豆腐の角に頭をぶつけて死んでみよう
早速だが、人を殺そうと思った事はないだろうか、殺したい上司、殺したい友達、あるいは元恋人、誰にだって殺したい人の一人や二人いるのではないだろうか、だが、殺そうとしても問題が出てくる。アリバイ、証拠、そして凶器。
凶器を選ぶにあたって一番重要なのはどうやって警察の目をくらますかではないかと私は思う。
ナイフは血痕が残るし下手な場所を刺すと返り血も浴びるだろう、銃ならどうだって?馬鹿言っちゃいけない、銃声もするだろうし消音器を使っても弾丸を捨てても弾痕は残る。そもそも撃った後体の中に弾丸がめり込んでしまえばお手上げだ。
そこで、私がお薦めするのが豆腐である。
何を言っているんだコイツはと思われただろうか、だが考えてみて欲しい、深夜に豆腐で人を殴り殺害、その後朝食に豆腐の味噌汁なんかを作って食べてしまえば凶器は自分の胃の中である、完璧だ。
警察もまさか豆腐で殴られて死亡したとは思わないから固いレンガかなにかで撲殺と見立てをするだろう。つまりこの小説は…
『豆腐の角に頭をぶつけて人は死ぬのか、もしくは人を殺せる程固い豆腐は作れるのか』という事を思い付いた馬鹿な男の実験記録である!
そもそも豆腐とはなにか、ウィキペディアによると大豆の絞り汁を凝固剤で固めた物とある。なんと!色や食感はどうでもいいらしい、そこで私は今回どこまでを豆腐と定義するかを決めた、それが下の3つである。
①大豆を使っている事(豆腐の定義のラインギリギリまで攻めた結果)
②食べれる事(これは殺害後食して証拠隠滅を謀るため)
③立方体である事(大豆を使って食べれる食品が大量にあると気付いたため)
ちなみに先程『固い豆腐』や『豆腐の角に頭をぶつけて死ぬ』などのワードで調べた所、豆腐線形加速器というものや固めの豆腐を見つけたのだが、加速器は撃った後対象にぶつけると飛び散ったり、炒めても崩れない程度なのでこれでは②の条件や人を殺すというそもそもの前提に反してしまう。やはり自分で作るしかないのか…
実験①…凍らせる
凍み豆腐というものをご存じだろうか、名前の通り凍らせた豆腐で解凍して煮物に使うと味が染みやすくなるらしいこれはいい、早速作ってみよう。
まずはお財布に優しい木綿豆腐を購入、え、なぜ最初から凍み豆腐を買わないのかって?それは殺そうと思ったらすぐ殺せるかどうかを調べるためである。凍み豆腐は手に入り難いし、業務用冷蔵庫を使わなくとも家庭の冷蔵庫で作れる事が分かれば凶器の入手がより簡単になり、凍らせるだけならpriceless,ohyeah という訳である。
しかし、もしかしたら絹のほうが意外と固くなるのか!?というパターンも考えて、最終的に絹と木綿を一丁ずつ購入した。
さて、それぞれ3分の1程に切り、19:40から凍らせ始めた。
22:30に確かめてみる、すると!
黄色くなっているではないか!色的には高野豆腐の色を思い浮かべてもらえればいいと思う、よーく見てみると絹ごし豆腐の方が若干黄色が薄い事が分かる。そして、触ってみると十分に固い!これは殺せる!
例えるならば高野豆腐色の氷をおもい浮かべてもらえれば分かりやすいと思う。
さらに観察してみると回りに水のようなものが張っている、水が抜けたということだろうか?
さて…食べるか…、包丁で砕き欠片を口に入れる。
「あ、普通の氷…うわ!なんだこれめっちゃまずい!」
多分最初は周りを氷がコーティングしているので、氷の味がするものの溶けた後、不味いなにかが舌に触れたのだろう。この不味い物、間違いなく豆腐である。
「これは、あれだな、ガリガリ君豆腐味だな。」
いままで食べたなかで間違いなく一番不味いアイスである。
しかし、これで人を殺せるということは分かった、次は解凍して料理に使えるかどうかである、
一晩解凍して、朝様子を見るとうわあ!黄色い水が豆腐の周りに溢れている。対して豆腐の方はというと黄色が抜けて白く、弾力もある。絹ごし豆腐の方はなんかヨレッとなって疲れたサラリーマンみたくなっているが、木綿豆腐の方は至って普通、調理にも使えそうだ。
豆腐はうずみ豆腐(豆腐とゴマ味噌と刻みネギを合わせて熱々のご飯にかけたもの、めっちゃうまい)でいただく、
「うん、うまいうまい。」
本当に普通の豆腐である。なにもしていない豆腐と比べても気持ち固いくらいであり、問題なし!
さて、これで終わってもいいのだが…
「これもう一回冷やしたらどうなるんだ?」
多分水分はそれなりに抜けたはず、この状態で冷やしたら黄色くなるのか?それとも白いのか?
