第六章 4
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内容は、ハッカーがどこのサーバーからどういう手段でハッキングを行っているのか。
どんな順にサーバーを乗りかえてきたのかを追跡できる装置の開発。
世界中のハッカーを捕まえるための装置を、リンに、否、スピースに開発させる。
そして、もう一つ。
国家機関のコンピューターに侵入するためのプログラム。
危険性のある国のコンピューターに侵入し、危険を事前に回避する為だと説明された。
元々、これをリンに作製させる、そのためにリンを花屋に行かせた。
今はリンに拒否出来ず、しぶしぶ命令に従っている。
リンが納得している訳ではない。
作業は部屋で行うが、その様子は常にモニターで監視されていた。
二十四時間の監視体制に変わりはなかった。
庭には、一度も出ていない。
それでも、文句を言える立場にもなく、だからといって、喜んでいるのでもなく。
リンにとって不満でしかなかった。
そしてある日、リンは取調室に呼び出された。
呼び出したのは、カーライルだった。
「リン。予定通りに終わってもらいたいものだな? それともリンでも出来ないのか?」
カーライルの言っているのは、国の保安システムに侵入するためのプログラム。
これは国の保安システムの確認のために使われるもの。
別に、違法のハッキングのために使うためではないが、
リンにはなんとなく抵抗があり、製作自体をしていなかった。
それを確認するための、この呼び出しだった。
「リン。今日はなんでここに呼ばれたか、分かっているだろう?
なんで作業に取りかからない? 条件に従えないなら、どうなるか分かっているんだな?」
リンは答えず、ただ、カーライルの方を見た。
「なんだ? 何が言いたい?」
「……これを、本当に正しいことだけに使うとは思えない。
これを作ったら、本当は何をするつもりなの?」
「質問は受け付けない。リンは指示された用件だけをすればいい。
これの活用方法は我々が考えて決める。
異議は認めない。いいか、ここでは拒否は認めない。
命令には、全て従うのが、ここにいられる唯一の条件だ。
守れないなら、地下に移ってもらうが、どうする?
今、ここで決めてもらおうか? 作るのか、それともこのまま地下に移るのか?」
カーライルは、他の捜査官と一緒になって迫ってきた。
リンは、もうその捜査官に従うだけだった。
「……分かった、でも時間がかかる。
というか、出来るかどうか、やってみないと分からない」
その言葉に、カーライルも気を良くした。
「いいだろう。ただし、わざと時間をかけるのはやめてもらおう。
その時も地下行きだ」
リンは、しぶしぶ頷くだけだった。
それからのリンは、とりあえず作る振りをした。
こんな得体の知れないものを、ここの連中に渡せない。
ここの連中ときたら、自分達は正しいと信じている。
それは明らかに暴走している仕組みでも止められない。
そんな特殊な組織に、どこまでの権限が許されるのか。
リンには、納得の出来ない指示には、
いくら地下行きがかかっている命令とはいえ、従えない。
今回引き受けて、否、引き受ける振りをして、時間かせぎをしたかった。
そうして、リンが振りをしている間に、改めて条件の提示があった。
それは、
「この件が終わったら、しばらく休暇を与えよう。
好きなことをしていい。花を育てたいなら、育てればいい。
何をするかは、自分で決めろ」
カーライルはそう言って、部屋を出て行った。
これには裏がある。
リンにはすぐにそう確信した。
素直に従わないだろうと、ニンジンをぶら下げたのだろう。
どうにかして、完成させたい。
それが伝わってくる。
そこまでして、一体何がしたいのか?
そう思った時、リンはすぐに行動を起こした。
リンの技術は、研究されている。
ただし、それは、過去のスピースのもの。
今のリンはそれ以上の技術がある。
すなわち、リンが何かして、気づく人がいるとは、考えにくい。
幸い、今はプログラムするよう命令されている。
だからこそ、今だから出来ることがある。
リンは、その日から改めて、本格的にパソコンに向かい合っていた。
カーライル達は、ニンジンの効果だと信じていた。
リンは、ここに来て初めて、本気でパソコンに取り組んだ。
そして、ある事実をつかんだ。
今回で第六章を終わります。
リンの力をどれくらいに評価していたかは、お分かりいただけたかと。
ただし、それが黒と出るか白と出るか、そこを次回より書いていきたいと思います。、




