1-5 深層心理のデトリタス
シャンプーが合わなくてきしむ髪に櫛を通しながら、洗面所の鏡に映る自分と目を合わせる。情けなくて野暮ったくて、こんなに惨めな姿になってまで息をしていることが、心底我慢ならなかった。それでも、愚直に泥臭く歯を食いしばって生きるのがお利口なのかもしれないけど、そうしたって誰も褒めてくれないわけで。こんな所で何やってんだろうな、私は。
「莉央奈さん、準備できたー?」
ショートパンツに白の無地のシャツ、アクアグレーのカーディガンと、何だかシンプルでボーイッシュな装いをした玉樹が呼びに来た。帰省に備えて、ここに何着か私服が置いてあるらしい。貸そうか?と言われたが、死んだ魚の目をした私には似合わなさそうなので、引き続き制服に頑張ってもらうことにした。
「まー、ぼちぼち」
「先に家の外で待ってるよ」
「分かったー」
頑張り過ぎても手持ちの化粧品では限界があるかー。最後にリップだけ入念に塗っておくことにしよう。
昨日、布団に入る前に、水族館に行こうと、玉樹にペアチケットをまざまざと見せつけられた。別に興味ないし同伴する義理もないのだが、だからこそ、そんな間柄の私を誘うことは玉樹にとって大きな意味を持っていて、断ろうにも腑抜けた声しか出なかった。
水族館までは玉樹のおじいちゃんが運転して送ってくれることになっている。ガレージ内の車に乗ろうとすると、荷物を詰めているおじいちゃんに遭遇する。
「あ、今日はよろしくお願いいたします……」
おじいちゃんはこちらを向いて、そして、理解不能な言語を言い募り始めた。おばあちゃんは標準語とほとんど変わらない感じで話しかけてくれるので、すっかり油断していたけど、ここは沖縄である。あぁ、もう、すっごい。
せめて一方通行の会話で終わってくれたら助かったのに、何かを尋ねてきた。RPGみたいに、答えるまで進まないようで、おじいちゃんは固まってしまった。
「いやぁ、本日はお日柄も良く……」
適当なことを言ったら、何か別の事を尋ねられたっぽい。えー、そもそもさっきの返答は正解だったの?困り果てていると玉樹が家から出てきた。
「はいおじいちゃん、クーラーボックス」
おじいちゃんは玉樹にも容赦なく、現地の語彙やらアクセントやらをぶつける。驚くべきことに、玉樹は何度も相槌を打っていた。
「なんて言ってたの……?」
「さあ?」
「分かんないのに頷いてたの?」
「前は目を丸くしてたんだけど、最近になってようやく、とりあえず肯定しておけばいいことに気が付いた。会話なんて、そんなものだよね。いちいち突っかかってたら、空気を悪くしちゃう」
「そう、なのかなぁ」
一瞬、私は玉樹の何となくで、生きることを肯定されているのかと思った。まあ、その心配は杞憂だった。全てを適当に肯定するのは、流れに身を任せることであり、自由落下に抗って自殺を止めることとは正反対である。玉樹は、空気に溶け込むことのないコアを、きちんと抱えている立派な側の人間である。だからこそ、私となんて出会うべきじゃなかった。
光と泡の柱が神殿のように何本も聳え立って、その間をジンベエザメやマンタが優雅に何の為でもなく泳ぎ回っている。壮大で眩しくて、でもそこは、私たちが生きる世界よりずっと狭くて。あんな風に、狭い水槽の中の世界しか知らないでいられたら良かったのかもしれない。どれだけ世界が広くたって、大半の場所では息ができないんだから。
はいカットー、お疲れ様でしたー。わぁーすっごい、でっかい、エモい、ロマンティック。世界最大級らしい水槽を前にしようと、頭に浮かぶ感想はこれくらいである。私は感性が乏しいのである。明後日には忘れているだろう。明日までは覚えている、誰かに自慢するために。
