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交通事故
その時、信号は確かに青だった。居眠り運転による人身事故。無垢な少女は自動車に撥ねられ、潰され、その命を失う。
残された者は嘆き、悲しみの涙を流す。誰を恨もうとも、何を恨もうとも、変わってしまった世界はもう元には戻らない。
「お父さん、お母さん。」
静まり返ったとある部屋の中、泣き疲れた父と母に、そのか細い声は届かない。
「お父さん、お母さん。」
ふと宙を見た父と娘は目が合った気がした。
「大好き。今まで、育ててくれてありがとう。」
「あおい、天国で幸せになるんだぞ。」
まるで会話しているように、父と娘は言葉を紡ぐ。
「お父さん、お母さんも。幸せになってね。」
「あおい、愛してるよ。」
呟いた母の声は娘に届く。
「私も二人のこと、愛してるよ。」
娘の声は誰にも届かない。
赤く晴れた目に涙を溜め、めいいっぱいの笑顔を浮かべた少女は光に包まれ、そしてゆっくりと、光と共に消えていく。
遺った二人は抱き合い、支え合い、悲しみを乗り越えるため、そっと寄り添う。
願わくばこの二人に神の祝福を。そんな少女の強い願いが神に届き、奇跡が起きる。




