第五章 光の重み 1
リンの現実は、いったいどれほどのものか。
第五章 光の重み
明るい陽射しとその中にいると、暖かな気持ちになれる。
でも、陽射しを受ける木の根元の苔には誰が気づくだろう?
きっと足元にずっとあっても誰も目にも止めないだろう。
それどころか邪魔者扱いされる羽目になりそうだ。
しかし、その役目にまで思いを巡らせるまでにはいかない。
苔には苔の役目がる。
木の根に送る水分の貯蓄するという、もっとも大きな役目がある。
小さな小さな苔にも、大きな大きな木を守る役目が。
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リンが、IIMCに運ばれて、医療センターで治療を受けた後、より厳しい監視下に置かれた。
監視センターが、監視下に置かれるハッカーの受け入れ口だとすでに書いたが、
ここではそんなハッカーを、技術レベルを数段階に分けている。
その中でも、優秀で世の中に貢献できるなら、社会復帰のための協力を惜しまない。
世界中が欲しがっているのは、腕のいい技術者だ。
技術と言っても、コンピューターに於いては、ハッカーとして、腕を競うことも少なくない。
そのハッカー、特に、あらゆる国が目をつけ、
取り合いになる人物については、IIMCが仲介役になっている。
不思議と、IIMCにいるという噂は、瞬時に流れるのも事実だった。
リンは、いや、スピースはその中でも、最上位に位置する。
本人がなんと言おうが、リンは、ハッカーとしては優秀だった。
しかも、世界中から注目を浴び、望まれていた。
しかし、ここには社会に不安を与えるハッカーを、社会から隔離する責務も負っている。
特に、政情不安に陥れる可能性がある場合。
社会復帰をさせない。
この場合、長期間かけて更生の可能性を探る。
と、ともに、誰にも、どの組織にも独占させないようにしていた。
リンは、最初は前者であったが、今は後者だ。
監視レベルについても、数段階に分けてある。
軽い者は、離れに部屋を与えられ、外出も出来る。
ただ、所在確認のため、GPSセンサーの所持が義務付けられる。
反対に重い者は地下にある独房に収容され、自由はない。
場合により尋問が長時間に渡る。
リンは、半月後に医療センターからIIMCに戻され、この地下の独房に移された。
リンの足の傷は適切な治療を受けられ、傷自体はきれいになっていた。
ただ、足の動きについては、リハビリテーションは受けられなかったため、
立てるが、自力での歩行は困難で、杖を使ってもやっと立てる程度だった。
「リン、ここには自由は無い。
こちらの指示に拒否はさせない。
それは、足を治す時に話した通りだ。
それにもう一つ、黙秘も許さない。いいな?」
独房には隣接する尋問をするための部屋が備え付けてある。
リンは、今、その部屋の中央に置いてある机の前に座らせられていた。
リンは答えなかった。
すると、尋問の担当官カーライルが、
「黙秘は無しだ。そう言ったはずだが。
まあいい、その代りこの質問には答えてもらう。
いいか、お前がしたハッキング全てだ。
今まで色々聞いてきたが、まだ話し足りないだろう?」
そう言って、リンに激しく迫った。
リンは一瞬驚いたが、
「……別に。話すことなんかない」
「ほう? 本当に? じゃあ、なんで逃げたりした?
何かしたのか? それとも何かしようとしたのか?」
「何も、……何もしてない。する気もない」
リンは、カーライルとは正反対に静かに答えた。
それが、カーライルには不満だった。
「本当にか? 逃げた理由はなんだ? 何もする気がないなら、逃げる必要はないだろう?」
カーライルは、執拗に聞く。
よろしくお願いします。




