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2話 ロリコン魔女と小さな冒険者たち


 魔女は町外れの小高い丘の上に住んでいる。

 魔女と聞くと、薄暗くて今にも崩れそうな家に住んでいるというイメージだが、実際には違う。

 魔女の家はピカピカで、中はとっても明るい。ほどよく装飾品が置いてあって、上品な雰囲気。

 謎の薬をグツグツ煮ている大きな釜もない。

 正直、そのことはルーナにとってはすごく残念。もっと魔女魔女しい方が好みだ。


「2人ともよく来たわね」


 玄関をノックしたルーナとリリアンを、魔女が家の中に招き入れた。

 魔女は20代前半の女性だが、ルーナは魔女の本当の年齢を知らない。もちろんリリアンも知らない。

 魔女の髪の毛はストロベリーブロンドでロング。珍しい色だが、ルーナは結構好き。身長は155センチほど。体重は知らない。胸はそこそこ大きいが、巨乳というほどではない。たぶん。ルーナ的には。

 瞳の色はブラウン。髪の色は珍しいが、瞳の色は案外普通。よくある色だ。


「こんばんは魔女さん!」ルーナが笑顔で挨拶。「今日も綺麗だね!(おうちの中が)」


「こ、こんばんは(きゃー!! 12歳の金髪美少女が、わたしを綺麗って言ったぁぁぁ! ああん!! キュンってするぅぅぅ!!)」


 魔女はあまり表情を変えない。だけどよく観察すると小さな動きがある。ルーナはそれを見逃さない。

 だから、魔女が褒められて喜んだのがルーナには分かった。

 リリアンも気付いている。


「本当、なんでいつも、こんな綺麗なんだ?(掃除とか大変そう)」


「あ、ありがとう(きゃー!! 12歳の赤毛の美少女までわたしを綺麗って言ったぁぁぁぁ!! キュンキュンしちゃう!! 襲いたい!! でもガチで襲ったら街にいられなくなっちゃうぅぅ!! 我慢! 我慢よわたし!!)」


 魔女は照れるのを我慢するような微表情を浮かべ、2人を客室に案内した。

 2人はリュックを床に置いてから、客室のソファーに腰を下ろす。横幅があって、大人が3人は座れそうなソファだ。

 しかしルーナとリリアンは密着して座った。ついでに手を絡めて繋いでいる。

 テーブルを挟んで対面のソファに、魔女が座る。


(ああん!! 美少女と美少女が恋人みたいに手を繋いでるぅぅぅ!! かーわーいーいー!! 2人まとめて全裸に剥いてペロペロしたーい!)


「それで?」リリアンが言う。「あたしらを無人島に連れてってくれるんだよな?」


「ええ、もちろん」魔女はクールな声で言う。「だけどその前に、今回の冒険の注意点やなんかを話しておくわ」


 魔女が真剣な眼差しで2人を見たので、2人はゴクリと息をのんだ。


「その前に」魔女が言う。「まずは報酬についてよ。最適な島を見つけた報酬、送り迎えの報酬。計2つの報酬を貰うわ。わたしは腐っても魔女。無料では動かないの」


「うん。私たちにできることなら、何でもするよ?」


 ルーナは無邪気な笑みを浮かべて言った。

 そもそも、報酬を支払うことは知っていたので、最初から払うつもりである。確認されるまでもない。


(美少女が何でもするって言ってるぅぅぅぅ!! あんなことや、こんなことも!? もうエチエチなことしか頭に浮かばないわ!! わたしのピンクの髪の毛並みに脳内もピンクだわ!!)


「報酬、どうして欲しいか言えよ」


 リリアンは少し生意気な感じで言ったが、これはいつものこと。リリアンは誰にでも生意気だ。

 まぁ、ルーナの姉には丁寧に喋ることもある。怖いからだ。

 

