王様とルールとロボット
ある国に王様がいました。
王様は優しいので、人を処罰しなかったのです。国中に盗みや人殺しが絶えませんでした。そこで王様はやむを得ず、罪を犯した人を自ら罰することにしました。最も重い罰は死刑でした。
しかしそれでは、王様の気持ちで処罰が変わってしまうではないか、罰の基準をはっきりしてください、などと批判が殺到しました。
そこで王様は、この罪を犯したら鞭でたたく、この罪を犯したら死刑などとルールを決めました。ついでに大臣の決め方や、外国との関わり方についてもルールを決めました。
しかし、それでも決めるのは人間だから感情に左右される、曖昧でルールになっていない、などと批判が殺到しました。
王様は悩みに悩み、ついに名案を思いつきました。
何ヶ月もかけて、王様はルールを絵にしました。どこで誰が事件を起こしたか、それで人が死んだかなどのさまざまな情報を元に絵の中の矢印をたどり、計算式を解いていくと、その人にどんな罰を下すべきか分かるのです。これなら、誰が罰を決めても同じ結果になりました。
計算するのがあまりにも大変なので、王様は情報を与えると自動的に計算をする機械を作りました。王様のちょっとした遊び心で、機械は人間の形になりました。それは、ロボットと言うのに相応しい存在でした。
それから罪に対する罰は、そのロボットに尋ねた答えで決まりました。
しかし、私たちは機械に支配されるのか、人間の尊厳はどこへ行った、などと批判が殺到しました。
そして、もう我慢ならないと怒った国民の一団が、王様を暗殺してしまいました。
そして、王族の中から新しい王様が現れました。王様はロボット、ルールの絵などを全て処分しました。王様は優しいので、人を処罰しなかったのです。