ヴァルキリー、風呂入る。
「ラノベの主人公はちょっとイカれてるくらいがいいんだ。中二病なんてごくごく当たり前の成分。この先なんの役にも立たなさそうな幼女のヒロインを救うために世界を滅びてもいいんだよこの野郎、とかすっげえ強そうな敵キャラに啖呵切ってさ……世界じゃなくてもいいや。とりあえず本州が敵の操る巨神兵かなんかの極太ビームで一気に焼け野原になってさ……そのくらい投げやりなくらいが逆にプロの出版社で通用する……に違いない」
高校一年目の二月の話。俺の名前は麻生晋三といって、将来の夢はラノベ小説作家で寝るとき以外はワナビマシーンとしてキマっちゃってる学生だ。
「まあ主人公は人間としてのゲシュタルト崩壊を成すことで初めて世間に評価されるわけだな――誰か一人のための勇者になる――簡単にまとめればこんなところか」
登校する際は自らのラノベ論をブツブツと展開。これが日課と化していた。
学校に着き下駄箱を開けると手紙が入っていた。
「リアルでこういうことあるんだな」
第一声がこれだった。ちっとも驚いたりはしない。
「いやはやこれでも俺はワクワクしてるよ……相場的には七割がたラブレターというやつだろう。残りの三割は(単純な入れ間違い、いたずらを前提としたドッキリ、???)でほぼ網羅できるだろう。開ける前に断言するけど俺はこの『???』という未知の可能性に賭けるね。ここで予想通りのブツが入ってたらむしろツマラナイ。それにヒントもあるしね」
手紙といってもラブレターにありがちなレターパックのようなものではなかったのだ。上履きよりひと回り小さいくらいの茶封筒がひとつ、たったこれだけ。これほど恋愛感情の欠片も見えてこないラブレターはまあ無いだろう。表面に俺への宛名があったので入れ間違いという線も消えた。
「例外としてバレンタインデーが近いが、まあここまでくると関係ないな――ほらな」
カサカサと封筒を開帳。
『昼休み校舎裏にて。来なければ貴公の命はねえ』
答えはまさかの殺害予告だった。
「貴公の命はねえっていわれてもなあ。これ書いたヤツは日本語もうちょっと何とかならなかったのかね」
正直複雑な気持ちだった。これならスイーツ感たっぷりのキラキラな装飾がなされたゴージャスなラブレターをもらった方がスカッとしたに違いない、多分。
「ラノベ的にこういうのはどうなんだ。そもそも俺を呼び出したのは女性とは限らないわけで。意外と『貴公の命はねえ』ってのは実は読み間違いでさ、『貴公の命パねえ!』と言いたかった。つまり『ハンパねえよ貴公!』っていう一種の称賛という解釈ができ……ねえよなあ」
そんな考えを張り巡らせているうちに指定の校舎裏に着いた。さあ来い、今日あったことをそっくりそのまま私小説としてぶち込んでやる。
「――待っていたぞ!」
その声は上からやってきた。『彼女』はきれいに着地すると持っていた一メートル近くある直剣を素早く抜き、俺が身動きできないよう俺の制服の肩あたりを近くの大木に貫通させた。あっという間の出来事で俺は何もできなかったのだ。
「来てもらえて私は嬉しいよ」
人の制服をぶっ刺して何を言っているんだ。
彼女の服装は制服……ではなく鎧を装着していた。鎧といってもフルアーマーではない。ライトアーマーというか、機能性を意識した体の輪郭がきっちりわかる必要最低限の保護を目的とした鎧を着ていた。
スカート丈まで伸びた銀色の長髪がはらりと揺れた。精悍でとても凛々しい顔立ちをしており精巧な人形を圧倒するような風格を感じた。ヘルムなどはつけておらず、とてもご利益の有りそうな羽飾りをつけていた。
俺はこの人を知っていた。というか結構な有名人だ――ヴァルキリーさん――ともかくそう呼ばれていて本名なんか知らない。俺の一つ上の二年生にあたる先輩。くやしいが身長は俺よりギリギリ高くておおよそ一七八センチほどか。
「またヴァルキリーごっこですか先輩」
この人のなにが有名なのかというと、事あるごとに鎧を着て剣を振り回しているなかなかにイッちゃってる人物なのだ。
「ごっこなどではない。私は主神であるオーディン様に仕えし半神だ。人に神の行いなどそうそう理解できるものではない」
なっ、こんなこと言うんだぜ。なまじ結構な美人なせいで『残念神』とかひそひそ言われてる始末なのだ。
「とりあえず制服の弁償をしてください残念神」
俺は持ってたラノベを読みながら平然と抗議した。この人の暴走っぷりは今に始まったことではないので驚くに値しない。こっちは電撃、富士見、MF、GA、HJ、ヒーロー文庫に夜はオンノベと大量の積み本消化しなきゃいけねえんだよ。
