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第一章  5

                3


 その日、夕方には店じまいする旨をリンに告げると、

 全く疑わず、早めに帰路に着いた。


 その後を車に乗った二人が、追いかける構図が出来た。


 確かに、ジェシカの言う通り、リンは届けられた住所とは、全く違う方向に向かって進んでいた。


 車の中で、どこに行くのだろうと話したが、全く予想すらできなかった。

 と、いうのが、地元の人間でも、なかなか立ち入らないだろうと思われる、

 山の中に入って行ったからだ。


 途中でバスを降りて、向かったのも、まだ上の山の中だった。


 長く住んでいるビルでさえ、ここには来たことがなかった。

 こんな所から、あの方向音痴のリンが通っているかと思うと、不思議な気もしてくる。


 しばらく行くと、高い塀のある建物の端が見えてきた。

 察するにかなりの広さがあると思われた。


 すると、その中にリンが入って行った。


 それを見届けた二人は、車を少し離れた場所に置き、建物に近づいた。


 そして、慣れた手つきで門のすぐ横にある受付で手続きを済ませるリンを見た。

 まだ、リンには見つかっていなかった。


 よく見ると人の気配はするものの、姿を見ることは出来なかった。


 そして、これからどうするか。それを話し合った。


 二人の意見は一致していた。

 ここまで来て引き下がるわけにはいかない。


 ただ、ビルには、この施設について、ちょっとした知識があった。

 それは、いい情報というには、あまりにもかけ離れていた。


 ここは以前、ただの雑木林だった頃があった。

 その雑木林を買い取った団体があった。


 それは、国際機関で、世界規模での活躍が期待され、その重要な施設をここに作りたいというもの。

 しかも、周辺の整備や交付金も、今までこの辺りでは聞いたこともない金額だったため、


 この地区は、住民の意見など聞かず、とっとと許可を出した。


 しかし、(実際には本当かどうかも不明だが)実情はスパイ組織の親玉だというのである。


 名前もそれっぽい。国際情報管理センター。(IIMC)


 いかにも、スパイのたまり場みたいだった。

 そのせいか、住民は何か事件が起きるのではないか。


 そんな心配にかられていた。


 本来、ここはそんな物騒な事件や騒動とは無縁で、自然豊かなこの場所に、

 そんな厄介なものを作る許可を与えた政府に抗議があったのも、一度や二度ではない。


 それでも、今ではこの施設があるための交付金で、

 山の上にある湖までの遊歩道の整備、病院建設、 

 貴重な植物を抱えるここの自然を守る公園の整備、

 大学の誘致それによる雇用の促進、


 その他、言えばきりないほど、多額のお金が落ちている。


 そのため、住民達の声は、次第に小さくなり、今ではそんな声は全く聞こえてこなくなっている。

 だからと言って、すべてを容認したわけではない。

 仕方なく。そんな気風が主流だった。


 リンが、そんな施設に入って行った。


 これは、ビルにとって、ショックだった。


「リンは、どうしてここへ?」

「さあ? マスターは聞いてないんですか? だったら、……分かりませんよ」

「そうだな。でも、どうしようか?」


 ビルは本気で悩んだ。

 それをジェシカは、あっさり言った。


「当然、ここまで来て、引き返すわけにはいかないでしょう。

 行きましょう。リンに本当のことを聞きましょうよ? マスター」


 ジェシカの勢いに押されて、マスターは、施設の入り口にある受付に向かった。


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