始まり
「ハァ…ハァ…」
心臓の鼓動が聞こえる。かすかな風の音が聞こえる
「今日はこの辺で切りあげるか…」
重たくなった体に鞭を打ち無理矢理体を起こした。
あれから一体どれくらいの時がたったのだろうか。
空を見つめて考えていた。
あれはちょうど今から5年前になるのだろうか。
俺が…白鳥勇太がアストラルゲートを通じてこの世界に来てしまったのは…
5年前
僕は廃ビルの屋上に居た
「はぁ…今日もつまらないな」
いつも通りの日々を過ごすこの平凡な日常にため息をついていた。
「変わらないねぇ。そんなにため息ついてたら幸運もにげちゃうよ?」
「へいへい」
こんな風にいつもどおりの会話をしている相手は幼なじみの空乃結美子だ。
「もっと楽しい事でも考えればつまらなくないと思うよ〜」
そうのんびり言ってきた。
「はぁ…こう毎日毎日たいして変わらないことやってたら楽しい事なんて考えられないよ。なんか面白いこと起きないかな」
だるそうに僕は返事を返した。
「普通が一番だよ〜」
日に照らされながらのんびりとまた答えた。
「本当結美子はのんびりやさんだな」
「えへへ。てれちゃうなぁ〜」
「褒めてないよ…」
僕はこのゆったりとした会話や日々は嫌いではないが、生きていく人生としては物足りない。
いつもそう思ってた。
……あんなことが起きるまでは
急な僕たちが居た屋上が爆発した。
僕は死んだんだ…
死んだはずだったんだ。でも生きてしまった。
「勇くん!勇くん‼︎」
かすかに聞こえた結美子の声
でも意識が…遠のいてく…
「なにが…おこった…んだ…」
霞む意識の中で前を見ると黒く光るゲートのようなものが現れて、突然喋り出した。
「……えが生贄……ば……男は助…る」
意識がグラつき言葉が聞きとれなかった。
もう眠たい…
「本当…私…生贄…なれば勇くんはたすか…の!?」
まぶたが閉じて…い…
「ごめんね」
最後にそう聞こえ意識がなくなった。
目がさめると病院に居た。
起き上がると体が痛かった。
その時ちょうどドアが開いた音がした。
母さんが泣いてたっていた。
「目が覚めたの…!」
そう言い僕を抱きしめた。
「もう半年も目がさめなかったのに…よかった」
半…年
起きたばかりの脳がすぐに働いた。
「結美子は!結美子は無事なの!?」
焦りながら最大限出る声で叫び聞いた。
「結美子?誰の事を言ってるの勇太?」
誰の事を言ってるのかわからないような声で聞き返してきた。
「冗談だよ…ね。さすがに冗談がキツイよ…母さん」
「…可哀想にまだ目が覚めたばかりで記憶が混乱しているのね」
僕はすぐに分かった。母さんが幼なじみの結美子を忘れるはずがない。ということは……
結美子はもともといないことになってしまったか…あるいは…
「ごめんね」最後の記憶の声を思い出した。
結美子はあの黒いゲートのようなものと喋っていた。
「お前が…生贄になれば…男は助かる」
霞む景色の中ゲートはそう言っていた。
僕は結美子にたすけられたんだ。
結美子が犠牲になることで…