「神が人間の衣服を誂えるとでも思っているのかね。それに麻生君、きみはこの魔剣が見える以上素質があるのだ。来たる終末戦争に対抗すべきエインヘルヤルとなれる可能性すらある。光栄に思うがいい」
光栄もなにもプライベートでもこんな調子なのだろうか。
「要件をお願いします先輩。用があって俺に殺人予告したんでしょ」
「ふむ、どうやら私は人に物を頼むのが下手なようだ。そこについては容赦願いたい」
先輩は刺さっていた剣を抜いて納刀すると俺を挟むように壁際に手をどんと当ててきた。これが逆壁ドンとかいうやつだろうか。どっちにしろ、この人はマジで物の頼み方がヘタクソだと思った。
「私に『セントウ』を教えてほしいのだ」
先輩はこんなことを言ってきたのだ。
「はあ、切るなり殴るなり戦えばおkじゃないですか」
「それは戦闘だろう。私は戦女神だぞ」
「野球のさ」
「銭闘」
「なにげにいい切り返ししてきますね」
「これでも私は日本語はコツコツと覚えたからな」
先輩は鼻息を荒くして得意気に答えた。銭闘なんか知っててもなんの役にも立たないだろうに。
「私が言っているのは『銭湯』だ。君の家は銭湯とやらで生計を立てているのだろう」
どうやって調べたのだろうか、思わず舌打ちしそうになった。
「ええ、はい、まあ、ですね(うわっ、とんでもない人に目をつけられたな)」
生返事を返しつつ俺はそんなことを思った。理由としては――
一:たしかに俺の家は銭湯を営んでいる。なんと親は揃って長期海外出張中。
二:つまり俺がひとりで店を維持している。学校が終わり次第速攻で帰って浴場を掃除している。
三:営業中は入場料の受付をしつつ……ひたすらラノベを読みたいんだよ!
――思わず最後は熱くなってしまった。要は静かに読書をしたいだけなのだ。可能なら書きたい。
「分かってるとは思うが私はしつこいぞ。仮にこの場を凌いだとしても君の服がボロボロになるまで追い回してやるから、その日が来るまで君は制服を修理に出さない方がいい」
「あんたがいうな! エキサイト翻訳でもそんな言い回しはしないぞ!」
まあいい、ちょうど今日は定休日だからあとで案内してやることやったら帰ってもらおうじゃないか。ついでにうまくダマして店の掃除をさせてみよう。それがいい。
「はあ、わかりました。じゃあ今日の放課後俺についてきてください。少しでも遅れたらこの話はなかったことに」
どうやらヴァルキリー先輩は、銭湯や風呂というものを全く知らずに育ってきたのだそうだ。外国出身、帰国子女……まあそんなところか。
「普段はシャワーなのだけどな、不死王の連中と一戦交えた時はそういった設備などなくて湖で一発浴びるのが関の山だったな」
想像力豊かな生い立ちだなあ。きっと不死王っていうのは高校受験の暗喩だろう。普段からこんな言動ばっかしてるからいざ受験勉強は大変な思いをしたに違いない。その結果まともにシャワーを浴びるような時間もなかった……と。意外とこの人の設定、原案でラノベ書いたら壮大なファンタジー系作品作れるんじゃないかな。でもこういった妄想をアウトプットするあたりラノベマンな俺と特異点なんてないのかな。
「と、ここです。俺の店【褌湯】です」
俺は店の前につくと右脇にある立看板を指さした。
「む……なんて読むんだ。特に一文字目、湯はわかるが……ぐんゆ?」
「うわっ、褌が読めないのですか先輩! もし終末戦争で漢字の読み書きがあったらどうするんですか!?」
先輩の扱い方がわかってきた。この人は近年における受験戦争における被害者みたいなものなのだ。ストレス発散のためにありもしない妄想を展開し、剣を振りかざしているだけの――
「わ、私のせいでアース神族が負けるだと! ありえん、褌が、褌がッ! たかが褌が読めなかっただけで! 偉大なるオーディン様の右腕とも言える私が国語力ゼロ!! 妹分にも馬鹿にされ、ヴァン神族からは失笑! ああっ、褌の可能性が!!」
――この人をおちょくるのはもうやめておこう、素直にそう思った。
「さて――今日この店は定休日です。お客さんが来ることはありません。先輩には浴場、浴槽を掃除してもらい、それから湯を張り銭湯のいろはを知ってもらおうかと思います。ちなみに一般的な銭湯の定休日は平日の火曜~木曜のいずれかに設けてあることが多いです。なぜだか分かりますか先輩」