それで、隣にいる玉樹はというと、口を半開きにしながら、水面の煌めきに負けない輝きを瞳に灯して、巨大水槽に釘付けになっていた。誘う段階で既にわくわくしている様子だったので驚きはしないけど、余程ここに来たかったんだなぁ。何なら、比較的空いている平日にここに来るためだけに、逃避行の行先を沖縄に選んだのかもしれない……なんてね。
「あれはーナンヨウカイワリで、あっちはグルクマの群れ、ヒレナガカンパチが右にいて、おあ、コシナガがいるー」
「どれが、え、何、お魚博士?」
「あれだよあれっ」
玉樹はビームでも放つのかと思うぐらい、人差し指を水槽に向けてぴーんと延ばした。
「あー、あれかな」
「クロマグロとの違いはね……」
玉樹先生のありがたいお魚講座が始まった。たくさんの固有名詞が右から左へ駆け抜けていく。
「エイだけでもたくさんの種類がいてね。あの黒くて大きいやつが、ナンヨウマンタかオニイトマキエイなんだけど、んー、どっちかなー」
「水槽の中の魚、全部覚えてるの……?」
「覚えるのは昔から得意だから。魚とか星とか、名前と特徴ぐらいしか分かんないけどね。そこの説明書きみたいなのを何となく読み込んで、気が付いたら覚えてて。別に覚えても有利になることはないけど、ちょっと嬉しい。収集癖みたいな感じ」
「まあ、記憶力が良ければ助かる時もあるんじゃない」
「助かる時もあれば、助からない時もある」
「嫌なことを忘れられない、か」
「それもそうか。あんまり考えたことなかった」
逆にそれ以外で、記憶力が原因となる悩みなんてあるのか?……私のような凡庸な脳の持ち主には想像できなくて当然かー。
玉樹はじっくりと、隅々にある小さな水槽まで、取りこぼしなく眺めていく。私は玉樹の後を何も考えずに付いて行くだけだった。正直、魚が同じ所をぐるぐる回っているのを見て、チルい気持ちになったり、あるいは遠く離れた海底二万マイルに思いを馳せたりすることはできなくて、ありていに言うなら飽きた。
「玉樹ちゃんは、前にも来たことがあるんだよね。何回ぐらい来てるの?」
「毎年、おばあちゃんの家に来たついでに来てる。小学生ぐらいの時からずっとそんな感じ」
順路がだいたい決まっているとは言え、やけに慣れた足取りだなぁーと思ったら、かなりの水族館上級者だったらしい。
「何を見てるの?」
「え?セナキルリスズメダイだけど。そこに書いてある通り」
「あっいや、そうじゃなくて……。何度も来てるんだったら、魚のどこら辺を見てるのかなーって」
「どこら辺……?全部?」
「全部かぁー……。飽きたり……はしないんだよね」
「毎日だったらさすがに飽きると思う。だから、飼育員さんにはなれないね」
そう言って玉樹は、また水槽に真剣な眼差しを戻した。あんまり話しかけないでおこう。邪魔をしたら悪いから。
そんな配慮で、亭主関白気味な熟年夫婦の妻みたいな立ち回りをしていたら、唐突に振り返ってきて、話題を喉元に突き付けられた。
「ねぇっ」
「はいっ。……え、どうした?」
「逆に、莉央奈さんは何を見てるの?」
「んー、でかい魚?ミーハーだから、でかい魚にばかり目が行ってしまう」
「心が安らいだり、落ち着いたりしない?」
「あぁーどうだろ。そこそこかな」
「あ、ワモンフグだー。じゃなくて、私は興奮しちゃうけど、世間一般的には水族館ってリラックスする場所らしいから。莉央奈さんも少しは癒されたらいいなぁーって……。まあ、自分が行きたかったっていうのが一番だけど……」
ワモンフグを追いかけて身体をスライドさせながら、玉樹は水槽に向かってそう語りかけた。冷めた視線でそれを眺める私もガラスに映る。決して癒えない感傷に沈んでいる私が。
