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5分で読める短編集

白熊のぬいぐるみ

作者: 白雪 蛍

 俺は、ジョニー。好きなものは、ブランデーとたばこの匂いだ。まあ、うちの主人は俺のことを「くーちゃん」って呼びやがるし、アロマとお菓子の匂いしかかがせてくれないがな。

 たく、これだからJKってやつは…。まあ、文句も言えないし動くこともできないから、ナニもできないんだがな。あいつは、俺を白熊のぬいぐるみだと思っている。中には綿が詰まってると思っている。

 だが、実は違うのさ。俺は本物の白熊だし、中には漢の魂が入っているのさ。


「くーちゃん、お休み!」


 うちの主人はくっついて寝てきやがる。たく、夏なのに暑苦しいから勘弁してほしいぜ。

大体、もう高校生だぜ?16歳だぜ?お前が、5歳の時から一緒にいるから、勤続年数11年かよ。

そろそろ、お払い箱にしてほしいぜ。


「へー。ここが真紀の部屋か。可愛いじゃん!」

「そう!気にいってくれたならよかった。」


 なんだ、この軽薄そうな男は、まるでなっちゃいねぇ。ひょろひょろとした体。頭の悪そうな顔。女みたいに長い髪。まさか、真紀の彼氏じゃないだろうな。こんな男を選ぶ必要ないぜ。


「ん?なんだよベットにあるぬいぐるみ。ボロボロじゃねーか。白熊か?てか、一緒に寝てるわけ?そうだったらウケるんだけど。」


 なんだとこのナンパ野郎が!?ボロボロだと!?男はボロボロでなんぼなんだよ。それが戦った勲章だからな。お前みたいな甘ちゃんに何がわかる?くそ!口がきけないのがこんなに不便に思うときはないな。女に出てきてもらうのもしゃくだが、背に腹は代えられねぇ。

 真紀、頼んだ!ビンタの一発でも見舞ってやってくれ。俺が許可する。さあ、やれ!


「なわけないじゃん。ぬいぐるみ整理しててさ。昔、水族館で買ってもらったやつだから、懐かしくなって見てただけだよ。」

「あーね。まあ、しまっとくか捨てるかしたら?汚いし。」

「うん。そうする。」


 え?真紀どういうことだよ。ずっと一緒にいた俺よりも、そのホスト崩れがいいのかよ。ふざけんなよ!ああ、わかったよ。処分でも何でもしてくれや。清々するね。こんなとこにいるくらいなら、とっとと、スクラップにされて燃やされた方がマシだね。二度とお前なんかと寝てやらねぇ。その、馬鹿男と末永く幸せにな!馬鹿同士お似合いだぜ。


「そだ。飯いかねぇ?腹減ってんだ俺。」

「うん!いく!」


 まあ、いいや。お前が小さい時に、森や公園とかに連れていきやがるから汚れたしよ。そのあと、真紀のおふくろが洗うから形も崩れちまうしよ。嫌なことあると泣きつくから、しょっぱいしよ。あと知ってるか?お前寝てるとき屁をこく癖があるんだぜ。くさいったらありゃしねぇ。何回も蹴飛ばしたり、枕にしたりしやがって。お前、それをあの男にできるのかよ!?一瞬で破局しちまうぜ。

 まあ、確かに、俺には見せない顔してたしな。顔も赤らめてるし。黒目も大きくなってるし。肌もきれいになってる気がするし。くそ。さみしいなチキショー。もうお前の隣は、俺のもんじゃなくなったってことかよ…。まあ、仕方ないよな。そういう年ごろだしな。あの男の言う通りさ。もう、俺なんかと、ぬいぐるみと寝てる年じゃないもんな。


 チキショー。真紀、最後に一回だけハグしてほしいぜ…。



 そうこう考えているうちに真紀が家に帰ってきた。どうしたんだ?今にも泣きそうな顔をしている。


「くーちゃん。あいつね。浮気してたの。携帯見えちゃってさ。そしたら、あいつ逆切れしてきたの。ほんとに意味わかんない。」


 真紀。ハグは嬉しいが、笑ってくれよ。最後くらいお前の笑った顔が見たいんだよ。それになんだよあのクソヤロー。爪で引き裂いて、頭をかみ砕いてやる。まあ、爪も牙も無いからできないんだが…。


「昼間は、ごめんね。あいつの前だから。かっこつけてくーちゃんのこと馬鹿にしたようなこと言っちゃって。ほんとはくーちゃんが大好きなのに。ごめんね。」


 俺も馬鹿にしたからお互い様さ。それに謝るのは俺の方だ。話せないから、アドバイスもできねぇ。動けないから、くそ男も殴れねぇ。こっちから、抱きしめることもできねぇ。

一緒にいることしかできない。だが、それだけに関しては世界中の男の中で1番だ。真紀と過ごしてきた時間ならな…。


 まだ、真紀には俺が必要らしい。まあ、サービス残業も悪くねぇかな。

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