取り皿に、大根おろし。
「ぬおりゃあああああ……ッ!!」
心のなかで叫ぶ。
実際には、バラエティー番組を観ながらだった。
本当に叫んだら、迷惑きわまりないだろう。
ごしごし、ぐしぐし、じゃかじゃか。
ごしごし、ぐしぐし、じゃかじゃか。
ごしごし、ぐしぐし、じゃかじゃか。
これ以上はないぐらいに。
思わず指が釣ってしまうほど。
とにかく山盛りにしたい。
やがて運ばれてくるモノに対して間に合うように。
足りるように。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
指先が刻まれる寸前まで頑張ってみた。
染みた香りがツンと堪える。
直ぐ様、洗い落としたかった。
「出来たよ~」
食卓にドンと置かれたその見た目にすべてが吹き飛ぶ。
青さを散りばめた、鍋のなかで燻る豚肉。
耐えきれない旨みと、お椀越しの湯気。
白菜や菊菜があるからこそ、箸がススんだ。