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切断術師の異世界紀行  作者: ぴっちぃ
序章 救いの手
8/15

8話 驚嘆

「体痛い・・・」


「一緒に寝て良かったんだぞ?」


コテージにいたころはハンモックで寝ていた。

しかし、ここにはベッドが1台しか備え付けられておらずハンモックもない。

リハがベッドに寝ていた為、隣の部屋にないか探しに行ったがコテージと同じ様な物置きになっており

寝転がるだけのスペースもなかった。

多少ベッドは広いが、リハと一緒に寝るのは躊躇ためらわれた為、

仕方なく椅子に座りテーブルに突っ伏して仮眠を取ったのだ。


外はすでに暗くなっており、辺りは静かだ。

駐留部隊も編成を終え、既にジンユに向かったのだろう。


「良介は小屋から二角獣(バイコーン)を出してきてくれ。そこに鞍があるからそれもだ」


家にあった食料を袋に詰めながら、リハが部屋の隅に転がっている鞍を指差す。


「二人で乗るの?」


むさ苦しいぞ。


「二人乗っても大丈夫だ。あれは二角獣(バイコーン)だから力も強い」


「違う、そうじゃない。」


全身ムキムキのトラ顔と密着して馬に乗るのはちょっと勘弁して欲しい。


「ふむ、この格好では嫌か。仕方ない、俺は準備してくる」


そう言うと、物置に入っていく。

着替えるのかな?ほんとシャツくらいは着てほしい。


とりあえず小屋へ行き、良介は恐る恐る二角獣(バイコーン)に近づく。

全身真っ黒で、耳の後ろからS字にねじれた様な角が生えている。

かっこいいけど、噛みついてきたりしないよね?

