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街へ

あおいは街に入る人の列に並んでいた。

「次!」

門兵に声をかけられ、自分の番がやって来た。

「お嬢様、お一人でございますか?」

「はい、一人です。」

「……どちらの家のお嬢様でしょうか?」

「あの、家はなくて……」

「……こちらへどうぞ。」

あおいは門兵に連れられて、別の個室へと移動した。


連れてきた門兵は、個室にいた二人の兵士に話をすると、先程の門まで戻って行った。

「どうぞお座り下さい。お一人でいらしたのですか?」

「はい……」

門兵二人は何やら話をしている。

「分かりました。街の中へ入って構いません。ですが、もう二度とお一人で街の外へ出てはいけませんよ。近くの森には魔物も多く潜んでいますから。危険なんです。お遊びじゃ済みませんよ。」

「……分かりました。ありがとうございます。」

あおいは兵士に連れられて個室を後にした。


街の中は活気があり賑やかで、人通りが溢れていた。あおいは道行く人に宿屋の場所を聞き回り、さ迷いながらも宿屋へと辿り着いた。

その宿屋はとても大きく、どう見ても庶民向けの宿屋ではなかったが、あおいはゆっくりと門扉を開けて中へと入っていった。


「いらっしゃいませお嬢様。本日はどのような御用でしょうか?」

「あの、ここに泊まりたいんですけど、お金がなくて……これで泊まれますでしょうか?」

あおいはポケットから一枚のコインを取り出し、受付の男性へと手渡した。

「すみません、他国の貨幣では泊まれませんので……もしもお手持ちがないようでしたら、このコインを換金所でご換金なさってからまたいらして下さい。」

あおいは受付の男性に換金所の場所を聞き、そこに移動することになった。


「いらっしゃいませお嬢様。本日はどのようなご要件でございますか?」

「あの、これを換金したいんですが……」

あおいはポケットからコインを取り出し、男性店員へと渡した。男性はコインを受け取ると暫しコインを凝視し「少々お待ち下さい。」と言って店の裏へと消えていった。


暫くすると男性が戻ってきた。

「こちらのコインは他国の貨幣でもないため、美術品としての買取りとなりますがよろしいでしょうか?」

「はい、構いません。……他にも色んな種類があるのですが、買い取っていただけますか?」

「わかりました。見せていただけますか?」

あおいは何もない空間に手を突っ込み、様々なコインを取り出した。その様子を見ていた男性は激しく瞬きをし、目を擦り、首を傾げて頭をかいた。

「失礼します。」

落ち着きを取り戻した男性は、あおいの取り出した様々なコインを見つめる。

「こちらはどれも非常に精巧な美術品となりますが……ガラス……ではない見たこともない鉱物もあるようですので、一度お預かりして、その成分を調べてからの買取りとなりますがよろしいでしょうか?」

「何の素材でできているかは知っています。こっちから、銅、銀、金、白金、ダイヤモンド、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトです。あと他にもいくつかあって――」

「お待ち下さい。ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトですか?」

「はい。」

「……それは、御伽噺にしか存在しない鉱物ですよ。」

「でも、本当なんです。」

「……分かりました。とりあえず、こちらのコインは全て成分を確認させていただいてよろしいでしょうか。一週間程お時間を頂戴致しますが……」

「はい。でも、宿屋に泊まるお金がなくて……」

「……では、高価な美術品をお預かりさせていただく上、未知の鉱石をご提供頂くということで、こちらから前金としてお金を支払ってもよろしいでしょうか?」

「は、はい。よろしくお願いします!」

「では、少々お待ちください。」

男性は再度店の奥へと消えると、暫くして、その手に布袋を持って戻ってきた。

「ではお嬢様、こちらをお納め下さい。十万ゴールドございます。」

「ありがとうございます。」

「ではこちらにお名前をご記入下さい。」

「はい……」

「家名は……知らない家名ですね。偽名でしょうか……」

男性が呟く声は、小さくてあおいの耳には届かなかった。

「では一週間後、またいらして下さい。お待ちしております、あおいお嬢様。」

「はい、よろしくお願いします。」

あおいは換金所を後にして、先程の宿屋へと向かった。



「――すみませんが、十万ゴールドでは一週間どころか一泊も泊まることはできません。」

「そうですか……どこか、泊まれる所を紹介して頂けないでしょうか。」

「……畏まりました。それでは少々お待ちください。」

戻ってきた大きな宿屋では、どうやら一泊五十万ゴールド以上必要だったようで、泊まることはできなかった。その為他の宿屋を紹介してもらい、その宿屋へ向かうことに。


そこは二階建ての、小さな宿屋だった。

「いらっしゃいませ……ってお貴族のお嬢様が、うちの宿にどういった御用でしょうか!?」

入口を入って、すぐに見える受付にいる恰幅のいい女性が、驚きの声を上げ、その声につられて奥から少女が顔を覗かせる。

「お貴族様ではないんですが……ここに泊めて頂けないでしょうか? 十万ゴールドあります。」

「そんなご冗談仰られても……十万ゴールドなら、うちでは食事付きで二十日間泊まれますが……」

「それでは一週間泊まらせてください!」

「構わないけど……ちなみに家名も秘密なのかい?」

「家名……苗字でしたら。」


苗字を伝えるも、難しい顔をする女性。

「……分かったよ。家出中のお嬢様ねえ。じゃあ部屋は二階の奥の部屋を使っておくれ。食事は朝と晩、どっちも七時から八時の一時間の間に食堂へ来ておくれ。食堂は一階の奥だよ。」

「はい、ありがとうございます。」

あおいは言われた通り、二階の奥の部屋へと向かった。

あおいが去った後で、顔を覗かせていた少女と女性が呟いた。

「あのお客様、凄く可愛い。お人形さんみたい……」

「どこぞのお貴族様さね。貴族じゃないなんて、あんなドレス姿で言われても、何の説得力もないさね。」


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