第二章 6
ちょっと表現が激しい場面があります。
リンへの対応が極端になりますのでご注意ください。
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余裕の生まれたリンは、小さいとはいえ、庭を手入れしたいと思った。
それを提案すると、しばらくして許可がもらえた。
もちろん、仕事として必要な事を済ませば、
自由時間に庭に花を植えたりするなど、有効に使っていた。
そうするうち、もっとたくさんの花を扱いたい。
もっとたくさん花について知りたい。
と、思いだした。
ただ、それが許されるとは思わなかったが、
思い切って、自分の身の回りの世話をしてくれている職員に頼んでみた。
ここでのリンは、職員の指示には素直に従っていた。
反抗したりすることもなく、指示をきちんと従っていた。
「花の勉強をしたいんだけど、だめかな?」
そう切り出すのに、勇気がいった。
これで、自分の立場がどう変わるのか? 変わらないのか? それも分からない。
それからずいぶん経って、マラホイアに呼び出された。
呼ばれたといっても、例の取調室に連れて行かれた。
「花だと。今更、何の勉強するんだ。庭いじりでも十分すぎる。これ以上必要はない」
そう一方的に言われ、リンは、遠慮気味に、
「庭について、許してもらって感謝してます。ありがとうございます。
もう少しでいい、色々知りたいって、それで」
「それで? それを勉強してどうする?
君はここから出られない。なのに、何を勉強する必要がある?」
リンは、それでも引き下がりたくなかった。
どうしてもしたいことがある。
どうしても諦めたくないことが。
「だから、少しでいい、ずっとこのままなんて嫌だ」
リンは真剣だった。
「何を言い出すかと思えば、そういうことか。
ここから逃げ出すつもりだな? そのための口実か?」
リンは、そう言われるのは分かっていた。
それでも、
「逃げようなんて、そんなこと考えてない。……逃げられないって知ってる」
「はっきり言ったらどうだ? ここから出せって。
そのためにこんな手の込んだ理由を考えた。そうだな?
あわよくば外に出たい。そう思ってるんだろう?」
マラホイアは、勝手に決めつけていた。
「でも、逃げられないことくらい私にも分かる。
だから、今まで指示に逆らってない。
でも、したいことがある。どうしても諦められない」
リンは、ここに連行されて、初めて意見した。
ここは、ある程度の規則を守れば、比較的自由にさせてくれる。
だから、庭も使わせてくれた。
これ以上を望むのは無理だと分かっていても、それでも望んでしまう。
どうしても我慢が出来なかった。
「花について、もっともっと知りたい。少しでいい」
「少しと言いながら、始めるときりがない。
こんなことなら、庭いじりもここまでだな。
もう十分だろう? これ以上必要ない。すぐに元に戻すんだな」
そう言われて、リンは、我慢が出来なくなった。
「せっかく芽が出たばかりなのに、そんなことさせない。やっとあそこまでになったのに」
リンは、興奮していた。
今にも飛びかかりそうに、椅子から立ち上がった。
「取り押さえろ。逃亡の可能性がある。監視を一段階引き上げろ」
そう言って、マラホイアは出て行った。
同行していた二人の捜査官に体を拘束され、リンは激しく抵抗した。
すると両手を後ろで手錠をはめられ、そのまま部屋に連れて行かれた。
その部屋に、続いて入って来たのは、雑用を担う職員で、リンの部屋の前の庭に入って行った。
そして、マラホイアの指示通り、庭に植えてある全てを掘り起こしていた。
リンは、必死で叫び暴れ、抵抗したが相手にされず、
捜査官二人に拘束されたまま、その状況を見させられた。
リンは、それを見たくなくて、体を逸らしたが、
膝をつくように言われ、視線を逸らすと、髪の毛を捕まれて、見る事を強要された。
「見るんだ。これが今のお前の現実だ。将来に渡って、ここから出ることは、許されない」
しばらくして、作業が終わり、職員は出て行った。
捜査官も全ての作業が終了したのを確認し、リンの手錠を外し出て行った。
リンは、部屋に一人になった。
庭に続くドアは施錠され、出るられなくなった。
しかも、せっかく植えた苗や、種はすべて掘り起こされ、
ここに初めて入れられた時のように、何もなくなった。
日々荒れていくその庭を見続けるのは、リンにとって、これ以上の苦痛はない。
その日から、リンは、感情を表に出さなくなり、指示された報告書も出さなかった。
それがどういう処遇になるか、それを知っていたのか、いないのか。
その翌月より、尋問が再開された。
リンが何を考えているのか。
本当に逃亡するつもりがあるのか。
しかし、リンはどんな問いにも一度も答えなかった。
尋問は手段を選ばなくなっていた。
と、いうのも、まだスピースの全貌がつかめていなかった。
分かっていたつもりだったが、スピースのファイルの削除まで至っていないのではないか。
どう考えても、あっさり過ぎる。
あんなに緻密に作られたものを、スピースが発覚したとはいえ、
そう簡単に削除したとは思いにくい。
ましてや、知能の高いスピースが我々の裏をかくのは簡単だろう。
そこに逃亡説が出た。これは、まだまだ把握してないだけで、
ファイルが残っていて、スピースが、企んでいる何かが表に出るのを恐れているのではないか?
そう考えるとリンの急な態度の変わりようを、理解できる。
考えればいくらでも理由が思いつく。
これは何かある。
誰もがそう考えたから、リンに対して、厳しい尋問が続いていた。
黙ったままでいれば、自分の体が辛くなるだけだと分かっていても、
今までの様に素直になんでも従う、という態度はなかった。
そんな中で、リンにとって、初めての経験となる、自白剤まで使われた。
リンは、自白剤についての知識はあまりなかった。
初めて使われた時、自分を見失いそうになった。朦朧となり判断が出来なくなった。
何か質問されても、自分がどう答えたのか、それさえもよく分からなかった。
ちゃんと座れていたのかさえ。
次に、リンが自分を取り戻すまでに、一週間以上を要した。