二角獣(バイコーン)をじっと見ながら、小屋につながれていた手綱をほどく。

とても大人しく、抵抗するそぶりも見せずに良介に連れられて行く。


「僕が着けても大丈夫かな?」


二角獣(バイコーン)を撫でてみる。


「よ~しよし、良い子だ。鞍を付けるから暴れないでね?」


家の前まで連れて行き、柵に結びつける。

鞍なんてつけたことないが、ベルトが付いているのでここを首のところに固定するのだろう。


「準備はできたか?」


何とか鞍を装着していると、背後から扉の開く音と共にリハの声が聞こえた。


「鞍なんて初めてつけたけど、案外なんとかなるもんだね」


そう言いながら振り返った。

そこには、ほどけば腰まであるだろう長い黒髪をサイドテールにした20代前半くらいの女がいた。

革製の胸当てとかなり短いスカートを身に着け、腰に剣を下げている。

胸当ての下は何もつけていないのか、小麦色に焼けた地肌しか見えていない。

スカートからは各二本の黒い皮ベルトが太ももと脹脛ふくらはぎ付近で交差し、膝当てと拍車はくしゃ付のブーツにつながっている。

鍛え抜かれた筋肉隆々の腕や腹筋、切れ長の目の鋭さで歴戦の戦士のような印象を受ける。


「あの・・・どちらさまでしょう・・・?」


近づいてきた女に声をかける


「何を言ってるんだ?鞍が緩いぞ。もっときっちり締めないと鞍ごと振り落とされるぞ」


と言い、鞍のベルトを締め始める。

良介がじっと少女を見つめていると、


「俺の顔に何かついてるか?」


と振りむいてニヤつきながら声をかけてくる。

まさかとは思うが・・・


「・・・リハ・・・な・・・の?」


良介の声が上擦る。確かにこの声はリハの声だ。

筋肉ムキムキなところも、目の高さも同じだ。


「最初に俺は人だと伝えたはずだが?」


「そうじゃない!いや、それもだけど女の恰好じゃないか!」


「俺は男といった覚えもないが?」


この14か月の間、リハのことを虎のオッサンだと思っていた良介は驚愕していた。

リハはそんな良介を尻目に、あぶみを使い器用に馬に乗る。


「ほら、手を出せ」


良介が手を差し出すと、リハが引っ張り上げる。

確かに峡谷きょうこくで握った、リハの手の感触だ。


「飛ばすから落ちないようにしがみついてろよ?」


リハの後ろになんとか座れた直後に、走り出す。


「いやいやいや、その前に説明を要求するっ!」


「ほら、落ちるなよっ」


そういうと、リハは問答無用に二角獣(バイコーン)の速度を上げる。


「ちょっ・・・」


急加速した為、良介はリハにしがみつく。

二角獣(バイコーン)のスピードは滅茶苦茶早かった。

新幹線の窓から見えるような景色で木々が通り過ぎていく。

風切り音がうるさく耳が痛い。

リハの背中に額を付けないと息もできないくらいだ。


「ぎゃぁぁあ・・・」


しっかりとしがみつく。良介の腕にリハの腹筋の弾力が伝わる。

それでも振り落とされそうになるため、良介は腕を交差させるようにリハに抱き着く。

手のひらがふっくら柔らかいものに触れる。


「おい、良介はまだまだ子供なんだな」


胸当ての下から右手が鷲掴みにして居たことに気付くと、良介は慌てて手を放す。

減速してくれていなかったら良介は転がり落ちていただろう。


「ご・・・ごめん~っ」


良介は大きな声で謝罪する。


「まぁ減るもんじゃない。鍛えているからかあまり大きくはならなかったが、そこそこ柔らかいだろう?」


そう言いながらリハは振り向きニヤっと笑う。

正直見た目は同一人物とは思えないが、中身は一緒だなと良介は笑う。

そして、時たま口が歪んで見えていたのはニヤついてたんだなと理解する。

トラ顔の微妙な表情までは読み取れなかったし。


「ごめん。気を付けるよ」


再度謝りながら、良介はリハにしがみつく。

気恥ずかしいが、しがみついてなきゃ本当に振り落とされてしまう。


「なぁ、なんでずっとあんな姿してたんだ?」


「いろいろと理由はあるが、一番の理由はトワカに戻らないと解除できなかったということか」


「・・・上半身裸の理由は・・?」


一番気になったのはそこだ。


「動きづらいだろう?」


「そんな理由!?」


女の子が裸でうろついちゃダメです。

と心の中で突っ込む。


「昼頃までには着くだろう。寝ていてもいいんだぞ?」


「冗談っ! 落ちちゃうよっ」


「起きているならもっとスピード上げても問題ないなっ。ほれ。しっかりしがみついてろよ?」


「ぎゃぁぁあ・・・」


夜闇にこだます良介の悲鳴を無視しながら、二角獣(バイコーン)は速度を上げ夜道を走り続ける。





「なかなか追いつけないね」


幾分慣れてきた頃に、良介はリハに問いかける。


「いや、駐留部隊はもうジンユにはついているはずだ」


「えっ、早くない?」


一角獣(ユニコーン)は飛行できるからな。移動に関しては二角獣(バイコーン)よりも早い。コイツとはまだ付き合いが短いが、数少ない(・・・・)仲間さ」


そう、首筋を撫でながら答える。


「なんで聖騎士(アイツ)はリハのことを様付けで呼んだの?」


「・・・あいつはリックっていう。昔剣を教えたことがある。良介の兄弟子だな」


「それだけ?」


「様付けはやめろと言っても聞かないんだよ」


リハがため息をつく。

若干嘘くさいが、この調子じゃ問い詰めてもうまくかわされるだろう。

今度そのリックに会った時、直接聞いてみよう。


「全身緑でトラ顔な理由は?」


話題を変えてみる。

そういう見た目の種族だと思っていたので、今まで話題にはしなかった。

姿形がどうであれ、リハは僕にとって恩人だ。

ただ、本当の姿じゃないとなるとどうしても気になってしまい、聞かずにはいられなかった。


「またその話か・・・。まぁ隠すほどのことじゃないか。俺は記憶を持ったまま生まれ変わっている。前の姿に似せたんだ」


まさかの転生発言。


「前は男だった?」


「失礼な。前も性別は女だ!まぁガサツなのは前からだがな」


と笑いながら答えてくれる。


「・・・カッコよかったよ。女性には見えなかったけどなっ」


トワカからジンユまでは人通りはないが、トワカへの輜重隊の為に道が整備されている。

道幅も広く、見通しも良い一本道なので移動の際はそこまで警戒する必要はない。


「どうやって変装していたの?」

「変装じゃない。変化(チェンジ)が使えるよう付与されたアイテムを使用した」


「なんでスカート?」

「ズボンがなかった。ローブはあるが、こっちのほうがマシだ。腰蓑のほうが良かったか?」

「それでオッケーです」


今の服装でも結構際どい。


「なんで転生したの?」

「なんでだろうな。わからないのさ」


良介もここに転移した理由はわからない。

聞かれても困る質問だったかな?


「リハはジンユから来たの?」

「そうだ。普段はジンユで働いている。えらく色々と聞いてくるな」


「今ならいいでしょう?移動中暇だし。答えられない事は答えなくても大丈夫。ただ、知りたいんだ」

元々のんびり屋の性格な良介だったが、今ならとリハを質問攻めにした。


「リハ何歳?」

「秘密だ。女性に年齢を聞くのは嫌われるぞ?14か月気づかなかったんだから、今更かもしれないが」


「魂樹の墓参りは嘘だったの?」

「嘘じゃない。が、真実でもない。魂が囚われていないか確認がしたかった」


誰の・・・と言いかけて良介は口をつぐんだ。


「誰の事かは聞かないのか?」


逆にリハ聞かれてしまった。


「いや、良い。大事な人だったんだろ?それで十分だよ」


「そうか・・・」


しばし沈黙が続く。

空に浮かぶ双子星を眺めながら、


「あの双子星って名前あるのかな?」


っとボソっとつぶやいた。


「あれは、レヴノコとルーセラだ。双子神の名前を冠している」


そんなの教えてもらってないよー。と心の中でつぶやく。


「そういえば、こちらの言葉を覚えた(言語習得)後は(スキル)の修行ばかりだったな。ジンユに着いたら、もうしばらく一般教養を教えてやるさ」


顔に出ていたようだ。リハが苦笑いしながら答えてくれる。

しかし、ジンユに着いたらリハとはお別れになると思っていた良介はビックリする。


「いいのかい?」


「言ったろう?教会に引き渡してバイバイするつもりはないさ」


「・・・ありがとう」


そういえば、リハに対して感謝の言葉をちゃんと伝えたことがほとんどなかったことを思い出す。

ちゃんとお礼は言うようにしないと・・・と思う良介。


「ん?何か言ったか?」


「・・・なんでもない」


次からでいいか。

ちょっと恥ずかしくなった良介は、言葉をごまかしたのだった。

とりあえずリハがヒロイン化するまでは何とか出せました。

気持ちが早って思うように描写できず。

後ほど加筆するか、補足の話を入れるかもしれません。

続きは再度見直し、加筆修正後にUPしますのでちょっと遅くなります。

設定は全部できてるんですが、話中に盛り込むのが難しいです。

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