白百合くんの朝の風景
白百合くんと櫻井さんは家が近所なこともあり、朝は一緒に登校してくることも多い。
そして白百合くんはバレーボール部の朝練、櫻井さんは軽音楽部の朝練に向かう。
帰宅部の私、藤見小春は普段ぼっちなこともあり、朝はいつも1人で登校している。
傍から見ると寂しいかもしれないが、ハマっているソシャゲや漫画に集中できるので、この時間も悪くはない。
(たまに寝坊して、全力ダッシュで電車に駆け込むことはあるが…)
朝はいつもチャイムのギリギリにならないように、少しだけ余裕を持って登校している私だったが、なぜか今日は早く起きてしまった。
白百合くんや櫻井さんのように特に用事もないが、たまに早く行ってみるのもいいかと、1時間ほど早く家を出ることにした。
電車に揺られ数十分、学校の最寄りの駅に着き電車を降りた。
駅から学校へは徒歩約15分。やや遠いが、早く起きたこんな朝には、心地よい散歩のように感じる。
そんな優雅な朝の散歩を楽しんでいると、なにやら黄色い歓声が聞こえるのに気づいた。
なんとなく予想はできたが、そちらの方を振り向いて見ると、
やはり、白百合くんと櫻井さんが登校している途中であった。
白百合くんと櫻井さんはどんなに黄色い歓声を浴びても、全く偉そうな態度はせず、一人一人に挨拶をしていた。
「おはよう、今日も朝早いね」
そう白百合くんに声をかけられ、女子たちはさらに黄色い歓声をあげた。
なんだか別世界の人みたいだな、などと考えていると、白百合くんと櫻井さんにお弁当を渡す女子たちが現れた。
「あの…これよかったら食べてください!」
それまで涼しい顔をしていた白百合くんの瞳がキラキラと輝き出す。
「いつもありがとう!朝練の後いただきます!…あ、お弁当箱は洗って返すね」
「私はお昼に食べさせてもらうわ!いつもありがとうな!」
健啖家の白百合くんのことだ、おそらく朝食は食べているが、朝練でお腹が空いてしまうのだろう。
そんなに食べて全く太る様子がないのは羨ましいが、運動部にアルバイト、沢山動いている彼なら太らないのも納得だ。
そして私といえば、朝から神々しい二人の姿を見ながら、
今日自分が持ってきた自作のお弁当の焦げた卵焼きを思い出し、昼休みの時間が少しだけ憂鬱になったのであった。




