禁断の翼と鏡の少女
<この作品について>
高校3年生時に現代文の課題で提出した作品です。
条件が厳しく文字数がかなり少なめになっていますので過度な期待はしないでください
なお、学校提出分は少しここから削っています
私は悩んでいた。目の前にある大きな壁を一瞬で乗り越えられる禁断の翼がこの手の中にある。しかし、その壁を越えた瞬間に私は私ではなくなる。まさに禁断の翼。虚像を崇め、孤高を貫き通した成れの果てが手に入れたたった一つの答えは目の前にある。
漆黒の長髪と灰色の服を纏い、私は姿見に向う。目の前には誰かいて、私を真っ直ぐに見つめてくる。そして私の捻くれ穢れた精神に何の抵抗もなく触れてきた。鏡のひんやりとした感覚、そして部屋中に漂う昨日の晩飯の匂いをかき消すような甘美な花の香りがますます私を飲み込んでいく。
逃げようと思うこともなくつい実像と鏡像は触れ合ってしまい、ますます色を変えていく。この単調な部屋の壁の色がかすんで見えるくらいに輝きと濁りを繰り返し、穢れ濁った川の底を洗い流すような清流が私を貫いた。
目の前の少女は何を語るのだろうか。あの虚像のようにどこかへ行ってしまわないだろうか。救われたのか、それとも堕ちたのかそれは私でもわからない。少女は階下で少し値の張る紅茶を飲みに降りて行ったようだ。