白百合くんの輝き
立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。
私のクラスには、まさにその言葉にピッタリな者がいる。
艷やかな長い黒髪を一本にまとめたその姿は、まさに眉目秀麗、
勉学に長け成績優秀、かつバレーボール部史上初の1年生でレギュラーを務め、まさに文武両道、
軽音楽部でドラムも担当しており、その才能は顧問も唸るほど、まさに才色兼備というところか…
そんな全てが完璧な者の名は、
白百合 和葉
……男性だ。
彼は、その美貌や中性的な名前から、よく女性に間違われるらしい。
本人はというと、それを自慢するわけでもなく、
いつも涼しい顔をして教室の隅で、静かに読書したり、窓の外を眺めたりしている。
その姿はまさに絵画のような美しさで、みな、話しかけることも出来ない。
そんな彼は通称、白百合の君と呼ばれている。
そして5月の席替えで、私、藤見 小春は、そんな白百合の君の隣の席になってしまった。
私は、名前の略から地味子と呼ばれている、いわゆるモブだ。
ふと横の白百合の君を見ようとするも、眩しすぎて目がチカチカする。
「ま、眩しい……っ!!」
思わず呟いてしまった私に驚いて、白百合の君がこちらを振り向いた。
「何?…僕の顔に何か付いてる?」
「あっ…え、え、えと…か、髪綺麗だね!シャンプー何使ってるの!?」
まるで乙女ゲームのような発言をさらりとする白百合の君に、
あまりにも動揺した私はあろうことか質問に質問で返してしまった。
しかも、ある意味セクハラにもとられかねないような内容である。
「ご、ごめん!白百合くん!なんでもない!!」
慌てて訂正する私に、白百合の君はまっすぐこちらに視線を向けた。
「牛〇石鹸」
「え…?なんて…?」
聞き間違いだ、そうに違いない、
私は思わず聞き返していた。
「牛〇石鹸…知らない?」
「う…嘘だ……」
驚きを隠せない私を傍目に、
白百合くんの艷やかな烏羽色の髪が輝く。
「嘘じゃないよ。…えっと、藤見さんだっけ?」
「は、はい!!」
「僕、不必要な嘘はつかないよ。これから隣の席、よろしくね」
あまりにも眩しすぎる微笑みでこちらを見る白百合の君に、思わずモブ顔になってしまった私だった。
これが、白百合くんとの出会いであった。




