今日、マザーが死んだ
今日、マザーが死んだ。
もしかしたら、13年前かもしれない。
とにかくマザーは死んだ。
私が殺した。
マザーが死んだ時、お腹が空いた。
親戚のおじさんから、おにぎりもらって食べた。
ホットココアと一緒に。
マザーは私に暴力を振るった。
風呂場の浴槽に沈められて、息が出来ないとか。
その間、みなさんは綺麗なパジャマを着て、美味しい御飯を食べていたのでしょう。
私が木刀で殴られている頃、あなたは家族と笑いあっていた。
学校でも、突っつき回されて。
挙句の果てには睡眠障害。
私は何か前世で悪いことをしたのか。
それしか思いつかない。
皆が嫌い。
世界が嫌い。
だから、世界と同じのマザーを殺したの。
私にとっては世界と同じのマザーを殺したの。
マザーは苦しみながら死んだ。
腹水が溜まって。
私が時間をかけて、じっくり殺した。
きっと私が殺したのでしょう。
「お前のせいで癌になった。お前のせいで死ぬ」
私の世界にそう言われたの。
そんなに幼子のように、包まれたいというのはダメったのでしょうか。
私の初めての記憶は、父にマザーが髪を引っ張られて絶叫の瞬間。
マザーに抱きついたら振り払われるマザーとの記憶。
私は生まれたくなかった。
できれば、胎内で死にたかった。
私は昨日死んだ。
ずっと前から死んでて。
次に目を開けたら、浴槽の中にいてマザーに殺されているのでしょうか。
きっと水の中で死んでます。
それが幸せなのです。
皆さんを呪います。
穴2つでも構わない。
憎くてたまらない。
皆さんさようなら。
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ある日、ビルから飛び降りた女の遺書にそう書かれていた。
丁寧に揃えられた靴に下敷きになっていた遺書。
よくある事だ。
死んでしまったら終わりだ。
世の中、生きている人のもの。
俺もこんな事、明日には忘れてる。
よくある事だ。
俺はその度痛む心を無視した。
きっと、この遺書を書いた女。
俺の趣味で読むラノベみたいに、
きっと異世界で幸せだろう。
貴族に生まれて、両親に大切に育てられて、いい旦那ができる。
窒息する程の幸せを感じている。
当たり前じゃないか。