「人間の考えなど知った話ではないが……そうだな、巫女の信託で決めたのなら」
「金曜日は一週間の終わりに気分よく。土日は休日のリフレッシュとして、月曜日は接客業などで土日に働いてる人たちのため。消去法で残りの曜日が休みになりやすいんです」
そう言いながら俺と先輩は店のシャッターを半分開け中に入った。
「どの銭湯にも学校みたいに下駄箱が設置されているのでそこに靴をしまうこと。それと貴重品の話。この先鍵付きロッカーで管理していくことになるけど、仮に何らかのトラブルで盗難、あるいは破損にあったとしても店側は責任を負いかねる場合がほとんどだから……」
「古宝品のことか? あれは基本神界に送っているから大丈夫だぞ」
「マジ顔で言わないでください」
本当に分かってるのだろうか、この先不安でいっぱいだ。
「本来なら店に入ると受付がいるのでその人に入場料として料金を支払います。関東地方の銭湯の相場はざっと四〇〇円以上、それ以下の料金の店は滅多にないと思ってください。先輩も次回使うときはお金払ってね」
「ああ、気が向いたらな」
先輩は凄まじく適当な返事を返すとロビーをきょろきょろと見回していた。元々期待してないしまあいいか。
「さっきも説明したように浴場を掃除してもらいます。掃除用具を持ってくるのでその間に先輩は掃除をしやすい服装に着替えてください」
俺はそう言うと別室の掃除用具を取りに向かった。とりあえず洗剤二種類とデッキブラシでいいか。必要ならまた取りに来ればいい。
「お待たせしました」
と女湯の暖簾をくぐると先輩は別段着替えてはいなかった。さっきまでと同じ漆黒のライトアーマー姿だったのだ。
「私はこの格好でいいぞ。掃除といっても別に湯を浴びるわけではないからな」
掃除といっても……湯を浴びるわけではない……だと?
その時、俺の中で『なにか』が切れた。
「鎧姿のまま浴場に入ろうとするなど……銭湯を何だと思ってるんじゃー!!」
「え゛!?」
俺はそう叫ぶと先輩のおっぱいアーマーをあっという間に剥ぎ取り、薄いスリーブレスシャツと下着の状態の先輩を無理やり正座させた。
「きゃああ!?」
「いいか、銭湯はあんたが思ってるほど楽なモンじゃない! すべてのお客様に満足をいただけるように全身全霊で浴場を磨き上げるんだ! スケール、酸化鉄、水垢、石鹸カス――ヌメリに至っては酸性の洗剤かアルカリ性の洗剤かで落とせる汚れが変わってくるんだ! こいつらを毎日跡形もなくなるまで磨き上げる俺の気持ちがわかるか!? こんな小さい場末の銭湯でもな、ブラシよりも洗剤の種類のほうが多いんだぜ! それを鎧を着て掃除しようだなんて甘いのだ、甘すぎる!! マニアックなソープランドじゃあるまいしラノベでもやらんわこんなこと!」
「あ、ああ。どうやら失礼したようだな……」
俺は物凄い勢いで先輩をガミガミと叱った。さすがの先輩も若干怖気づいてしまっていた。
(ハッ、しまった! ついカッとなって……!)
俺にはとんだ悪癖があった。それは昔から親に厳しく銭湯のハウツーを学ばされ続けて培ってしまった『プライド』だ。自分も店を開店してからは受付(という名の読書)のみに専念するため、ちょっとやそっとではなんとも思わないのだが、ことイレギュラーに対して過剰な反応をとってしまうことがあるようなのだ。
「あの、申し訳ありません有村先輩。でも今日のところは鎧を外していただけると何というかその、先輩に最高の銭湯をお見せできるかと思いましてですね……」
この人は一応武器を持っているのだ。下手に刺激したらいつ凶行に走るかわからん。
「いいや、貴公の言うとおりだな。本当の戦闘だと思って銭湯に望むとしようじゃないか」
先輩は長い銀髪を黒ゴムでうまく一本に束ねるとそのままの格好で浴場に向かっていった。
「あの格好でいられると色々と困るのだが……まあ仕方ないか」
「ええと、ご覧のとおり浴場の掃除をします。浴槽三ヶ所及び専門的なことは俺がやるので、先輩はこのアルカリ性の洗剤でタイル磨きをしてもらおうかと思います。俺は酸性の洗剤を使いますが、これは用途を間違えると派手に跡が残ってしまうので基本使わないように」
俺の説明そっちのけで先輩は銭湯特有の壁にある大壁画を見ていた。
「麻生君、この絵は」
俺は苦虫を噛み潰したような顔をした。と、いうのもその壁画は誰もがツッコミを入れたくなるような、途方もなくセンスのない絵だったからである。
