表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/76

ホウキと痔はいかなる関係があるか?

時刻は朝の7時。

お隣の小人の家のポストに新鮮な野苺をどっさり入れたバスケットを入れて、朝から騒いでごめんなさい、との謝罪のメッセージを付ける。


動物たちは放置だ。

食事に満足したら出ていくだろう。


私はホウキに跨がり、地面を軽く蹴った。

ホウキに込められた魔力によってふわりと空に浮き上がる。

柄の方にくくりつけたリンゴと手紙入りのバスケットが揺れる。

それだけでリンゴの香りが鼻腔をくすぐる。


魔女としての誇り、黒いロープが風を受けて大きくふくらんだ。


あまり見た目によくないのだが、 ホウキにはクッションがついている。

長い間股がっていると痔になりやすいからだ。

見た目が悪かろうが、痛いのは嫌だ。


魔女に痔が多いのは、座っていることが多いのが原因でもあるが、直接的な原因はこのホウキである。『魔女に起こりやすい病とその要因』という医学界で発表された論文によって、それはきっちり証明されている。

魔女の三大病の中の一つと言われるほど、痔は魔女にとって身近な病なのだ。


実はホウキに魔力が籠っている訳ではないので、ホウキなしでも飛ぶことはできる。

それでも、多くの魔女や魔法使いがそうしないのは、体全体に魔力を使って飛行するより、棒一本にその負荷をかけた方がエネルギー効率がいいからだ。

それなら、別にホウキでなくても構わないのだが、それはそれ。伝統というやつだ。

そうした習慣がない、より東の国では絨毯に乗るところもあるという。

私もむしろ絨毯に乗りたかったのだが、いかんせん伝統がどうだ、誇りを持てと、周りがうるさい。

そこで仕方なく、ホウキにクッションを敷いて飛んだら、何が受けたのか、現在、芸能界ならぬ、魔女界では見た目の良くないその飛び方が流行ってしまった。


青く澄みわたった空。

雲一つない。

風も吹いていないので、絶好のホウキ日和である。

なのに、気分はどん底を行っている。



なぜ10時からのお茶会にこんなに早く出発するのか。

それは蒸気機関車に乗っても私の田舎町からでは一時間かかり、更にはホウキで行こうとすると、三時間もかかるからだ。

大変なのに、ホウキで行くのは金の節約の為である。

これを陸路で行こうとすると、回り道をしたりしなければならないため、優に半日はかかってしまう。


ブランシュ王国の首都は10年前とは比べ物にならないほど、栄えている。

国は戦争をやめたため安定し、農業国となりつつある今、昔に返り、近隣諸国の文化的中心地となっている。

芸術家を目指す若者や、一稼ぎしようと目論む商人が出入りしているのだ。

また学問機関も集中しているため、学生たちも多い。


その首都ネージュの宮殿に国王夫婦は住んでいる。

飛行しているとよく分かる。

貴族が住んでいる所はやたら屋敷が大きく、土地が広い。

そのなかでも、一際目立つ建物、宮殿だ。


質素をモットーとしているが、王妃の使えるものは使えばいいじゃない、とのお言葉で、昔の王族の別荘だったものを改修したそうだ。

ああ、その光景が目に浮かぶようだ。

きっと、王がやに下がった目でいちにもなく同意したのだろう。

…失敬。


王宮にはもちろん対魔術用に結界が張ってある。

まぁ、今まで同じように、王妃の手紙には許可の術式が結んであるようだし、問題ない。

目的の庭目指して、ゆっくりと下降した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