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魔物が出現した世界で性転換して女魔族になりました。  作者: 大崎 狂花


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1/3

第1話 始まり

 戦車が、とある場所へ向かって進んでいた。ヘリも飛んでいる。


 そのヘリの中で、とある男たちが会話をしていた。


「こんな軍勢、ほんとに必要だったんですかね・・・・・・」


 若い男性がそんなことを言う。


 少し年配の男性が、それに答えた。


「当たり前だろ。むしろ、足りないくらいだよこのくらいじゃ。あの怪物相手には、万の戦車でもミサイルでも、少なすぎるくらいだろうさ」


「そっ、そんなにですか?」


 若い男性はそう言って、手元のタブレットに視線を落とした。そこには情報と共に『それ』の写真がある。


「普通のかわいい女の子に見えますけどねー」


 写真に写っていた『それ』は、怪物という言葉からはまるで対極にいそうな雰囲気の、綺麗な女性の姿をしていた。白い絹のような髪、海のような黒みがかった青色の美しい目。片方の目にはその青目の上に、よく見ると何か紋章のようなものが浮かんでいる。綺麗な肌、背は少し低めで、その代わり胸が大きい。年齢は中学生くらいの歳に見える。


 ポーズを決めて写真の中に立っているその様を見れば、雑誌に載っているモデルの写真をとってきて貼り付けたように思える。


 だが、少し年配の男はこう言った。


「ダメだぞ、見た目に騙されちゃ。はっきり言っておく。そいつは化け物だ。間違いない。見た目に騙されて舐めてかかれば、間違いなく死ぬぞ」


「そ、そんなにやばいんですか・・・・・・」


 そう言われてもう一度その写真を見ると、途端にポーズをとるその女の子がとてつもなく恐ろしいものに見えてくる。普通の女の子のそれと変わらないように見えるその瞳の奥に、何か、想像もつかないような何かが隠されているように見える。


 そして、若い男は先ほどとは違ってゾッと身震いすると、


(絶対に舐めてかからないようにしよう。間違っても誘惑されたりなんてしないように・・・・・・)


 そう思った。


 ◇


 ある日、世界中に魔物が出現した。魔物、魔物だ。ドラゴンとかオークとかゴブリンとか、なんか炎を吐き出す狼とか、ツノの生えたイノシシとかそういう明らかに普通の動物とは違った奴ら。魔物。


 そいつらに殺されて、俺は死んだ。享年41歳だった。


 前触れとかそういうのは全くなく、ある日突然にさっき言ったような魔物たちが街に溢れて、人を殺したり建物を壊していった。


 当然、俺は恐怖したよ。ただただ身体中が恐怖でいっぱいになって、走るともなく走り出していた。


 無我夢中で走っていたわけなんだけど・・・・・・


「わああああああん!!」


 色んなものが壊れてめちゃくちゃになった道の真ん中に座り込んで、大泣きしている小さな女の子と、今まさにその子に襲い掛かろうとしているでっかい蜂みたいな魔物が目に入った。


「危ない!」


 俺の体は勝手に動いていた。ついさっきまで生き残るために逃げようとしていた俺がそんなことをするのはおかしいとは思うが、俺は咄嗟にその子に駆け寄って抱きしめると、


「がっ・・・・・・」


 その子の身代わりになって、俺がでっかい蜂の針に刺されていた。完全にアウトだ。


 目の前がチカチカして、力が抜けていく。きっと毒とかが回ったんだろう。


「────!」


 女の子が何か叫んでいるのが聞こえるけど、何を言っているのか全然聞き取れない。


 こうして俺は死んだのだ。そう、死んだはずだ。少なくとも意識は途切れた。


 しかし、目が覚めた。


「ん、う・・・・・・」


 眩しいな・・・・・・。今何時だ?


 俺はいつも枕元に置いてあるスマホで時間を確認しようとした。目覚ましが鳴ってないってことはまだ起きる時間になってないのか? いやでもこの明るさは・・・・・・まさか目覚ましかけ忘れたか?


 なーんて思いつつ目を瞑りながらスマホを手探りしてたわけなんだけど、全然スマホが見つからない。


 そのうちに段々意識が途切れる前の記憶が思い出されてきて・・・・・・


「ん? あれ・・・・・・? あれ!?」


 俺は飛び起きた。


 なんだ? 俺は蜂に刺されて死んだはず・・・・・・実は生きてた? それともここは天国? いやいや、そもそも街に魔物が現れたのがすっごいリアリティのある夢だったとか・・・・・・。


「いや、どうやら夢じゃなかったみたいだな」


 俺は周りを見た。当然、普段俺が寝起きしているマンションの一室ではない。


 ところどころに破壊されたビルの破片らしきものや、道路の破片らしきものや、ガラスの破片っぽいものが散乱している。そして、それらを覆うように草やら木やらが生えている。街だったであろうこの場所は完全に崩壊していて、文明が一回滅んだあとみたいになってる。いやもうすでに滅んだのか・・・・・・?


「やばい、何にもわかんない」


 とりあえず俺は生きてるっぽいな。今は救助を待ってる状態なのか・・・・・・?