まず積雪。そして虹がかかっており、ついでに桜が咲いていた。そんな密室に大量のホモとオークの化け物が入り乱れているという、子供が見たら涙なしでは語れない地獄絵図のような絵画が展開されていた。ちなみにタイトルは『連続幼女誘拐事件』で描いたのは俺の両親。何かコメントを、と言われれば『死にたい』と答えたくなる会心の作品だ。
「いいんです先輩、何も言わないでください。うちの常連客は慣れてますから……」
先輩はデッキブラシの先端にあごを乗っけて絵を凝視している。
「この絵はアーティファクトの可能性が高いな。これほど新しく成熟したものは滅多にない。近々そういうタイプの奴がこの絵を見に来るかもしれんな」
「はぁ」
俺は大きなため息をついた。類は友を呼ぶとはこのことである。先輩みたいなのがこの絵を見るために、うちに殺到するのかと思うと卒倒しそうになる。先輩を美少女として捉えるならラノベならありかもしれないけどなあ。どちらかというとおバカ系なギャルゲーだよな。
「訳の分からないことを言ってないできっちり磨いてください。うちは絵が最低なかわりに、それ以外は最高のクオリティを保っているのだから」
掃除もあらかた終わり、湯を張るために結構な時間を要するため脱衣所も整頓。
「麻生君、銭湯には『さうな』というのがあると聞いたのだがどれを指すんだ?」
「サウナですか。残念ですがうちはサウナは設けてませんよ」
俺は即答で切り返した。
「理由としては簡単ですが維持費用が高いから、ですかね。サウナというのはフィンランド式蒸し風呂を指す言葉で、湿度、温度をガンガンに上げた小さい密閉空間です。室温は八〇~一〇〇度で設定されててこれがまたそこそこのコストがかかるんですよ」
「なるほど」
「他にもいろいろ問題があってですね、想像してみてください。サウナに素っ裸で入るわけにもいかないので店側は大きめのタオルを貸すのですよ。入場料とは別の料金が発生します。このタオルがサウナ使用のための許可証みたいなものになるわけですが、このルールを知らないでサウナに入ってしまうお客さんもいるわけで、下手をすると揉め事になりかねないんですよ。『アイツはタダで入ってるぞ』とかそういった話です」
「タダにはできないのか」
「そもそもサウナ協会というのがあってですね……まあそれはともかくサウナって体への負担が非常に大きんですよ。例えば高齢の方が毎日サウナを使って無理やり汗をかいて……何事もないってわけにはいきませんよね。中には塩をすり込むようなエステまがいのサウナもありますし。本場フィンランドでも大体サウナは週一回の利用だそうです。ここだけの話、掃除もなかなかに厄介なので総合的に鑑みてうちではサウナはやってませんよ、って感じになってます」
「ふむ、色々と考えてるんだな」
そりゃあもう盤石の状態ですよ……絵以外は。
「ま、サウナに入りたければ駅前のスパやスーパー銭湯あたりを利用するのがベターじゃないですかね」
「そろそろ行きましょうか」
いい具合に湯が張れた頃合いだ。
「そうだな、私に銭湯の本番をレクチャーしてくれ」
「受付に料金を支払ったという前提で――まず先輩は女性なので『女湯』に入ります」
二人揃って女湯をくぐる。俺は店の人間だし誰もいないからオーケーだろ。
「まず風呂というのは基本全裸で入ります。ということで服を脱いでください」
「んっ……こうか」
「フォッ!?」
先輩はなんのためらいもなく衣服を脱ぎ捨て裸の状態になった。俺はてっきり先輩が恥ずかしがるものだと、そういった反応を面白がる予定だったのに逆に俺が変な反応をする羽目になったのだ。
「な、なんで年頃の女がそ、そんないとも簡単に素っ裸になれるんだよ!? おっ、おっれは何も見てないぞ!」
「なんでと言われてもな。私は戦女神だからな。場合によっては一国の将のように数多の軍勢を率いて、冥界の連中と刃を交えたこともあるからな。つまるところ度胸はあるぞ。ついでに胸もある、ほら」
「ちょっ、いいから。やめなさい!」
前屈みに胸を強調しようとした先輩を俺はなんとか制止した。
今更だが一つ言い忘れていたことがある――先輩は爆乳だったのだ! さっき薄着になったときに気づいてたけどな、あれはいち高校生が構えられるものではなかった。ラノベ的に表現するならばAカップのおっぱいは一迅社の二〇〇枚以下のちょいエロ系ラノベ。CとかDくらいのちょっと目立つおっぱいなら西尾維新とかが携わっている講談社ボックス系のそれとなく厚みのあるラノベが相場だろう。だがこれは違う、先輩のおっぱいは――!
