白百合くんの一描き
今日は私が唯一楽しみにしている選択授業の日だ。
私、地味子こと藤見小春は、
勉強は普通、運動はそこそこの音痴という、
普段はいかにも目立たない、クラスのモブだが、
昔から絵を描くのは好きで、
選択授業の美術だけは十人並みにはできるのだった。
そして今日は木炭デッサンの日、
テーマは"ペアになって、クラスメイトを描こう"だった。
先生が「みんなそれぞれ、二人組になって〜」と言った瞬間、私は絶望してしまった。
なぜならこの選択授業は13人で行っており、
こういう時私のようなモブは大抵1人余り、先生と組むか、どこかのペアにお情けで入れてもらうかだからだ。
仲良しグループでどんどんペアができていく中、
私は美術室の隅で1人静観していた。
ふと横を見ると、なんと白百合くんも余っているようだった。
どうやら、白百合くんを描きたい人同士で睨み合いが続いており、結果的に白百合くんに誰も声をかけられていないようだった。
そして、じっと見ていたせいか、白百合くんに私の存在がバレてしまった。慌てて視線を逸らす私だったが、
白百合くんがこちらに向かって歩いてきてしまった。
「藤見さんも一人?僕も仲いい人とかいなくて…よかったらペア組まない?」
白百合くんから誘ってくれるなど、なんとも贅沢な誘いだ。
周りの視線は怖いが、白百合くんの美しさを描いてみたい欲には勝てず、誘いを快諾したのだった。
(ちなみに、最終的にギャルグループの三人組が出来、一人も余ることはなかった)
カリ……
カリ……
ザッザッ……
静かな美術室の中に、木炭の削れる音だけが響いている。
そこで冷静になって気がついてしまった。
自分が白百合くんを描くのはいいが、果たして向こうはどんな作品を描くのだろうと。
私は特徴の無いモブの中のモブのため、さぞ描くのがつまらないだろうと、白百合くんに申し訳ない思いでデッサンを描き進めていた。
「…藤見さん、ちょっと見てもらってもいい?」
「ひぃっっ!?」
急に白百合くんに話しかけられたため、驚いた私は思いっきり変な声が出てしまい、顔が真っ赤に紅潮してしまった。
落ち着いたところで白百合くんの席に移動すると、
白百合くんの作品がそこにあった、が、
そこにあったのは、妖怪のような、幽霊のような、恐ろしいオーラを放つ、ホラーな私の似顔絵だった。
上手いには上手い、というかめちゃくちゃ上手い。
「え……これ…私……?」
「そうだよ!見えたままを描いただけだけど」
"見えたまま"…?と、疑問が残ったが、恐ろしくてその先は聞けない私なのであった。




