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天界

少女が目を覚ますと、そこは見渡す限り美しい花園だった。様々な色の花が咲き、暖かい風が吹き、陽の光が眩しい。

そして目の前には小さいテーブルが一つと、椅子が二つあり、そのうちの一つの椅子には、長い白髪頭に長い髭の老人が座っていた。

「目が覚めたかの。」

老人は少女に声をかけた。その声には優しさが溢れている。

「はい。ここは?」

少女は美しい水色のドレスをその身に纏っている。

「ここは天界じゃ。そしてわしは神である。」

「神様。天界っていうのは天国のことですか?」

「天国とはまた別じゃ。ここはわしの住む世界じゃ。」

「そうですか。」と言って少女は立ち上がる。

「こちらにおいで。その椅子に座るといい。」

「はい。」

少女は神に言われるがまま、椅子に腰を下ろした。

「あおい、お主は死んでしまった。この後のことについて話すためにここに呼んだのじゃ。」

「この後のこと、ですか。」

「左様。お主にはいくつか選択肢があるのじゃ。」

神はテーブルの上に置いてあるティーセットを使い、あおいにレモンティーを差し出した。あおいは「いただきます。」と言ってそのレモンティーに口を付ける。

「お主が死んでから数十年後、新たに生を受けて人間としてまた生まれることができる。それが選択肢の一つ。そしてもう一つは、別の世界に生まれ変わることができる。」

「別の世界、ですか。」

「もしも望むならば、今のお主のまま、体の成長も心の成長も今のまま、異世界に行くこともできる……お主はどうしたい?」

「私は……」

あおいはレモンティーを飲み、辺りを見渡す。そこには自ら光り輝く美しい花も咲いていた。

「お父さん、お母さんに会うことはできますか?」

「できない。残念ながらお主のあの世界での体は壊れてしまった。またあの世界に戻るにも、数十年の歳月が必要となる。そのうちにお主の両親は死んでしまうだろう。」

「どうして異世界には、この体で行くことができるんですか? どうして、この体では元の世界に戻れないんですか?」

「死んだ元の世界に生まれ変わるには、その魂の痕跡が最小になった後、また一から産まれ落ちる必要があるのじゃ。異世界に転移する場合、魂の痕跡がないから今のままでも行くことができるのじゃ。」

「ごめんなさい、よく分かりませんでした……」

あおいは俯き、レモンティーを見つめる。

「世界の理は難解で、理不尽じゃから無理もない。できることから決めるとよい。」

「分かりました。」

神とあおいは静かにレモンティーを飲み、暖かい風が草花を揺らし、少しの時間、あおいは考えた。

「お父さんとお母さんのこと、忘れたくない。それならどうすればいいですか?」

「それならば異世界に転移することじゃ。」

「じゃあ、それでお願いします。」

不安を胸に抱えたあおいは、神の目を見据える。

「……お主は死んでも尚、両親に神の祝福を願った。その愛にわしは応えようと思う。」

「じゃあ、お父さんとお母さんは幸せになれるんですか?」

「勿論じゃ。」

「よかった……」

あおいは笑顔を見せ、レモンティーに口を付ける。

「大きな愛を見せたお主にも、わしの祝福を与えようと思う。」

「私にも、ですか?」

「そうじゃ。異世界で、お主はどうしたい?」

「私は……」

あおいは何気なく光る花を見つめながら、考える。

「お友達が……欲しいです。」

「友達か。」

「はい。私は、お友達がたくさん欲しいです。」

神は暫し物思いに耽り、あおいを見つめた。

「分かった。ではお主に友達ができる祝福を与えよう。」

「ありがとうございます!」

あおいは幸せそうな笑顔で神に答えた。

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