「き、境界線上のホライゾン……!」
それだけ言い放って俺は倒れた。くどいようだが先輩のおっぱいはデカかったのだ。
「……いや、負けてられねえ」
十秒ほどして俺はガバっと起き上がった。そして間髪入れず俺も服を脱いだのだ。一応体裁を整えるため下のトランクスだけは残したぜ。
「おおっ、いいカラダしてるな」
「その言い方はやめろ! 先輩が戦闘のプロなら俺も銭湯のプロです。まもなく最高の銭湯をお見せしますよ」
そう言って俺と先輩は浴場に入った。
「これが銭湯か、なんとなく雰囲気がでてるな!」
湯を張ったことにより室温はいい具合に上昇、しっかり先輩に磨いてもらったおかげかタイルも不自然さがなくきれいだ。一番大きい浴槽の湯量はざっと七割。これはしばらくすれば十分な量になるだろう。その前に――
「初歩的な話ですが、まずは体をよく洗ってからその後風呂に入ります。銭湯は言い換えれば公衆浴場なので、利用者はお互いに清潔さを意識して利用していただく……といったところですかね。キープクリーン」
俺は説明のあと先輩に一枚のタオルを渡した。
「これはなんだ? 妙にざらついたタオルだが」
「色々と名称がありますが俺はヘチマタオルって呼んでます。これとボディソープを使って体を洗うんですよ。あとでシャンプーも貸します」
先輩は言われたとおりタオルにボディソープをつけ、わしわしと泡立てた。
「なるほど、スポンジの代わりだな」
「まあそういうことですね。タオルと兼用できるので浴場に持ち込む道具がかさばらないという利点があります。女性客はブラシ、男性客の場合はカミソリを持ち込む場合もありますし、こういったところに来る際の荷物は極力少ないほうが何かと無難です」
俺が説明してるうちに先輩は体中泡だらけになっていた。ちなみに俺は無茶苦茶目を細めて先輩を後ろから見ている状態だ。やましいところなんか一切ないんだぜ。こういうラノベ主人公はゴロゴロいるもんな。
「結構痛いなこれは。力強くやると体が赤くなりそうだ」
「そのくらいがいいんですよ。んで締めにこれです」
俺は座っている先輩の頭上にあるシャワーをおもいっきりひねった!
「ひゃあん!?」
女の子らしい驚き方をする先輩。よし、効果は抜群だ!!
「くっ……これは効くな。染みるような痛み……だがそれがいい……ふふふ」
思ったより先輩はMだということが判明した。
「ようやく風呂の説明に入れます。うちにある風呂は水風呂、ノーマル、座風呂、薬効風呂の四種類です。水風呂は例外なので気分で入ってください。すげえどうでもいいけど考え事をしたり素数を数えていると長く入れますよ」
「この寒い季節に水風呂はヤバイな。だがせっかくだから入ろう」
「は!?」
それだけ言って先輩は水風呂に突撃したのだ。
「んっ……ああ、これが銭湯か……行水とは違う、包み込まれるような感覚だ……」
先輩は肩半分まで浸かると体を丸くして水の冷たさを凌いでいるようだ。というか銭湯イコール水風呂ではないよな。
「永久凍土での戦いを思い出す。思わず変身しそうだ……」
今の『変身』とかいう不穏な発言は聞き逃そう。満足ならそれでいいのだ。
「次にノーマルの風呂です。豆知識になるけどぬるい浴槽から入ると効率よく汗が出て血液の巡りや体の温まり方が良い、とのことです。うちの場合はノーマル、薬効、座風呂の順に入るとヤバイですね、おそらく先輩は昇天しますよ」
俺はニヤリと笑い言ってやった。今の先輩は水風呂に(五分近くも!)浸かっていたため、ノーマル風呂だけでも骨抜きになるに違いないのだ。
「そこまで言われるとさすがに緊張するぞ。ふふ、武者震いというやつかな」
どれ、と先輩は水風呂で冷えきった体の先端をちゃぷんと浸けた。個人的な感想だが風呂に恐る恐る入る女性の一連の仕草が銭湯では最も魅力的だと思う。いや、男の俺がしょっちゅう見るものではないけどさ。
「こ、これは! 体中の細胞、血管が暖められていくようで――すごい、しゅごくいいのぉ!」
先輩はそんな『らしくないこと』を言うとまるでテンカウントを取られている最中のボクサーのようにぐったりと風呂に体を預けた。
「どうですか先輩。なんか全部どうでもよくなるような素晴らしさでしょ」
「これは激ヤバだな……しばらくこのままにさせてくれ」
これほど蕩けたような表情した先輩を見たのは初めてだ――冷たくて小さい浴槽だった水風呂とは打って変わってノーマルの風呂は広かった。そして今まで風呂というものを知らなかった先輩――これらの要素が今とてつもない開放感、リラックスを生み出しているに違いないだろう。
(人生初の体験みたいだしな。そっとしておくか)
「次は薬効風呂ですよ先輩」
