表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雪華の月に踊る獣は  作者: チェーン荘
9/59

≪一章≫幕間 ~幻想は闇より出でて~

 月夜の灯りに照らされた深淵の夜。


 生命の息吹も感じられぬ永久の闇。


 ざわめく木々さえ死者の苦悶に揺れる。


 先の見えぬ暗黒の中を、ふたりの子供が走っている。


 ひとりは、全身を白い衣服で統一した、男の子。


 ひとりは、同じく白い衣装で装飾した、女の子。


 ふたりは何かから逃げるように、先の見通せない漆黒の森の中をひたすら駆けていく。


 時に、鬱蒼と伸びた草に肌を裂かれても……、

 時に、地面に這った根に足を取られても……、

 彼らの繋いだ手は強く結ばれたまま……、

 果てを目指すようにひたすらに、駆けていく。


 あまりにも現実感のない映像だった。


 しかし、白昼夢と呼ぶには、あまりにも生々しすぎた。


 冬弥がその景色に覚えた感情は、魂が凍るほどの“恐怖”だ。


 まるで生まれる以前から植えつけられた本能のように、悲しく、寂しいはずのこのユメを、恐れながら見つめることしかできない。


 何故ならこれは、自分の記憶を再生していると、現実なのだと、シッテイルカラ。


(でも、こんなの……俺は知らない)


 たしかに冬弥は七年前よりも以前の記憶の一切を失っている。


 今の石動冬弥が覚えているのは、天枷教会に保護されたあとのことばかりだ。


 だからこのユメが失った記憶なのだと言われれば、信じてしまうかもしれない。


(でもこんな、底に堕ちるしかないような(くら)い記憶なんて、俺は知らない!)


 ――マダ、目ヲ背ケルカ。“深淵ノ器”ヨ――


次回は11/15

23:00投稿予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