 俺は自分の胸を触ってみようとした。ちょうどその辺りをあのデカバチに刺されたんだ。


 そう、胸を触ろうとして・・・・・・・・・・・・


「・・・・・・は?」


 ・・・・・・む、胸がある。


 いや、そうだよ。胸はあるよ。全人類誰にだって胸はある。いや違う、胸があるっていうのはそういう意味じゃなくて・・・・・・


 あのさ、おっぱいがあるんだけど。明らかに女性のそれっぽい大きめのおっぱいが。


「は? ・・・・・・は?」


 見下ろすと、白くて丸い、柔らかそうな大きな胸がある。そういえば、なんかさっきから胸の辺りが重いなーとは思ってたんだけど・・・・・・え?


 そして初めて気がついた。なんか髪の毛が真っ白になってるし、すごいロングになってる。というか、俺全裸じゃん! なんで今まで気づかなかったんだ!?


 そして──


「ない! 股間のあれがなーい!!」


 あれがない。男にとって何よりも大事なはずのあれがない。あれがなーい!!


「ちょ、は!?」


 俺は思わず立ち上がって、まじまじと自分の体を見てみる。女子だ。間違いなく女子の体になってる!!


「い、いや夢・・・・・・とか? 毒のせいで幻覚を見てるとか・・・・・・」


 俺は自分の胸を揉んでみた。


「・・・・・・」


 お、おお・・・・・・柔らかい・・・・・・けど、もちもちしてていつまででも揉んでいたくなるようないい感触・・・・・・


「んっ」


 ちょっと気持ちよくなってきたぞ・・・・・・感覚があるってことは、どうやら夢とか幻覚じゃなくて本物みたいだな。


「か、鏡! とりあえず鏡ないか!?」


 俺はどこかに鏡が落ちてないか辺りを探した。デカめの鏡の破片があったので、それで自分の姿を映してみた。


 真っ白な長髪に何か紋章のようなものが浮かんでいる青い目。全身くまなくスベスベで綺麗な肌に、女神のように整って美しい顔立ち。そしてモデルのようなプロポーション。


 すげえ美人が鏡に映っていた。


「こ、これが俺・・・・・・なのか?」


 マジで女の子になってんじゃん・・・・・・え? なにこれ? なんでこんなことになってんの? え? 俺1/2? 俺はおしまい?


「ま、まさかひょっとして・・・・・・あの蜂の毒の効果とかか!?」


 そうだ、そうに違いない。それ以外に心当たりはない。


 あの蜂の毒には、きっと刺された人間の姿を変える効果とかがあったんだ! それに違いない!


 と、俺がそんな考察をしていたその時だった。


 ガサッと後ろの方から音がした。


「ん?」


 俺が振り返ると、


『ブフー、ブフー・・・・・・』


 額に大きな角が一本生えた、でかいイノシシがいた。


「ひゅ」


 俺は思わず息を呑む。


 魔物だ。やばい。この辺には俺以外に人はいなそうだ。だから、助けを呼ぶなんてことも出来ない。


 俺は恐怖に呑まれかけたが、こんな絶体絶命の状況になってしまうと逆に覚悟が決まった。


 やるしかない・・・・・・!


 俺には武術の心得とかはないし、この女子の体がどれだけ動けるものなのかわからないが、もうこんな状況になったらなんとかして隙を作って逃げるしかない。


 俺はちょうどよく手に持っていた鏡の破片を構えると、攻撃の姿勢をとった。これで攻撃して、隙が出来たら逃げ出そうという算段だ。


 しかし。


 俺が攻撃の姿勢をとると、なぜかイノシシが慌て出した。


『ちょ、待て待て! 攻撃するな! 俺は怪しい者じゃないんだ!』


 ・・・・・・あれ? なんかこのイノシシの言葉がわかるぞ・・・・・・?


「あれ?」


『落ち着けって! まずはその尖った危なそうなヤツを下ろせ!』


 これはどういうことなんだろう・・・・・・


 はっ、まさか! こいつも実は人間であの蜂の毒でイノシシに姿を変えられてしまったとか・・・・・・? だとしたらこんな反応になるのもわかる。


『違う、俺は怪しい者じゃないんだ! 俺はごく普通の──』


 うんうんどうやらそうらしいね。彼はごく普通の人間・・・・・・


『俺はごく普通の魔物だから!』


「やっぱ魔物なんかねえか!」


 ◇


『いやあんた、それは蜂の毒とかじゃないよ』


「えっ、そうなの?」


 なんか毒気を抜かれてしまったので、俺はイノシシと話すことにした。なんか言葉がわかるし。


 それで、今の俺の状況と、これは蜂の毒のせいなんじゃないかっていう俺の名推理を伝えると即座に否定されてしまった。


『いやだって、話を聞く限りその蜂ってどう考えてもビックビーだもん』


「ビックビーて。そのまんまだな」


『ビックビーの毒にそんな効果なんてないよ。ビックビーの毒って普通に致死性の毒だし』


「普通に致死性の毒!?」


『だからお前さんは普通に死んだんだよ』


「普通に死んだ!?」


 なんてこった。まさか普通に死んでたなんて・・・・・・。


『お前さんは死んだんだな。それで、魔族として転生したんだと思う』


「て、転生? 魔族? なにそれ?」


『転生は転生だよ。魔族っていうのは、そうだな、お前さんみたいに人間から魔物に転生したヤツのことを言うんだ。人間からの転生者は普通の魔物とは違った考えをするから、普通の魔物と区別するために魔族って呼ぶことにしたのさ』


「え? その言い方だと、俺魔物に転生しちゃったってこと・・・・・・?」


『そうだな』


「マジかよ・・・・・・」


 井上キリカ。享年41歳。


 死後に魔物に転生、魔族と呼ばれる存在となってしまう。

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