白百合くんと原宿ー後編
表参道でスカウトと野次馬の人だかりに囲まれる二人を遠巻きに眺めながら、どうしたものかと私、藤見小春は思案していた。
そんな私の思いは群衆のざわめきにかき消され、白百合くんと櫻井さんに私の存在は届かずにいた。
その群衆の中にスッと入り込んできた若い男性が一人、人々をかき分けて中心の二人の元へ向かう。
そして白百合くんと櫻井さんに向かって開口一番、
「お兄さん!うちでヘアカットさせてもらえませんか!?」
そう、表参道にはスカウトだけでなく、カットモデルの勧誘も群雄割拠しているのである。
「カット…?僕お金ないですし、友だち待たせてるので」
「そうだよ、大事な友だち待たせてるんだから!」
二人の友情を感じて胸にグッと来るものがあり、私は二人に向かって大きく手を振った。
ようやく気づいてくれた様子の二人がこちらへ向かって歩いてこようとしたその時、
「お金は要りません!!!お兄さんの写真だけ撮らせてくだされば!!」
…と、先ほどの男性が口にした瞬間、白百合くんは足を止めダラダラと冷や汗をかき始めた。
「た、タダで…ヘアカット…」
白百合くんのお財布事情を考えると、ヘアカットが無料でできるなら心惹かれてしまうのも納得である
しかし義理堅い白百合くんのことだ、友だちとの待ち合わせを気にするのも頷ける。
「白百合くーん!私待ってるから、ヘアカットしてもらって大丈夫だよー!」
私の言葉に戸惑いの表情を浮かべる白百合くん
「で、でも…」
「私櫻井さんと買い物してるから、気にせず行ってきてー!」
「わ、わかった…ありがとう!」
ーーーーーそして1時間後
櫻井さんにコスメやファッションのお店を案内してもらい、櫻井さん念願のクレープも一緒に食べることができた。
「櫻井さん、色々案内してくれてありがとう!」
「もうー櫻井さんはやめてよ、あっちゃんでいいってば!」
「確かにそうだったね」
そんなどこか照れくさいような、たわいもない話をしていると、前からヘアカットを終えた白百合くんが歩いてきた。
「おーい白百合くん…って、え…?」
白百合くんの髪型を見て、思わず驚いてしまった。
なぜなら、全く変わった感じがしないのだ。
「あれ?白百合くん、カットやめたの…?」
「え?いやかなり切ってもらったよ?」
私と白百合くんの噛み合わない会話を見かねてあっちゃんが口を挟んできた。
「あー…和葉は髪型にちょっとこだわりがあって、3ミリ以上は絶対切らせないんだよな」
果たしてそれはヘアカットした意味はあるんだろうか…と思いつつ、
美しくなびく白百合くんの髪を見ていると、そんなことはどうでも良くなった私なのであった。