「送り迎えの報酬は冒険が終わったら貰うわ。だからまずは、最適な島を見つけた報酬。お姉さんの膝の上に座ってもらいましょうか。そうね、ルーナから」

「はぁい!(魔女さん本当、チョロいなぁ)」


 ルーナはすぐに移動して、魔女の膝に座った。向かい合わせの形で。そしてそのまま魔女に抱き付く。サービスではなく、バランスが悪いからそうしたのだ。

 魔女は心の中では死ぬほど喜んでいるのだが、あまり表には出さなかった。

 この魔女が鉄の魔女や氷の魔女と呼ばれる由縁だ。まぁ、魔女は他にも多くの呼び名がある。

 ルーナは紫の魔女というのが気に入ってる。紫なのは魔女の服の色。

 ちなみに、街では真性ロリコン魔女というのがもっとも多い呼び名。陰口のようなもので、直接そう呼ぶ者はいないけれど。


「島の周囲は約5キロ」魔女が言う。「ここより南に位置していて、時差は約17時間だから、現地は今、朝の8時ぐらい。自然が豊富で、食料や水の確保にはそれほど困らないと思うわ。レベル1だし、比較的、簡単な冒険になると思うわ」


「早く行きたぁぁい!」


 ルーナは魔女の耳元で嬉しそうな声を上げた。


(きゃうぅぅぅ!! 美少女がわたしに抱かれてイカせてって言ってるうぅぅぅぅ!! 濡れちゃう濡れちゃう!! てゆーか交代させなきゃ襲っちゃうぅぅぅ!)


 魔女の指示で、ルーナとリリアンが入れ替わる。

 リリアンもルーナと同じ座り方をした。


「あたしも楽しみ! 魔女さんありがとな! 大好き!(ルーナと冒険の次ぐらいに!)」


(はうっ!! 美少女がわたしに抱かれて大好きって叫んでるぅぅぅ!! ヤバい!! もうヤバい!! チュッチュしたーい!! でも我慢よ!! そう、我慢よぉぉぉ!! お楽しみは取っておくのよー!)


 魔女の指示で、リリアンがルーナの隣に戻る。

 リリアンは戻るとすぐにルーナと手を繋いだ。とっても自然に手を繋いだ。


「ええっと」魔女が言う。「レベル1とはいえ、日中の気温は30度を超えるから、熱中症に注意すること。それから、日焼けも命取りだから気をつけるようにね。雨の少ない時期だから、たぶん降らないと思うわ。あと、ケガをしないように。何かあったら緊急用のベルを鳴らせば、わたしが迎えに行くわ」


 いつの間にか、魔女は右手に金色の小さなベルを持っていた。

 それをテーブルに置いて、スッとルーナたちの方に滑らせる。


「約束よ? 危険だと思ったらそのベルを鳴らすこと」

「「はぁい!」」


 2人は元気よく返事をして、ベルはルーナが回収。リュックに詰める。


「そして最後に、2人に弓矢をプレゼント」


 魔女は両手に小さな弓を持っていた。

 魔女は別に魔法を使ったわけではない。手品だ。

 ルーナはリュックにベルを詰めていて、リリアンはそれを見ていた。要するに、2人とも魔女から目を離したのだ。

 手品だと分かっていても、2人は少し驚いた。


「使うかどうかはご自由に」魔女が言う。「矢は3本ずつあるわ。この弓は子供でも扱える小さい弓で、ミニコンと呼ばれている物よ。正しくはミニコンポジットボウ」


「合成弓の小さいやつだね」とルーナ。

「骨とか色々な素材で作ってるんだよな」とリリアン。


 2人とも冒険に必要な知識は一通り持っている。


「それじゃあ弓矢を持ってリュックを背負って。可愛い冒険者たち」


 魔女が立ち上がる。

 ルーナとリリアンは急いで矢をリュックに詰める。それからリュックを背負って、最後に弓を取って立ち上がる。


「神域属性、空間の攻撃魔法【転移】」


「え? 攻撃魔法?」ルーナが驚いて言う。「私たち攻撃されちゃうの?」


 臆したわけではない。魔女のことは信頼している。ただ少しビックリしただけ。


「元々は嫌いな奴を任意の場所に飛ばす魔法なのよ」


 魔女が説明しながら魔法を発動させる。


「ほら、発動するわよ」


 グニャリ、と空間が歪む。


(え? どうなったの?)


 と、ルーナが思った次の瞬間には、朝の日差しが眩しくて目を細めた。

 床の感覚が変化していて、よく見るときめ細かい砂だった。

 そして、目の前にはどこまでも広がる青い海。

 ルーナとリリアンは顔を見合わせて、満面の笑みを浮かべる。


「「やったぁ!! 冒険の始まりだぁ!!」」


 思わず飛び上がって、2人はご機嫌な声で叫んだ。


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