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ウィスプ

眩しい光に照らされて、あおいは目を覚ました。大きな欠伸をして、めいいっぱい伸びをする。部屋を出て水道へ行き、顔を洗う。

「あ、歯ブラシ……」


あおいは朝食を食べた後、桃色のドレスを着て街に繰り出した。リンから、歯ブラシを売っているお店、そして行ってはいけない場所も聞いた。

街を歩くと、通り過ぎる人々があおいの事を目で追っては、何やら話をしている。辺りを歩く人々は、ドレスなど着ていなかった。

あおいはそんな視線には気付かずに、陽の光の心地良さに気分を良くしながらゆっくりと目的の店まで歩いていく。


辿り着いたこじんまりとした店に、あおいは入っていく。

「お邪魔します。」

「あらいらっしゃい、お嬢様。今日はどのようなご要件でしょうか?」

あおいに気付いた店員の女性が、声をかけてきた。

「歯ブラシを買いたくて。売っていますか?」

「ええ、売っていますよ。どうぞこちらに。」

あおいは店員に連れられ、歯ブラシのある棚へとやってきた。

「馬の毛と、猪の毛……どちらの方がいいんですか?」

「猪の毛ね。馬の毛は柔らかすぎるから歯磨きにはあまり向いていないらしいの。」

「ではこれを一つと、歯磨き粉はありますか?」

「歯磨き粉……真珠の粉か、塩か、ワインの事かしら。塩ならうちに置いていますよ。」

「お塩……」

あおいは困惑しつつも、歯ブラシと塩を購入するのだった。


「歯ブラシ、結構高かったな……」と内心残念がりながら、街中を歩く。リンに聞いた話では、近くに公園があるとのことだった。


公園に辿り着くと、そこではたくさんの子供達が遊んでいた。

あおいはベンチに腰掛けると、空を見上げた。

雲ひとつない快晴。暖かな陽の光が頬を照らし、心地よい。

「あとで光の精霊さんに話しかけてみよう。」とあおいは思うのだった。


宿屋へ戻ったあおいは、早速塩で念入りに歯磨きをした。


あおいは丁度陽の当たるベッドに腰掛けて、呟く。

「光の精霊さん、お話しませんか?」

すると、どこからともなく声が聞こえてきた。

「あはは、僕に声をかける子がいるぞ。なんだ? なんだ?」

どうやら光の精霊が、あおいの言葉に答えてくれたようだった。

「今日は天気がよくて、陽の光がとても気持ちいいの。光の精霊さん、ありがとう。」

あおいは優しく微笑んだ。

「あはは、気持ちいい! 楽しい! 暖かい!」

「あなたは光の精霊さん? お名前はなんて言うの?」

「僕は光の微精霊! ウィスプ!」

ベッドを照らす日向の中に、キラキラと煌めく何かがあおいの目に映った。

「ウィスプくん、私はあおい。よろしくね!」

「あおい! よろしく!」

「ウィスプくん、よかったら私とお友達になってください!」

あおいは両手を胸の前で握り、緊張した面持ちで、日向の煌めきを見つめる。

「僕とあおい、友達! あはは!」

その煌めきは、あおいの元へ近付き、あおいの体の周りをクルクルと回り始めた。

あおいは杖と友達手記を手に取り、立ち上がる。

「我が名はあおい、神の名のもとに力を行使する者。」

あおいを光が包み込み、金色の魔法陣が足元に浮かぶ。

「汝を我の眷属とし、ここに縁を結ぶ。」

ウィスプの元にも金色の魔法陣が現れる。宙に浮いた友達手記の、二ページ目が開かれる。

「如何なる制約もこの縁を断ち切れない。――イングレイヴ!」

ウィスプを包んだ光が友達手記へと吸い込まれ、ページには煌めくウィスプの絵が刻まれた。

「凄い、凄い!」

ウィスプはキラキラと煌めきながら、あおいの周りを漂っている。

「ウィスプくん、あなたは何かできる事があるの?」

「僕は暗闇を照らすことができるよ!」

「凄いね! もし困った時があったら、呼んでもいいかな?」

「いいよ、呼んで!」

ウィスプはゆっくりと、光の中へ消えていった。




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