17:50から冷却開始、19:30に確認すると
「ほほぉ、黄色くなったか…」
しかし、一回目と比べて黄色が薄い、2時間かけて解凍すると、面白い事が分かった最初解凍したとき出ていた黄色い水が全くと言っていい程でていない。
何故黄色になるのか、何故水分が抜けても食感、弾力が変わらないのか、興味は尽きないが、殺せるという事、食べても問題ない事が分かった。結果としては大成功である。
実験②…熱する
これは、先程の実験とは真逆のレンジでチン、オーブンでブンして豆腐の中の水分を蒸発させようという試みである。まぁ期待度はあまり高くないので一応である。
レンジで1分程熱してから大きな問題を発見してしまった。確かに水分は抜けていっているのだろうが、どれ程抜けているかがさっぱり分からない、見た目に全く変化がないのだ、5分やってもレンジから出てくるのは熱い豆腐である、水分を抜くのならば冷やして解凍した方がよっぽど分かりやすい。
よって中止!
実験…③重しを乗っけてみる
うん、悪くない考えだとは思う。ただ、あのふにゃふにゃの豆腐にどんだけ重りを乗っけたらレンガのように固くなるのやら…先ずは小さな物から段々と乗っけていこう、使う豆腐の大きさは絹ごし豆腐が3×3×7.5、木綿豆腐が3×3.5×6.5の物を使用
最初は全体的にバランスよく重りを乗っけていったものの意外と潰れないので一点に集中して重りを乗せると、
絹ごし豆腐は約250グラムで崩れ、木綿豆腐は約450グラムで穴が空いた、思ったより頑丈だが、人を殺すにはぜんぜん足りない、さて、どうしたものか…
そこで思い出したのが片栗粉と水を1:1で混ぜた物質である、その物質は通常の状態では液体だが、強い衝撃を加えると固くなる!知らない人は調べてみてほしい、とても面白い物が見れると思う。
そこで、知り合いの科学のM先生に聞いてみた、M先生、どうもありがとうございました。
M先生によると、あれはウーブレックという物らしい、ウーブレックの原理としては、片栗粉の分子と水の分子が混ざりあっている状態に強い衝撃を加えると片栗粉の分子がキュッと集まり一時的に固くなる。しかし、すぐに水の分子が片栗粉の分子の隙間に入り込むのですぐに液体状になってしまう。
そして、ウーブレックの条件はザックリ分けて2つ
①ギリ固体でギリ液体という微妙な状態であること
②分子が小さいこと
「……うん、無理!」
だって豆腐ってガチ固体じゃん!なにギリ固体でギリ液体って!そもそも最初に設定した③に引っ掛かってるしね!
後、豆腐の分子は大きいらしいし、知らんけど。
よって無理!中止だ、中止!
実験④…そもそも頭を上手くぶつければそれで死ぬんじゃね?
いや、でも難しいだろ、これ…
これが難しい理由は2つある。
1つは当たる表面積の問題である、当てた時、表面積が大きければ大きいほど、威力は高い、しかしである。
木綿豆腐等を見れば分かると思うが、表面がぼこぼこしているので、この表面積の当り方が非効率的であり、威力を稼ぎにくいのだ。
もう1つは弾力だ、豆腐には弾力というものがある、そのため衝撃が少なからず吸収されてしまい、高い威力を叩き出せないのだ。
そして、「後豆腐って柔らかいから砕けちゃうしな。」と思われたあなた!それは間違いである、なぜなら豆腐を砕かずに相手を殺す方法はある、
それは、円錐形の豆腐を地面に置けばいい、つまり名探偵コ○ンの毛利蘭の頭の角みたいな形の、少しも表面がぼこぼこしていない豆腐を尖った方を上にしておき、そのはるか上から相手を突き落としてやれば毛利蘭のアレならぬ豆腐はコンクリート以上の硬度を持って相手の体に突き刺さり、豆腐を砕かずに相手を殺す事が出来る!豆腐は無事!相手は胸を貫かれ、全身を地面に打ち付け死亡!
…あれ?これ豆腐いらないやん。
結果としては人を豆腐のみで殺すには凍らせるのが一番良いと分かったわけだが、最後にこの実験の事を友達に話すと、そいつは「それ氷の塊でもいいんじゃない?」と事もなげに言ってきた、しかし私は思う、
そんなのはつまらない、と
確かに氷でもいいかもしれない、だがしかし!それで誰が得をする?氷で撲殺なんて誰でも思いつく、被害者はあの世に行ったとき何て言う?
「俺、氷で殴られて死んだんだぜ!」
対する周りの反応はせいぜいふーんである。
これが
「俺、豆腐の角で頭ぶつけて死んだんだぜ!」
と言ってみればいい、そんなやつ多分他にいないから一生(もう死んでるけど)の自慢になる。
それに現実的な話をすれば、人を殺せるぐらい大きな氷を作るのは大変だし、製氷器を買わないといけないから金もかかる、しかし、豆腐を凍らせれば必要経費は80円!作るのにかかる時間は数時間で済むではないか!
よって私は殺害の凶器に豆腐を推すのである。
ここまで読んでくださった物好きな皆様、ご静聴まことにありがとうございました。
今回の実験に対する質問、こんなことを調べてほしい、はたまた、感想でも構いません、なんでもコメント待っています。
今回の実験にかかった費用…160円
時間…2日
実験に使った豆腐は全てスタッフ(1名)がおいしくいただきました。