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短編集

くそったれバレンタイン

作者: 億田夢人

ファーストキスは多分幼稚園の時。

あいつは多分忘れてしまっていると思うけどあたしは覚えている。

忘れてはいけないとか特に強い思いはなかったのだけれど今の今までなんとなく覚えている。

あたしは小学生や中学生の時、他に好きな男の子はいたけど成就することはなかった。


幼稚園の時からあいつのことが好きだったからなのか?


あいつは老若男女を問わず誰にでも優しかった。

電車で席を譲るべき人には席を譲り困っている人を見かけたら率先して手助けしていた。

人が良いのかよく何かに騙される話をしては周囲に爆笑されていた。

そんな様子を小中学生の時、遠くからよく眺めていたものだ。

そんなあいつだが顔は中の下、運動も勉強も並以下なので目立つことはなく女子にも特にモテるようなことはなかった。

が、なぜか中学生活も終わりになるという頃あいつを好きだと言う女子が急増した。

あたしの友達の中にもあいつを好きだという友達がいた。

あたしは昔からあいつを知っているので悪い奴じゃないということは知っている。

いや、むしろ優しくて人柄も良いので優良物件だよって友達におすすめした。

でも、あいつはこともあろうかあたしの友達を1週間でフッたのだ。

そしてすぐに別の女の子とつきあいだした。

あたしの友達は中学校を卒業するまで笑顔を見せることはなかった。

当然、あたしはあいつに猛抗議した。

が、あいつは聞く耳持たず。

逆にあいつにふられた友達からそういうことするのやめて、と言われあたしはそれ以上あいつに関わるのをやめた。


が、最近、偶然にも同じ高校で姿を見かけるようになってからあたしはあいつのことが気になりだした。

いや、正確にはあたしの友達にあいつが関わるようになってからだ。

そのあたしの友達は中学までイジメにあっていたとあたしに告白した。

おとなしくて控えめで見た目は結構な美人なのにオーラが暗く感じた。

いじめられた原因は自分の名前のせいだとか言っていた。

だけど、話してみるととても純粋で真面目で優しくて...

自分もこうありたいと思えるお手本のような女学生だった。

おそらくいじめられた原因には同性の嫉妬なんかもあったと思う。

あたしなんかより絶対モテそうだ。

そんなあたしの親友があいつと仲良くなりたいって言いだした。

絶対ダメだ。

また1週間くらいで捨てられるに決まっている。


あたしは妨害することにした。


そうだ、他の女の子が傷つかない為にあたしがつきあうっていうのはどうだろう。


...都合のいい言い訳を自分の中で考えあいつに告白するがOKはもらえなかった。

あたしはやがて本当にあいつのことが好きだったことに気づいた。

OKをもらえなかったことがとても悲しかったから。

告白したことを親友に打ち明ける。

親友は許してくれた。

そうだよ、許してくれると思ったからあたしはうちあけたんだ。

自分の心の汚さが情けなくて親友の胸の中で思いっきり泣いた。


そして今日、バレンタイン。

コンビニで買った板チョコ。

あいつを見かけたら渡そう。

せめて本気で告ったことは伝えたい。


「くらえ!」


登校途中のあいつの後頭部に思いっきりチョコを投げつけてあたしは走り去った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の独白っぽい感じと、自身の身の周りの出来事を都合よく偏向しているのがマッチしている。主人公の表面上のでっち上げな理由を立てて、自身の心に嘘をついていることを自覚してないさまがなんとも…
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