動くのを辞めたと思ったら、こちらを振り向いてきた。相も変わらず懲りずに憂愁の海で溺れているのを咎められる気がして、息が止まりそうになる。別に止まってしまってもいいんだけど。
「こ、今度はどうしたの……?」
「ニセゴイシウツボがいた。ほら、あそこ」
玉樹が指さす先には、岩に擬態してうごめく何かが確実に頭を出していた。一歩引いた位置から前に出て、一緒に水槽を覗き込む。でもそれは、形だけ真似しただけに過ぎなくて、玉樹の百分の一の高揚感も伴っていない。
そんな白ける態度の私が、玉樹の視野には入っているんだろうか。確かにかなりの時間、魚に熱中しているけど、時折話しかけてくるし、水槽から水槽へ移動する時にこちらの表情をうかがうようなことをしてくるし、私の存在を忘れて自由に動き回っているわけでもない。楽しさを共有したいという純粋な気持ちでそうしているようにも思えるし、私を気遣っているようにも見える。どちらであっても、玉樹を騙しているという事実に変わりはない。……死にたいって気持ちが、水平線の向こうまで広がっていく。
玉樹の提案で、休憩がてら大水槽の横にあるカフェに入ることにした。席の真横に水槽があって、さっきも見た魚がひたすら遊泳するのを眺められる。小さな海の海面を貫いてきた青い光に包まれて、何だかここまで海の中なような気がする。死ぬ間際にこんな感覚が味わえたら、少し面白いだろうな。
「平日はいいね。普段はお盆に行くから、混んでて水槽の前でゆっくり魚を見てられないんだよー」
何か色々あって忘れそうになるけど、私たちは二人とも普通に学校をサボってここにいるのである。それに対してお互いドキドキもしてない。今まで一度もやったことないのに、不良が板に付きすぎている。死のうと逃げようと、今日学校をサボっているという現実は変わらないわけで、前に玉樹が言っていたように、逃げることは死ぬことの代わりを務められるほど、近しい行動なのかもしれない。それでも私には二つの僅かな差が、どうしても許容できない。そのことを再確認していた。
「魚、本当に好きなんだね」
「うぅーん……、本当には好きじゃないのかもしれない」
「そうは見えなかったけど」
この言葉、相手がうそぶいていない時に使うことあるんだ。
「水族館そのものの雰囲気とか、自分の持ってる知識と水槽の中が結び付いた瞬間とかが好きなだけじゃないかな」
「十分、魚が好きって言えると思うけどな」
「でも、新種を発見したいとか、生態を解明したいとか、そういう欲求はないんだよ。それで魚が好きって言うのは、おかしい」
「んんー……、つまり水族館が好きってこと?」
「それが近いと思う。まあ、ここ以外の水族館は、あんまり行ったことないんだけど」
玉樹はこだわりが強いタイプの人間なんだろうなと。私が生きることにも、現実から逃げることにも拘泥して、決して譲らない。私とは真逆のタイプ。まあ、今の玉樹には私が自分と似た者同士に見えているだろうけど。
玉樹は頬杖しながら、真横にある水槽を眺めて、ご機嫌麗しくうっとりしていた。そんな玉樹すらも見飽きてきて退屈になった私は、注文したシークヮーサージュースをしきりに口に含んで、ちびちび飲み進めて無聊を慰めた。程よい酸味が染み渡る。まるで傷口に塩を塗りたくるみたいに。
「莉央奈さんはさ」
スマホを開いて情報の光を浴びていると、きょろっと玉樹の目線がこちらに向いて話しかけてきた。
「あぁ、うん。なに?」
「好きな魚はいた?」
「好きな、魚かぁ……、魚……」
「別に魚類にこだわらなくても、甲殻類や刺胞動物でもいいよ」
