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知らないと損をする フリーランス向けお金と制度のはなし  作者: 師走トオル
第一部 個人事業主とお金編
3/10

第二話 実はやらないと大損する確定申告

 もうフリーランスなら当たり前の行事、確定申告の話です。

 ご存じの方、すでに経験のある方は、この項目は飛ばして頂いて構いません。


 実は専業作家フリーランスの立場にあるにもかかわらず、確定申告をやっていないという方の話をちょいちょい聞きます。理由は様々です、ぶっちゃけ面倒だから、あるいは制度をよく知らない、あるいは自分がやるべき立場にあることを知らない等々。


 そこで、「確定申告とはなんなのか」と、「確定申告をしないことがどれぐらい損になるのか」というお話をまずしておきたいと思います。というか確定申告しないと大体の節税もできませんし!


 とりあえずまとめておきます。面倒でしたらここだけ読んでください。


ーーーーーーーーーーここからーーーーーーー


● まず確定申告とは?

 ↓

 税金の一つである所得税を、自分で計算し、国に申告・納税する行事です。

 自営業フリーランスの場合、一年間(1月~12月)の収入と支出から、国に収めるべき所得税の金額を自分で計算し、申告することになります。(原則として3月15日までに)

 また、状況によっては還付金といって、国が取り過ぎた所得税を返してくれたりもします。(というか大体の場合、還付金が出ます)



● 確定申告をしなかったらどうなるの?

 ↓

 年収300万ぐらいなら、一応所得税については脱税等になることはありません。


 ただし! 数十万の税金を余計に納めることになります!

 また、住民税を自分で申告して納税する必要が出てくるので、結局手間が変わりません。


ーーーーーーーーーここまでーーーーーーーー


 以下は解説になります。興味を持ったら読んでいってください。

 興味なかったら次の項目へ飛んで頂いて構いません。


 というわけで本題に入ります。

 たとえば小説家の場合、本を出版すれば大体その翌月以降に印税がもらえます。


 具体的な話を作りましょう。

 A社という出版社から、定価600円の文庫を初版部数2万で出したとします。


(余談:最近は初版2万もいかねえよ、なんて話も溢れかえっておりますが、わりと2万越える例も結構あります。そうです、部数が高いときは公言しないんです! 景気の悪い話が多いのは確かですけど……!)


 印税率は大体10%です。(注:新人・ノベライズなどの場合、下がることがあります。逆に状況によっては上がることもありますけど)

 つまり消費税等を考慮せず単純計算した場合、600円の文庫本を2万部出せば、もらえる印税は120万円となります。


(注:基本的に本を印税は刷った分だけもらえます。あまりよくないたとえですが、たとえ2万部のうち100部しか売れなかったとしても、120万円もらえるわけです。印税が10%しかない代わり、在庫・流通リスクとは無縁でいられるわけですね。ただ最近は擦り部数ではなく、売れた分の印税しかもらえないという契約もあるそうですが)


 ただ120万の印税は翌月以降に振り込まれますが、この際に『源泉徴収』といって、10%引かれた金額が振り込まれます。


(注1:一か月以内に振り込まれた金額によって、10%という数字は増加します)

(注2:現在は復興特別税があるので10%ではなく正確には10.21%になるのですが、本項では分かりやすさ優先のため除外して話を進めております)。


 源泉徴収については小説に限らず、アルバイト、会社員の方でも覚えがあると思います。


 また、A社だけではなく、B社やC社から『一枚いくら』の仕事を受けたとします。

 つまり小説誌に掲載する短編小説、ゲームシナリオ、コラムなどですね。

 この場合、もらえるお金は大体単価が決まっています。


 短編小説なら、400字詰め原稿用紙換算で1ページあたり1000円とか3000円とか。

(注:金額はたとえです)

 ゲーム系のお仕事なら、テキスト1KBあたり1000円とか1万円とか。

(注:同じくたとえです)

 あるいはエッセイの連載一回につき、5000円とか1万円なんてこともあります。

(注:いやホントにたとえばの話ですから!)


