真実
「じゃあまずはウチにくるか?」
「行かない。ここで聞く」
「さいですか」
なぜかしょんぼりするストーカー。
すぐに背筋を伸ばして気を取り直して話し始めた。
「俺には大阪に友達がいるんだ。この間のGWにその友達が大阪案内をしてくれるっていうから、飛行機に乗って行ってきたんだ」
急にストーカーの大阪旅行記が始まってしまい、私と明子は顔を見合わせた。
アイコンタクトの結果、何か意図があるのだろうということで大人しく聞いていた。
「・・・・・・で、そんなこんなで大阪に着いた俺は、空港で待っててくれた友達と一緒に観光して一日目を友達の家に泊まった」
「これちゃんと正樹に関係あるんでしょうね?」
「まぁのんびり聞いててくれ。そして次の日だ。友達が紹介したいやつがいるって言うから、一緒にそいつと待ち合わせている駅まで行ったんだ。なんでも去年の夏休み明けに転校してきて、俺の友達と仲良くなったらしい」
「夏休み明けって・・・」
「そうだ。そいつが加藤だった。加藤はすごい馴染みやすいやつで俺とも仲良くなった。そして俺たちはまた観光・・・というよりも道頓堀に遊びに行った。さんざん遊んだあとに夕食をファミレスで食べてたんだ」
「で、長谷川君は北海道からわざわざ来たの?」
「まあな。こいつが観光案内してくれるって言うからな。飛行機代だけで良いっていうからこいつの家に泊まった」
「まぁ最終日に全額請求するけどな」
「お前鬼か!」
「僕も北海道出身なんだよー」
「へぇーそうなのか。どこらへん?」
「えーと札幌の端っこらへん」
「マジで?俺もそっちの方だ」
「ホント!?もしかして学校も一緒だったりして」
「俺は相野高校だ」
「うそ!同じじゃん!」
「マジでか!!何組!?」
「9組」
「あーなら仕方ないよな。俺1組」
「あー反対側だもんねー。そりゃ会わないかもねー」
「そういやこいつ彼女置いてきたらしいぜ」
「だから彼女じゃないってば」
「どういうことだ?」
「ほら。話してやれよ」
「わかったってば。いじめてるところを助けたら勢いで付き合っちゃった彼女がいたんだ。でもその時には転校も決まってたし、それまでなら別にいいかなーって思って付き合ってたんだ。で、その転校するって言った時に遠距離でもいいって言われちゃって。僕はそんな気はなかったんだけど、向こうは別れる気はなかったみたいで・・・。で毎日のようにメールがくるんだけど、最近はもう返事も返してないかな」
「お、お前はそいつのこと好きじゃないのか?」
「もともと友達以上ではなかったよ。助けたのだってたまたまだし。友達が困ってたら助けちゃうでしょ?」
「まぁ確かにそうだが・・・なんて子なんだ?」
「同じ9組の・・・って今は多分違うけど。吉野君子って知ってる?」
「いや、知らない」
「こんなこと言わないでよ。これは僕たちの秘密だからね?今だから言える~的なやつだよ」
「もちろんだよ!な。隆夫?」
「も、もちろんだ」
一通り話したストーカーがこちらへと目を向けた。
話しながらジェスチャーも加えていたのに、なぜかわかりにくかった。
でも正樹のことだけはちゃんとわかった。
「正樹はわたしのことなんとも思ってなかったんだ・・・」
「君子・・・」
「・・・私なにしてるんだろ?」
「まぁこっちに戻って来て、早速吉野君子を探したんだ。顔がわからないやつを探すのは大変だった」
「ならなんであんたがストーカーまがいのことをしてたのよ」
君子がストーカーに向かって言う。
「少しでも加藤のことを忘れてほしくてな。俺は不器用だからそんな方法しか思い付かなかったんだ。吉野君子を見つけた時、すごいつらそうな顔をしていたのを覚えている」
見すぎじゃない?とも思ったけど、そんな軽口を叩けるような心情ではなかった。
「だから俺は変なやつを演じることで吉野君子につきまとったんだ」
「あんたいいやつだな」
「まぁ困ってるやつがいたらほうっておけないんだ。それに迷惑をかけたのは事実だ。すまなかった」
「いやいや、あんたは悪くないよ。むしろ感謝すべきだ」
明子とストーカーの二人で話が進んでいく。
正樹がホントにそんなこと言ったの?
信じられない。
私は正樹のことが好きだったのに・・・
私の気持ちはどうなるの?
「・・・嘘でしょ?」
「「え?」」
「嘘なんでしょ?正樹がそんなこと言うわけないもん。ねぇ、あなたが勝手に作った話なんでしょ?」
ストーカーの肩をつかんで前後に揺らす。
「残念だが真実だ」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると興奮します。
だんだんと話が暗くなってきました。
ということで次回もお楽しみに!