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祝?異世界人になりました
―――あれ?
俺、柊 葵は高校卒業後に就職、現在警備員として働いている最中だったはずだ。
なのに気がつくと、倒れて体が動かない。
何があったのか思い出そうとしても、妙な寒気と腹部の激痛で考えがまとまらない。
視線だけを動かしてみると、俺の体から大量の血が流れているのが目に入った。
―――そういや、突然刺され……
ここまで思い出して、俺は瞼を閉じた。
―――俺、死んだんだな。
死んでしまったら『死』を自覚するなんて出来るわけがない。
なのに、今俺は自分が死んでしまったと思っている。
これはおかしい。
そんなことを考えていると誰かに呼ばれた気がした。
そして、さっきまで重たかった瞼が軽くなっていることにも気づいた。
「···あなたの名前はゼルよ」
瞼を開けると、初めて見る女性が俺を抱きながらそう呟いていた。