宿屋にて【1】
今日は色々なことがあったなあ……と、ベッドに座り考えるあおい。あおいは何も無い空間に手を突っ込み……無限収納から部屋着を取り出す。神から頂いた衣服のうちの一つだった。
あおいは部屋着に着替えて、着ていたドレスを無限収納へと仕舞う。「これからどうしよう……」と考えるあおいだった。
転生ではなく転移を望んだあおいは、住む家も家族もなく、非常に危うい存在だった。誰が助けてくれる訳でもなく、神から授かった力一つで、生き抜かなければならないのだから。
「さっきの女の子……お友達になれないかな。」
そんなことを考えていた矢先、部屋のドアがノックされた。
「はい。」
「あの、お客様……よろしいでしょうか。」
「どうぞ。」
ゆっくりとドアを開けて入ってきたのは、先程顔を覗かせていた少女だった。
「あ、さっきの……」
「失礼します。うちの宿は前払いですので、お支払い頂いてもよろしいでしょうか。」
「あ、うん、ごめんなさい。今渡すね!」
あおいはベッド脇の小さなテーブルに置いた布袋を手に取り、中から貨幣を取り出す。
「三万五千ゴールドです。」
「三万五千……」と呟いた所で、あおいの動きが止まった。貨幣が分からないのだ。
「ごめんなさい、お金のこと、よく分からなくて……」
「では私に見せて頂けませんか?」
少女はあおいの傍まで来ると、あおいの手の上から硬貨を摘んだ。
「これは一万ゴールド硬貨です。他に硬貨はお持ちですか?」
「他には……」
あおいは布袋から全ての硬貨をテーブルの上に出した。そこには十枚の硬貨が入っていた。
「全部一万ゴールド硬貨ですね。では四枚頂いて、残りをお返ししますね。」
「うん。あの……よければお金のこと、もっと教えてくれないかな?」
「はい、構いませんよ! では少しお待ち下さい。」
そう言って少女は足早に部屋をあとにし、暫くしてまた部屋に戻ってきた。
「これがお釣りの五千ゴールド硬貨です。」
「ありがとう!」
「それで、お金なんですが……」
そう言って、少女はテーブルに硬貨を並べ始めた。そして一つ一つ指をさしながら説明していく。
「これが一万ゴールド銀貨で、五千ゴールド銅貨、千ゴールド銅貨、五百ゴールド鉄貨、百ゴールド鉄貨、五十ゴールド鉄貨、十ゴールド鉄貨、五ゴールドアルミニウム貨と、一ゴールドアルミニウム貨。」
あおいは、うんうんと頷きながらその指を目で追う。
「あと、ここにはないのがあって、十万ゴールド銀貨、百万ゴールド金貨があります。どちらもお貴族様くらいしか使うことはありませんし、美術品としての意味の方が高いかもしれません。」
「そっか。教えてくれてありがとう。助かったよ!」
「いえ、私でよければ何なりと!」
「あの、よかったら名前を教えてくれないかな?」
「私の名前はリンです!」
「リンちゃん! 私はあおい! よろしくね!」
「はい! あおい様! よろしくお願いします!」
「様なんていらないよ。」
「じゃあ……あおいちゃん?」
「うん! あと、敬語もいらないよ! 私たち、歳近そうだし!」
「でもお客様だから……」
「私は、リンちゃんとお友達になりたいな……」
「お友達……私なんかでいいんですか?」
「なんか、じゃないよ。リンちゃんとお友達になりたいんだよ。」
「私でよければ、是非!」
「だからね、敬語!」
「……分かった!」
リンはあおいを見つめて暫し押し黙る。
「どうしたの? リンちゃん。」
「あおいちゃん……どうしてそんなに可愛いの!?」
そう言ってリンはあおいに勢いよく抱き着いた。
「えええ! リンちゃんだって可愛いよ!」
「そんなことないよお! あおいちゃんは可愛すぎるよお! お人形さんだよお!」
「リンちゃん、ありがとう!」
二人は抱きしめ合い、笑い合うのだった。




