陛下の仰せのままに
私が植民地総督に任命されてから、期限は常に1つしかなかった。
それは、陛下の仰せのままに、という期限である。
銀河植民地帝国の皇帝陛下は、私を任命なさる時に、しっかりやりなさいと声をかけられた。
私は、ただただ、仰せのままにとだけ答えるのが精いっぱいだった。
そして植民地総督として、銀河のいたるところにある植民地をあちこち見回った。
なにせ、5万か所以上の恒星系で、約2兆人が住んでいる計算になっている。
そのため、全て回るとしても、途方もない時間がかかることになってしまう。
だからだろうか、私は、主要な恒星系だけに絞り、見回りをしている。
総督の任務は実に簡単で、皇帝の代理人としての全権があり、全ての植民地政府の上に位置している。
直轄領では皇帝陛下ご自身が行政、立法、司法の三権と、報道を含めた権限をお持ちである。
だが、植民地では、皇帝陛下がそれらの権限を行うには余りにも広すぎるため、私のように植民地総督が任命されることとなった。
なお、私は第16代目の植民地総督である。
だが、人が一人で総督をするには、あまりにも広過ぎた。
そのため皇帝陛下へ直訴し、さらに部下を付けてくれるように頼んだ。
その結果、植民地帝国皇帝の親任として、総督の上の役職が作られた。
植民地長官と呼ばれる役職だ。
私はその新設された長官のポストに収まり、部下を15人与えられ、それぞれに植民地総督として派遣した。
月日はたち、植民地経営がうまくなりゆくようになった頃、私は皇帝陛下に呼ばれた。
「……そろそろ後進に譲るべきではなかろうか」
「仰せのままに」
皇帝陛下が述べられるお言葉の通り、私は翌日、隠居した。
全ては、陛下の仰せのままに。