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ごく普通の学園風景

僕達が校舎内に入り、席に座った頃には本鈴が鳴り始めていた。

「お前らおはよう」

 担任の先生が挨拶をしながら部屋の中に入ってくる。

「おはようございます!」

 生徒達の挨拶は、まるで何かに強制されたように、大きな声を出して先生に投げかけられている、

「それじゃあ点呼始めるぞ! アイーナ」

「はい」


「今日の欠席はダニエルと……マクミランか」

 先生は溜め息をひとつつき、口を開ける。

「えっと、今日の連絡、と言うよりはまあ、マクミランの事なんだが……」

 少し話すとまた話辛そうに口を閉ざす。

「先生、どうしたんですか?」

 生徒の一人が先生に話しかける。

「それがな。 どうやらマクミランは例の失踪事件に巻き込まれたそうなんだ」

 教室内がざわめく。

 しかしそれを先生は静止する事も無かった。

「なんでマックが巻き込まれたって分かるんですか?」

 さらに別の生徒が先生に対し疑問を投げかける。

「それか……それはな、防犯映像での解析でも分かるんだが、警察や公安の中に、魔導師(まどうし)が居てな……」


 魔導師。

 僕達には馴染みの無い言葉ではあるが、その筋の人達にとってはとても役立つ存在であり、また別の筋の人にとってはとても迷惑な存在でもあるそれ。

 魔導師とは、狭義的に説明すれば「二つ以上の魔法を使える」存在である。

 広義的に説明するとなると面倒な話になるが、一つ言える事があるなら、それは会得した能力であれば、どんな魔法でも自由自在に操る事が出来、また一般的な魔法発現者よりも強力であると言う事だ。

 なので、科学者からは畏怖と嫌悪の存在とされており、科学者による魔導師の殺人事件が時たま起こる程だ。

 これ程までに敬われ、そして嫌われている魔導師であるが、その数自体は極めて少なく、各町に五人と居ない。

 魔法を二つ以上使えるのであればもっと魔導師は居る筈なのでは無いかと思われてしまうかもしれないが、それは無理も無い。

 魔導師を騙るのは法律違反であり、最悪の場合死刑に課せられるのだ。

 魔導師を名乗るには、毎年三月と九月に行われる国家試験に合格し、その証拠である小さなカードを手に入れなくてはならないのである。

 そのカードにはICチップが組み込まれており、その人の情報が事細かく記載されているらしい。

 一応この程度の情報であれば、教科書なり何なりの隅っこに書かれているので、魔法が発現した後に改訂された教科書で、ちゃんと授業を受けていた人であれば、この事を知っている筈なのである。

 寧ろ、知らないと言う若者のほうが珍しいだろう。

 魔導師の中でも、功績が称えられた者は大魔導師(だいまどうし)と呼ばれている。

 彼らは魔導師と特に変わりは無いが、他の王国では、王宮直属の魔導師として雇われたりするそうだ。


「つまりは、上位のサーチ魔法を持った人がこの町を調べたけど、何処にも居なかったと言う事だ……」

「と、と言う事は……」

 また別の生徒がぼそりと呟く。

「嗚呼、だから失踪事件に巻き込まれたと考えているのだろう……」

 先生は深く深呼吸をし、そしてこう告げる。

「お前ら……夜道には気を付けろ。 あとダニエルの事を知ってる奴が居たらあとで職員室に来い。 以上だ、鐘が鳴るまで待機するように」

 先生は思い悩むかのような表情をして、教室を後にした。


「まさかマックが神隠しに遭うとはな」

「そうだな……で、ダンはなんで居ないんだ?」

「流石に知らねえよ……ダンの事だし学校サボってゲームでもしてるんじゃねえのか?」

「家でゲームなんてダンらしいな」

「まあダンが家でゲームやってるかどうかなんて俺らには関係無い事か」

「それもそうか……」

「……どうしたんだ? バル」

「でもさ、ダンって学校サボった事あったか?」

「……言われてみれば、学校にゲーム機を持ちこんでやってるのなら見た事はあるが、態々ゲームをする為に学校をサボってる姿なんて見た事ねえな」

「だよな」

「なら据置機で遊んでるとかじゃね?」

「ダンって据置機を持ってたか? 話をする限りじゃゲーム系の話題で、携帯機以外の話を聞いた事が無いんだけど」

「てかバルってそんなダンと話してたのか?」

「席も近いからな。 暇な時は話してたりしてる」

「確かに席は近いもんな……話は変わるんだが……」

「変わるがどうしたんだ?」

「次の授業ってなんだ?」

「次の授業は、確か魔法系じゃ無かったか?」

「魔法系かよ……あの先生余り好きじゃねえんだけど」

「そんな事言ったって仕方無いだろ……まあ移動教室だし準備しといた方が良いんじゃないか?」

「それもそうか」

 僕達は次の授業に備えて、教科書等、必要な物を机の上に置き、終鈴が鳴るのを待った。


その日の清掃時間、それは起こった。

 僕達の班は、普段から使っている自分達の教室の清掃を担当している。

その為クラスメイトの机を端へ運び、床を雑巾掛けを行い、今度は反対側の端で机を運び、先程雑巾掛けを行わなかった所を拭く。

そして机を元の位置に戻してその日の清掃は終わりと言う訳だ。。

 その日、僕はたまたまダンの机を運んでいたのだ。

 ダンの机を端に運んだ、その時だった。

 ダンの机の中から、一枚の紙がひらひらと舞い落ちたのだ。

「この紙なんだ……?」

 僕は気になり、その紙を拾う。

その紙には数字が羅列されていて、さっぱり意味が分からない。

きっと、ゲームか何かの暗号の答えなのだろう。

 少し眺めていると、他に机を運んでいた生徒が話しかけてくる。

「何見てるんだ?」

「なんかダンの机から落っこちて来た紙を見てたんだけど、これが何か分かる?」

「……なんだこれ」

「だよな……」

「まあ大切な物かもしれないしダンの机に仕舞っといたら?」

「それもそうか。 流石に人の物を勝手に見ちゃ悪いよな」

「そうそう」

 僕も気付かなかったが、その紙をまじまじと三〇秒程見続けていた。

 その紙をダンの机の中に仕舞った時、奥の方で机を運んでいた他の生徒が僕達に話しかけてくる。

「お前ら何サボってんだ? さっさと他の机も運んで掃除終わらせようぜ」

「悪い悪い」

「わりぃ、今そっちの机も運んでやる」

 僕達は清掃作業に戻った。

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