 というわけで具体例として、


・小説を二冊出した

・50枚の短編小説を掲載した

・100KBのゲームシナリオの仕事をもらった


 などなど、印税・原稿料その他で、たまたま年収(つまり1月1日~12月31日までの収入)がちょうど300万あったとしましょう。


 すると翌年の3月15日に確定申告という所得税を納めるイベントが発生します。

(正確には『2月16日~3月15日が申告時期』です。当然、2月に終わらせる人もいます)


 なぜ個人事業主には確定申告が必要なのでしょうか?


 上記の例を見てもらうと分かる通り、作家のような自営業の場合、どこの会社とどれだけ仕事をして、いくらもらったかという収入ルートが非常に複雑になるからです。


 つまり、国としては税金の基準となる収入を把握するのが非常に困難になるわけです。そこで一年にどこからどれだけの収入と支出があったかを、各自で自己申告してもらう必要があるわけです。


 このシステムの関係上、当然ながら確定申告をしないと脱税などに問われる可能性があります。ただ、年収によっては脱税になり得ないこともありますが。

(注:所得税に限っての話です。住民税などは別です)


 なぜ脱税にならないのか? 本の印税にしろ原稿料にしろ、前述した『源泉徴収』されてるからです。印税や原稿料はもちろん、アルバイトをしてもいつの間にか10%ぐらい引かれてるアレです。


 源泉徴収とは、ようするに『所得税の前払い』と理解すると分かりやすいと思います。支払われるお金の10%を、会社が国に先渡しする制度です。

(注:一か月の間に支払われるお金が多いと、10%以上徴収されることもあります)


 このおかげで、確定申告せずとも基本的に脱税になることがありません。理屈の上では年収425万ぐらいまでセーフです。


注:ただし! 源泉徴収されていない収入の場合(余談ながらユーチューバーさんなどがそうらしいです)は、確定申告しないと問答無用で脱税コースです。(赤字だった場合とか、脱税にならない場合もあるんですが)


 では、なぜ425万までセーフなのか?

 細かい計算は省きますが、平成27年度では425万にかかる所得税が42万2500円なんです。(注:分かりやすさ優先のため、控除は計算に入れておりません。確定申告はした方がいいよ、という話ですし)


 一方、425万円で源泉徴収される額は、10%として42万5000円。


 ようするに『源泉徴収された額 > 納めるべき所得税』という式が成立していれば、脱税になりようがないわけです。すでに必要分を納めてるわけですから。


 ただ、もし年収が430万になると、納めるべき所得税は43万2500円です。この場合、

『源泉徴収された額 43万円 < 納めるべき所得税43万2500円』

 となってしまうので、2500円分の脱税状態になりますね。

(注:正確に経費・控除を適用すると、脱税にならなくなるということはあります)


 とはいえ、「425万までセーフなの!? やった! 俺しなくていいや!」と考えてしまうともの凄い大損こきます。確定申告をしないと、経費と控除を計上できないため、納める所得税の額が勝手に増えてしまうからです。

(経費と控除とはなんぞや、となるとややこしいので次項で解説します。とにかく本項ではどれぐらい損になるかだけ知っておいてください)


 特に、国に納めるべきお金は所得税だけではありません。他にも代表的なものとして、5月ごろに請求書が届く住民税と国民健康保険税(通称『国保』)があります。

(注:確定申告しないと、住民税の請求は多分来ません。ただ、当然ながら払わなくていいってことではありません。自分で申告・納付しないとダメということです)


 所得税・住民税・国保。

 この三つは、あなたの年収からパーセンテージで引かれていくんですが、経費や控除を計上できればできるほど安くなるという特徴があります。逆に言えば、経費と控除が計上できなければ、三つ同時に高くなるわけですね。

 そして確定申告しないと、所得税についての経費計上はもちろん、青色申告特別控除など、一部の有利な控除を受けることができません。


 ようするにこういう悪循環が生まれます。


 確定申告をしない

 ↓

 経費と控除が計上できない

 ↓

 モノスゴイ税金が高くなる!