一緒に水族館を回る中で、玉樹は実にたくさんの生物名を言っていた。だけど一つも思い出せない。吐き出す言葉もないのに、喉に何かがつかえている。……いやいや、こんなのは適当に答えておけばいいはず。目の前が真っ暗になる。何かと思えばただジンベエザメが通りかかっただけだった。そうだ、ジンベエザメでいいじゃん。マイナーなものを選ばないといけないなんてルールは無いんだから。
私は結局、最後まで水族館を楽しめなかった。あの青い魚の名前も、漂う日常からの解放感も、等しくどうでもよかった。退屈に楽しめないことへのもどかしさに、嘘をついているような気がする罪悪感で、ずっと窒息しているようだった。
「ごめんっ……、ごめんなさい……」
「莉央奈さん……?」
欺瞞を終わらせたくて、気が付くと立ち上がって頭を下げていた。まあ、分かっていた。水族館に来たって、何も変わらない、この希死念慮は決して溶けない。
「何にもないのに謝ったら、謝罪の価値が下がるよ……?」
「いや、本当に申し訳ないから……。水族館、全然楽しめなかった。あぁっ、玉樹ちゃんが悪いってわけじゃなくてっ。私の感性が終わってるのが悪いから。……ほんっと、終わってんだよ、私。だから、謝らなきゃいけない……」
この場に存在しているだけでも辛い。卑怯な涙が一粒こぼれる。目を伏せて玉樹から目を逸らして、両手で顔の半分を覆って、まるで自分が被害者かのように振る舞っている。でも、それはある意味好都合かもしれない。醜くて、救う価値なんて皆無だと、玉樹に知らしめることができるんだから。
「水族館を楽しめなかっただけで、そんな風に自虐することないと思う」
「確かにね、それだけだったら、まだ救いようがあるかもしれないけど……。例えば、おばあちゃんのご飯を不味いって思ったり、そもそもおばあちゃんにも玉樹ちゃんにも、感謝の一言も言ってなかったり……。玉樹ちゃん、私ってこんな最低な人間、なんだよ。だから……」
あまり考えなしに零れ落ちる言葉は、他責するように嘆き続ける。これほどまでに自殺を選ぶのに相応しい人はいないだろう。
「別に、感謝されたいから助けたわけではないし、私だっておばあちゃんの手料理より吉野家の牛丼の方が美味しいと感じるから、最低って程でもないよ」
私の言葉を遮るように、少し早口気味にそう言った。玉樹はいつも通りの玉樹で、微塵も私のしあわせを願うことはなく、それに凄く焦る様子を見せることもなく、淡々と反駁するだけだった。
「玉樹ちゃんは、こんな私が死ぬのを、まだ引き止める気なの……?」
「当たり前。だって、莉央奈さんが今死んだら、おばあちゃんが悲しむだろうし。おばあちゃんに多分、実質的に託されたから。莉央奈さんの傍にいてあげてって。それに、ここへ来て自殺したら、絶対っ、遺族と揉める」
「生きてても楽しいことなんて何もなくて、周囲には無礼を働いて。それでも生き続けるべきだなんて、そんなわけない。生きてることは絶対的な正義じゃない」
「どうしたら、死にたいって思わなくなる?」
「どんなに説得されたって、この気持ちはきっと変わらないよ。元に戻るのも嫌だし、家出してほぼ他人のおばあちゃんの家でのうのうと暮らすのも嫌だ。生きていたくない」
「それでも、莉央奈さんが生きてないと困る人はたくさんいるから」
「この苦しみを、甘んじて受け入れろってこと。玉樹ちゃんって、結構畜生なんだね……」
「畜生、じゃないよ。だって私は……」
「望んでもないのに助けて、私の意思をコケにするように否定して、そんなことをされて嬉しいわけないじゃん」
玉樹のレスポンスが途絶える。彼女はこっちを見上げたまま、そう、面食らったような表情で固まっていた。驚いているのか、それとも反論が思い付かなくなったのか。どちらにしても何を今さらって話である。相変わらず、何を考えているのか分からない。まあ、それはお互い様か。
