「いやいや、関係者だったら政府に捕まって投獄されてるさ。」


「だよな。でも俺はこの黒の巣は正しいことをしたと思うぞ。」


「なぜ?」


「まぁ俺も世の中に知られていない悪魔の一面を知っているからな。なぜなら母さんが...悪魔に殺されたからな。」


奏は悪魔に対する怒りを圧し殺して言葉を繋げる。


「そうか。じゃあ君は今悪魔を排除したいかい?」


「まぁな。」


排除という言葉に違和感を覚えつつも返事をする。


「わかった。颯。」


「了解。」


そして気がついた時には意識が切れていた。






















評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