 所得税に限って具体的な話をしましょう。

 たとえば、前述の例の通り年収を300万とします。

(中には「300万も稼いでない!」という人だっていると思います。ですが今回は年収の幅の話をテーマとしていないのでご勘弁ください)


 この場合、まず源泉徴収で10%の30万がすでに引かれてるはずです。


 一方、年収300万で確定申告したとすると、まず経費が計上できるようになります。今は細かい話はしませんが、その場合どうやったって30万ぐらい経費の計上が可能です。

(本などの資料代+家賃・光熱費・通信費の一部も計上可能だからです)


 細かい計算は今回は省きますが、経費と基礎控除も入れて正しく計算すると、『本来納めるべき所得税』は、13万4500円になります。


 つまり所得税として、


・源泉徴収された『30万』

・本来納めるべき『13万4500』


 という二つの数字が出てくるわけです。そしてここが一番重要なんですが、もし確定申告しなかった場合、源泉徴収された『30万』の方を所得税として国に納めることになるんです!(というかすでに先払いされてるわけですが!)


 確定申告さえすれば、13万4500円の方で済みます。

 つまり16万5500円も得するわけですね。


 この差額の16万5500円は、、確定申告さえすれば「還付金」として国から受け取ることができます。確定申告すると、ほとんどの場合でこの還付金が生じるため、フリーランスの間では『春のボーナス』と呼ばれてるほど。


 逆に言えば、この16万5500円は、確定申告しなければ取り返せないと覚えておいても支障はないと思います。


 余談ながら、『前年の国民健康保険料は所得税・住民税の控除になる』というのもありますんで、確定申告するとさらに安くになります。つまり年収300万ぐらいとして、確定申告をしなかった場合、所得税だけで20万円近く損をするのはほぼ確定的です。


 20万といえば、一人暮らしなら二か月生活できるかもしれません。自分へのご褒美などと称してPS4とPSVRを買ってもまだお釣りが出るほどのお小遣いになるわけです。


 もちろん「別にいいよ、国のためにより多くお金を納めたいし」という考え方もできるでしょう。ですが考えてもみてください。間違いなく大体のフリーランスは、国よりも将来が不安定です。そして病気や災害で働けなくなるようなことがあれば、長期的に見て国にとってもマイナスです。備えとなるお金はあるにこしたことはありません。


 というわけで面倒でも確定申告はやりましょう。文字通り、損をしないからです!


 では確定申告はどうやればいいのか?


 方法は二つ。まず、あなたが住民票を置いている地区を管理する税務署へ行くことです。そして相談窓口があると思いますのでそこで聞きましょう(ぶん投げてるようで大変申し訳ないのですが、制度は年々変わるため、これが一番確実だと思います)


 実際、確定申告のやり方については個々人の環境で大きく変わる上、書類の書き方などについて本エッセイで詳しく解説することは税理士法違反の可能性がありますので、何卒ご容赦ください。


 二つ目は、税理士さんを雇うことです(ぶん投げですが、実は間違いなくオススメできる方法でもあります)。

 詳しくは後の『青色申告』の項目で解説しております。


 なお、最後に余談ながら。

 確定申告をすれば、そのデータが市区町村に自動的に渡りますので、自動的に住民税と国保の請求が来ます。


 ですが文中でも触れましたが、確定申告をしなかった場合、住民税と国保の請求はまず来ないそうです。(個人的に確定申告しなかった経験がないので税理士さんから聞いた話になります)


 当たり前ですが、請求が来なかったからといって「払わなくていい」ことにはなりません。その場合、市区町村に自分で住民税の申告を行わなければなりません。つまり確定申告はしなかったのに、住民税は自分で申告するという変な状況になります。


 税金の類は容赦なく遡って請求されると言われていますし、特に今後はマイナンバー制度でお金の経路がよりハッキリする(税務署ではなく市区町村レベルでも個人の収入の把握が容易になる)とも言われています。なに一ついいことがありませんので、確定申告は毎年やっておきましょう。


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