数分後、先輩に声をかけてみたが反応なし。
「先輩、薬効風呂ならもっと気持ちよくなりますよ」
「なんだと!? 私はもっともっと気持ちよくなりたいぞォ!」
ザバァ、と盛大に音を立て先輩は立ち上がった。急に動くと色々と良くないぞ。
「今回は文字通りジャスミンを使用したジャスミン風呂です。店によってはローテーションで様々な薬効風呂を展開しています。薬効に使われる素材はたくさんあって、それらの名称でしりとりができるほどネタがあります。コーヒー、ひのき、紀州梅酒、ゆず、スカイミント、どくだみ、みかん……スカイミントをストロベリーにすると高確率で詰みます。すごいでしょ?」
「あ、うん……まあそうだな」
突然のしりとりに先輩はついていけない様子だった。そらそうよ、薬湯のネタでしりとりが展開できる高校生など数えるほどもいないだろう。
「その調子だとなんでも入れて大丈夫なのではないかと思ってしまうのだが」
「まあその通りです。正直、植物か食べ物ならなんでもやっちゃえみたいな感じで開拓していった分野なのではないかと思ってます。ワイン風呂なんてありますし他には酵素、ローヤルゼリー、コラーゲンみたいな特定の成分抽出系や漢方といったところですか。あとは有名なところでミルク風呂や炭ですかね、備長炭(白炭)」
炭風呂はネットでくるんだ炭を入れた風呂である。ミネラルやアルカリ成分が含まれ、遠赤外線効果、有機物質吸着効果、酸化防止効果、さらにはきちんと管理すれば半年ほど使用できるというまさに奇跡のアイテムとしてメディアで取りざたされ、一般の家庭でも広く浸透した代表的な薬効風呂だ。
「ま、ご家庭でできそうな薬効はうちでは扱いません。プロとしての俺のプライドが許しません。というわけでジャスミン風呂です。ジャスミン茶と同じあの白い花です。風呂として使っているので香りは吹っ飛んでしまっていますが本来はフローラルな香りがします。インドでは夜になると濃厚に香ることから『夜の女王』と呼ばれたほどです。主だった効能としては――」
「とりあえず入らせてくれ!」
俺の長ったらしいうんちく話が展開されると判断したのか、先輩は紫色に仕上がったジャスミン風呂に飛び込んだ。湯冷めしないとは思うがそのほうがいいな。
「これは、先ほどのノーマルと変わらない熱さだが……どちらか言うと温かいな。なんというか安心感が伝わってくる」
先輩は先程よりは落ち着いて感想を述べた。
「良い感性を持ってますね。先ほどの続きですが、主だった効能としては心へのゆとり、保湿・皮膚軟化作用といったところです。肌に良く、気持ちを和らげる効果がありますね。アロマテラピーでもジャスミンは採用されていて、これと効能は似たようなものです」
「機能性を意識しただけのシャワーでは味わえない至福の時間だな。ずっと浸かっていたいくらいだ」
ホントは――『夜の女王』ことジャスミンには興奮作用、性的強壮作用、果てには催淫作用まであるという。まあ風呂にはこんな効能は当然無いので黙っておこう。余程キツいアロマオイルとかなら別の話かもしれないけどね。
「最後は座風呂でうちではこれが一番熱いです。浴槽がノーマル風呂と連結しているため湯熱自体は変わりませんが肩近くまで浸かる点、ジャグジー効果が大変強い点から体感温度が高く感じるようになってます」
「なるほど、風呂の底から凄まじい量の気泡が出ているな。これでアツアツのキューっと仕上げてこその銭湯だな」
不安を感じる日本語だがまあ合ってる、そのとおりだ。ちなみに座風呂は《すわりぶろ》と読む。文字に起こすときは《ざぶろ》の方が手っ取り早いかもしれないが、口頭での会話では注意な。
「この座風呂で文字通り全身を温めて浴場を出ます。さあさあ冷えないうちに入った入った」
本当に今さらだが実際の銭湯の浴場で体が冷えることはまずありえない。営業中はその程度には室温、湿度が高まっているからである。店によっては天井から蒸気で天井に溜まった水滴が落ちてくることだってあるのだ。
「んっ……この座風呂とやらはまるで冥界の溶岩地帯を思わせるものがあるな……! ああっ、ジャグジーが、体が浮くくらい泡がしゅごいのおお!!」
この人はひょっとしたら色々と感じやすい人物なのだろうか……座風呂に入ると先輩は恍惚とした表情でビクンビクンし始めた。正しい位置に座ると底と背面からジャグジーこと別名ジェットバスがあたる。この泡による水流はとても強力で体が浮く。そういう意味では『体が浮くくらい』というよりはマジで浮いてるのだ。
(――というか、定休日でよかった。風呂に入るたび『泡がしゅごいのお!』とか叫んでたら他の客はビビるわ。これが通用するのはラノベとその手のマンガとゲームだけだな)