私の怪訝な表情に気付いた玉樹は、やや俯いて、さっきまでとは違い重々しく口を開いた。
「間違った正義で傷付けられてるって、莉央奈さんは今そう感じてるってこと……なんだよね……」
まるで狼狽えているような感じがする。明らかな異質を感じ取った。だからと言って、その正体を知ることも、元に戻すことも私にはできない。再び静寂が辺りを跳ね回る。水槽から影と光が交互に私たちを照らした。
「……じゃあ、莉央奈さんのことを幸せにできたら、自殺しようとするのを辞めてくれる?」
玉樹は弾むようにその場で立ち上がって沈黙を破った。数粒の光を散らしながら、まるで過去の辛い思い出を断ち切るように。
玉樹はいついかなる時もずっと従容としているものだと、勝手に信じ切っていた。まあ、感情を剥き出しに?する時もたまにはあるのかもしれないけど、私に対して何をそんなに感情的になる必要があるんだろう。理屈っぽくする意味もないけどさぁ。
「そんなこと言われても……。私は幸せになんかなれないよ」
「どういう意味?莉央奈さんの脳には、ドーパミンもセロトニンもオキシトシンもβ-エンドルフィンも分泌されないってこと?そんなはず無いよね。生きてい続ければ、幸せになれる確率はどんどん上がってく。だから生きて。私、頑張るから」
玉樹の平常運転だって、いつか幸せになれるみたいなありきたりな楽観論だって、荒み切った今を癒すのには力不足で。
「期限を作ろう。んん……今年の夏が終わるまで。それまでにこの先も生きたいと思えなかったら、命を絶つことにする。それが最大限の譲歩」
「私もっ。……その時は私も一緒に行く、心中する」
「冗談じゃないんだよ、私は本気で……」
「こっちだって、冗談じゃないよっ!」
玉樹は自分のカーディガンの袖をぎゅっと握りながら、そんな風に叫んだ。鬼気迫る風が吹いて、一瞬自分の感情が断絶したのを感じる。
「莉央奈さんが苦しんでるのに、私が何も報いを受けなくていいなんて、そんなの、対等じゃない。もちろん、本気で言ってる。どうしたら信用してもらえる?家の屋上から飛び降りるぐらいならやるよ、どうせ死なないし」
「いやいや、疑ってないというか、そもそも心中してくれる必要は、こっちとしては別にないわけで。最悪嘘で構わないんだけど」
「だから、嘘じゃない。まあ、莉央奈さんのことを私が、夏の終わりまでに幸せにできなかった時しか証明できないけど……。とにかく、莉央奈さんも嘘つかないでね。約束だから。夏が終わるまでは、絶対生きて」
揺らぐ青の中に、力強くて威勢が良くて勢い余ったその言葉が溶けていく。水槽の水面からの白いまばゆい光が、私を照らしているような気がする。それは切なくも感涙もない終わりの予感。つり上がった眉、核心めいた口元、微動だにしない体躯、玉樹は紛れもなく本気だった。玉樹の本気さゆえに、今度こそ終われるんだと、微かに心の澱が取り除かれるのだった。
「座ろっか。何か、水槽にスタンディングオベーションする変な人たちだと思われそうだから」
玉樹は辺りを見回して、一足先に座り、だいぶ氷が解けて味の薄まったパイナップルジュースを一口飲んだ。それから、去来する小魚の群れをまた目で追いかけ始めた。その光景を目に焼き付けても、きっと冥土には持って行けないのに、なんて、冷めたことを考えてしまう。
何はともあれ、かくして、あと2か月ぐらい延命させられることになった。まあ、それだけ。今この瞬間でさえも、つい数日前は想定していなかった。存在しない日を考えるわけがない。将来どころか明日のことも意識せずに過ごしてきたんだから。幻の13月を生きているような、そんな気分がした。




