04話 出発!目指すはイタリアへ
「ユリ機長!準備は万端ですか!?」
「はい!!それではイタリアに、れっちゅご〜!」
「こらこら。楽しみなのは分かるけど、もっと小さな声で喋りなさい。他の人に迷惑がかかるわ」
「「は〜い」」
今日は待ちに待った旅行初日。衣類やその他諸々を詰めたスーツケースは既にカウンターで預けてある。今は僅かな手荷物を持ってセキュリティーへと並んでいる最中だ。久しぶりの飛行機とあって娘は朝から興奮しっぱなしである。
「何食わぬ顔してるけど、あなたもだいぶはしゃいでたわよ?」と痛いところを突いてくる妻。
「今ナチュラルに心読んだよね!?」と、僕は恒例のツッコミを返した。
飛行機が出発するのが朝八時頃なので、最寄りの空港には余裕を持って一時間前に到着した。だがコロナが開けてすぐのためか、空港には多くの人が押しかけていた。
「あら、ここはそれなりに大きな都市なだけあってたくさん人がいるわね」と妻がこぼす。
「はやく、はやっく!ひこうちまだかな〜」と娘はあまり周囲の人混みに興味を持っていなさそうだ。
「そうだな。あと十分ぐらいで搭乗口が開くから、それまでの辛抱だね」と僕は娘を諭した。
「わぁ〜!おそらとんでる!」と娘が久しぶりの空の旅に感動している。
だが、十分ほど経つと直に声が聞こえなくなってきた。気になって横を見ると、
「すぴー。すぴー」娘は呑気に寝ていた。
「朝も早かったし、しっかり寝かせてあげよっか」と妻は娘の髪を撫でながら言う。
飛行機での席順は、娘が外を見たいと希望したので窓際へ、真ん中に妻、通路側に僕の配置だ。外国への移動だが、二時間程のフライトのため、当然機内食は出ない。
「ぅん〜。ハッ!」と突如起き上がった娘がキョロキョロと周りを見渡す。と言っても背が足りないため、視線が機体の窓と妻の顔を行き来しているだけだが。
「まま〜。ここはどこ〜?わたしはだれ〜?」となぜかネタに走る娘。どこで知ったんだろう、非常に不思議である。
「ここは飛行機の中よ。ユリ、寝ぼけてないで窓の外を見てご覧なさい」と妻が娘に語りかける。
「ふわぁあ〜!きれいなうみがみえる!あっちにはおっきなやまが!」と目を煌めかせながら娘は言う。そう、実は既にナポリの上空まで来ているのだ。娘の言う通り、ナポリは海に面した港町である。
「今日はホテルに行った後、あっちの火山の向こう側に行くわよ」と妻は娘に説明した。
「ユリ、そろそろ着陸するからしっかりとイスに座ってて」と僕は言い聞かせた。
ちなみにEU圏内の移動に厳格な検問はないため、割と自由に国境をまたぐことができる。だから飛行機を降りたら、荷物を取り、すぐに街へと繰り出せる。
↓ツイッターに写真をアップロードしたので宜しければ見ていってください
https://twitter.com/Alex_4068/status/1481185962256437251?s=20