よだれを垂らしそうなくらい口がぽかんと空け放心状態の先輩を尻目に、俺は内心安心しながら浴場の細かいところの整理整頓をしていた。
「百秒数えたら出てくるんだぞ」
「いやはや凄かったな、銭湯は! 毎日入っても飽きないくらいだ」
血色良い表情をした先輩が紫陽花模様の浴衣姿で女湯の暖簾をくぐって出てきた。ライトアーマーしか持ち合わせがなかった先輩に浴衣を貸したのはこの俺な。
「高校生にそんな余裕はないですよ。卒業して稼ぐようになったらどう――」
どうぞ――と言いかけて俺は止まった。『どうぞ』ということは言い換えれば『また来てください』と暗に認めているようなものだからだ。
「ロビーにはマッサージチェアがあります。結構な値段で買ったやつですがそれゆえに効きますよ」
俺はそれとなく話を逸らした。どのみちマッサージチェアは自慢したかったから話に振るつもりだったしな。
「ほほう、そんなに高いのか」
「医療機器メーカーから仕入れたマジ物です。俺の見たところでは先輩……あなた確実に失神しますよ」
俺は不穏な笑みを浮かべると先輩を高級マッサージチェアに座らせスイッチを入れた。
「そう言われると緊張せざるを得ないな……っと。これはまた凄まじい包容力のある玉座だな。背中のゴリゴリ感がたまらん……んもうッ……オーディン様に献上したくなったぞ!」
そんな脳内設定を言っていられるのも今のうちである。
「これはまだ全体の十パーセント程の出力です。更に言うとすべての機能を開放したわけではありません!」
「なん……だと……!?」
このマッサージ機は使用者の体のパターンを覚える大変賢いマシンなのだ! ということでスイッチオーン!
「――んはあ! なにこれ……! さっきとぜんぜん違う……! カラダ全体が揉みほぐされて……特に腰とで……臀部……お、おしりがしゅごいのおおお!」
その通り、尻を揉んでくれるマッサージ機は冗談抜きでハイエンド機なんだぜ。
数分後、先輩はマジで失神した。浴衣も酔っぱらいが着たかのように着崩れていて『昇天』という言葉以外は似合わない――そんな光景と化していた。
「ふむ、最後は調子に乗ってしまったといえる。が、ここまでタダで体験させたのだからまあイーブンだろう。あ、ラノベ的には無料といったほうが格好良いか。タダは只だからロハ、ってな」
そう言いつつ俺はテーブルに温かいハーブティーを置いた。本来なら風呂あがりには牛乳一気飲みと言いたいところだが、実はあまり良いものとはいえないのだそうだ。具体的には血行不良やむくみ、内臓の冷えを招くとのことで、うちでは暖かくてビタミンやミネラルといった栄養価があるハーブティーを採用している。
「もちろん牛乳も置いてあるけどね――」
その時である、玄関先から足音が聞こえた。定休日と知らずに店の前まで来てしまったお客さんかもしれない。俺はそう思い、
「ゴメンナサイ、今日は定休日でして」
半分まで開いていたシャッターをくぐると、目の前には二足歩行の『獣』がいたのだ。
「フン、人間か。ヴァルキリーが起きたのかと思うたわ」
獣姿のそいつは吐き捨てるように言った。闘牛のような雄々しい角が二本生えていて背丈は二メートルほど。腕や足の筋肉がとてつもなく隆起していて、生物界のルールが覆されそうな体格をしていた。
(あのさあ……夜で暗いからってこれはない。マジないわ。他の店なら通報されてるわ、こういう仮装大賞が大好きな客。と言っても、脱衣所でマスクとると無茶苦茶優しそうな顔してるタイプだこの人。俺がどれだけ銭湯の利用客見てきたと思ってるんだ)
「とは言え、ヴァルキリーを監視していて正解だったな。奴の反応が鈍いどころか近くにアーティファクトの反応まである! 奴は神性が高く近づけないが、アーティファクトを破壊できるのなら上々といえよう」
ああわかった、先輩の知り合いだ。しかも重度の設定オタクだ。先輩に神性とかいう味付けしちゃってるしやべえな。やだよ俺、こういう客が溢れかえって店が繁盛しちゃうのは。ラノベじゃねえんだからさあ。
「あの、申し訳ありません。今日は定休日でして……普段は十六時から営業してますので――」
「貴様に用はない!」
マニュアルに則った丁重なお断りを入れようとした瞬間、奴は指先から光線を発射した。狙いがテキトーだったのか俺の左頭部をかすめ、そのまま店の看板『褌湯』の真ん中に穴が開いてしまったのだ。
その時、俺の『悪癖』が動き出したのだ。
「失せろ小僧、次は貴様を真っ二つにす――」
「ひとんちの看板に何すんじゃこの阿呆ォ!!」
