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後悔は明日せよ

作者: 椿山 市


何もない。


今の私にはその言葉がぴったりだろう。私はいつも虚しさに襲われている。かの有名な芥川龍之介に言わせれば「ぼんやりとした不安」というものに類似したものに取り囲まれていると言っても過言ではない。しかし彼のようにこれにより死ぬ弱さも無ければ勇気も無いので私はダラダラと怠惰な毎日を生きている。



床で転がっている時計を見れば「12」のところで短針と長針が仲睦まじく身を寄せ合っている。本来なら大学にいるはずの私はまた万年床の中でぼんやりしていた。そろそろ外国語の単位が危ういのは私も理解しているはずなのに面倒臭いという悪魔の囁きが先立ってしまい私はいつまでも布団から出られない。溜息をついてからいつものように携帯を開く。いつものようにメールマガジンだらけの新着メールを開いてから充電器を引き抜いた。上半身を起こして大きく伸びをした。




「また授業行かなかったの?」


「いやー、なんかめんどくてー。」


「そんなこと言ってると卒業できなくなっちゃうよ。」


「・・・・。ですよね。」



私はバイト先で賄いの味噌汁をすすりながら気まずい空気の中、精一杯の苦笑いをした。先輩方は呆れた表情で私を見た。無理もないだろう。多分1ヶ月くらい学校には近づいていない。まだ1回生の後期だというのになんという体たらくだろうか。やる気まんまんで入学した4月の自分は全くの別人だったと認めざるを得ない。大学と言うものに幻想を抱いていた一人だったといえよう。勝手気儘に自分のしたいことをできるなんて。そんなものは今のご時世、ニートぐらいにしか当てはまらないのに。本当に愚かだったとしか言えない。実際は高校時代と変わらぬ、いやそれ以上に質の劣る授業を受け、サークルでは予想以上の拘束具合だ。そしてアルバイト先は遠く本当に散々だ。元を辿れば全て自分が選んだことなのに結局文句しか垂れていない。



そう、あのことだって結局は私が全部私が選んだことだったのだ。



バスから降りて煙草に火をつける。昨日たまたま寄った煙草屋がキャスターマイルドを切らしていて苦し紛れにピアニッシモを買ってしまった。メンソールが苦手な私が何故これを選んだのかが自分でも理解できない。口の中に慣れない香りが広がる。私は思わず眉をしかめてしまった。


「とことんついてないな。」


思わずこんな言葉が漏れてしまった。しかし選択したのは全部過去の私だ。

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