俺は看板を外すとそのまま奴の頭部に叩きつけた! 厚さ三センチ近くある看板から繰り出される叩きつけは奴の両角を粉々に粉砕し、そのまま奴の頭部を隕石が衝突したかのようにぼっこりと変形させたのだ。
「いいか聞けこの野郎! この看板はなァ、設備は劣っても他の店に心意気だけは舐められないようと厳選した最上級の木材使ってんだぞ! 檜の一番たけえやつだよ! ケツ揉みマッサージ機といい、俺がどれだけ店に心血を注いでるか考えたことあんのか、ええ!?」
「ごぽぉ」
店に無礼をはたらいたということで再び過剰な反応をとってしまった――俺は奴の胸ぐらを掴みぐらんぐらんに揺さぶって説教した……が、奴は口から血を吹き出しそのまま地面に沈み込んだのだ。
『同胞よ、ミノタウロスがやられたぞ』
空を見上げるとカラスのような鳥が俺を凝視していた。電線に乗っかってるのも含めその数は数十匹。気味が悪いことにカラスたちの眼は赤く光っていたのだ。
カラスたちは勝手に会話を続けた。
『なんたることだ、人間ごときに仕留められるとは情けない』
『いい考えを思いついたぞ。建物の中にはヴァルキリーとアーティファクトがある。ミノタウロスの処分も含め、我々の火炎弾一斉射撃で焼き払ってしまおう』
『アース神族、それに脆弱な人間どもにも我々冥界の恐ろしさをしらしめるとしよう』
「ゴチャゴチャうるせえんだよ、さっさと消え失せろォォォォ!!」
建物を焼き払うと聞いた時点で俺は完全に燃え上がっていた。一旦店に戻ると先輩がずっと持っていた剣を持ち出し、カラスどもに向けてブンブンと振り回した! すると振り回した剣先から黒いオーラのようなものが滲み出たかと思うと、そのまま高圧の波動となってカラスに向かっていったのだ!
『魔剣アザトフォートだと!? しかもこの威力は――びゃああああああ!!』
剣から何重にも形成された波動はカラスどもを一匹残らず八つ裂きにした。あたりには鳥類とは思えない肉片がビチャビチャと落下し、血とはいえない緑色の液体や臓物が周辺に撒き散らされたのだった。
「縁起悪いったらありゃしねえ! 看板は作りなおさなきゃいけねえし今日はもう終わりだァ!!」
言うだけ言って俺は店のシャッターを閉めたのだった。
『怪奇、ファフロッキーズ現象! @@町に撒き散らされた謎の肉片の正体は!?』
なんていう記事がエキサイト新聞こと東スポに載ったのは二日後の土曜のことである。本来なら日曜のスポーツ新聞の見出しは大体競馬かスポーツの話が当たり前だが、このようなオカルト記事が一面に飾られたのは後にも先にもこれっきりである。
そして月曜、俺は苦悩していた。頭に血が上っていたとはいえ、自分がなにをやらかしたか少しづつ思い出していたからだ。
東スポの記事を読む限り、近隣の住人が見つけた謎の肉片はあっという間に自然と霧散、消滅したのだという。
「証拠が消えて見事にB級オカルト記事……か。これがなければ俺も夢オチで処理したいところだがな」
家を出る玄関前――そこには二つに割れた看板とあの日叩き割った獣の角の欠片、そして先輩に帰す際に渡すのを忘れた『魔剣』が鞘から仄暗いオーラを放っていたのだ。
「やあ、何も言わなくても来てくれるとか君は賢いな。麻生君」
昼休みの校舎裏、ヴァルキリー先輩は俺が来ると思い待っていてくれたらしい。先日貸した着物姿の先輩は片手を上げ俺を迎えてくれた。
「制服は持ってないんですか」
「私は主神オーディン様に仕えし半神だからな。いつだってこの国のことは右も左も分からない状態なのだよ」
やれやれ、と先輩は肩をすくめた。今ならこの人があらゆるところでマジだったのが理解ってしまうのがなんというか……少しだけくやしい。
「忘れ物を届けにきました。それとこれを受け取ってください」
「ん? 剣はわかるが、この紙きれは」
俺は魔剣と封筒にあるものを入れて渡した。
「うちの店のみで使える回数券です。とりあえず十回分。これがあれば無料でうちの店を利用できます。つまらないものですがお納めください」
「おおお、そんな素晴らしいアイテムがあったとは! 全然つまらなくないぞ、むしろ――面白い!!」
先輩は目を輝かせて封筒を掲げた。
「それと先輩、一つ頼み事がありますが聞いてもらえますか」
さて――俺はこれからあれほど脳内設定、中二病の権化だと思っていた先輩に頼み事をする。右左が分からないと公言する先輩に生きるための手段を教えてもらうのだ。それは俺が散々吐き散らかしたラノベ論みたいな現実味のない切り出しだが、先輩が面白いというなら、俺がラノベの主人公みたいなことをやってみてもいいだろう。その方が――面白いだろうから。
「先輩――俺に魔剣の使い方を教えて下さい!」〈終〉