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イジメ

あの日を境に私はやたらと絡まれるようになった。

一人の時に悪口を言われるのは当たり前で、すれ違いざまに足をかけられたり、上靴が片方だけ全然違うところにあったり、机の中に画ビョウが大量に入っていたりもした。

全部挙げるとキリがないけど、全部私が誤魔化せば隠せる範囲のイタズラだった。

しかし私は明子や加藤君に迷惑をかけたくなかったので隠し続けた。

明子も私と同じで学校には友達が居なかった(学校外にはいるらしい)から一緒にいることが多かったけど、それでも少しだけ明子が離れるタイミングを見計らってやられていた。

それでも私は明子にバレないようにしていた。

陰湿なイジメが始まって1ヶ月が経とうとしていた。


「君子。大丈夫?」

「え?何が?」

「何がって・・・なんか最近ビクビクしてない?」


ドキッとした。

できるだけバレないようにしていたのに無意識のうちに態度に出てしまっていたようだ。


「そんなことないよ。多分昨日見たテレビが怖かったからかも」

「そう?ならいいんだけど。なんかあったら言ってね」





そんなある日。

机の中に手紙が入っていた。

私は二人に気づかれないように恐る恐る開いてみた。


『今日の放課後、校舎裏に来い。来なければ照井にバラす』


校舎裏には学校の中からも、グラウンドからも全くの死角になっている場所がある。

多分そこに来いということだろう。

私は放課後、明子に適当な嘘をついて指示通りに校舎裏に行った。

明子にも加藤君にも迷惑はかけられない。

私が校舎裏についた時には誰もいなかった。

それから10分ぐらい待った。

コツコツとローファーがコンクリートの地面を鳴らす音が聞こえてきた。

だんだん近づいてくる。

ついに私の視界に3人が入った。


「うわ。ホントにいるし」

「何の用?」

「勝手にしゃべるな!」


言いながら一人が蹴ってきた。

私は避けることができずに、そのまま左足に受けて膝を付く。


「お前な。いい加減にしろよ?私たちが忠告してやってるんだから大人しくしてろよ」

「だからただの友達・・・」

「しゃべるなって言ってるだろ!」


また私を蹴ってきた。

今度は一発だけじゃなくて二発、三発と続けて蹴る。

私はついに耐え切れなくなってその場に倒れる。


「なんかむかついてきた。お前の髪って私の髪型をかぶってるんだよな」

「たしかに!」

「ねぇ切っちゃおうよ。ほらハサミもあるし」

「準備いいなぁ。よし。これから散髪してやるよ」


ハサミを持っていない二人が私を無理矢理起こし、両腕を押さえて壁に立たせる。


「ちゃんと押さえとけよ」


髪の毛にハサミが近づいてくる。

髪で済むなら安いもんだと思った。

きっと切ったら満足してイジメが終わるかもしれない。

そう考えていた。

しかし現実はそんなに甘くなかった。

腕を押さえていた一人が言った。


「こいつの制服切っちゃえばもう学校来ないんじゃね?」

「たしかに」

「お前頭いいな。じゃあ散髪から制服の裁断にするか」


髪の毛に迫っていたハサミは方向を変えて、スカートの裾へと向かっていった。

制服を切られたらバレちゃう!

親にも隠してるのに!

私は必死に抵抗した。


「こいつ急に暴れやがって!」

「おとなしくしろ!」


両腕を押さえられながらも必死に抵抗する私。

しかしハサミは止まらない。

ついにはスカートを手で押さえながらハサミを入れてくる。


「何やってる!」


その声に反応して全員が声のした方向に目を向けた。

ハサミを持った女の後ろに加藤君が見えた。


「加藤君・・・」

「吉野さん!?」


驚いて目を丸くする加藤君。

三人はハサミを後ろ手に隠すと、何もなかったかのように私を開放した。


「・・・何してるの?」

「・・・・・・」


私は答えられない。


「私たちと遊んでたんだよ。なぁ?」

「そうそう!」

「たしかに!」


三人は口々に言った。


「そうなの?吉野さん?」


何も言えずにただ立っているだけの私。


「吉野さん。こっちに来て。一緒に帰ろう?」


フルフルを首を振る。


「ねぇ。正樹くん。もうこんなやつに関わるのやめなよ」


一人が言った。


「どうして?」

「だってこんな根暗で地味なやつと、正樹くんみたいな元気な人は関わっちゃいけないと思うんだ」

「たしかに」

「私もそう思う!」

「でも僕は吉野さんの友達だし」

「友達って・・・私たちは友達じゃないの?」

「友達だけど、吉野さんも友達だから」

「じゃあ私たちと吉野さんならどっちを選ぶの?」


私のほうを見てくる加藤君。


「吉野・・・さんかな」

「加藤君・・・」


途端にしおれた様子になる三人。


「わかった。こいつのことが好きなんでしょ!」


ハサミを持っていた女が叫んだ。

他の二人も驚いている。

私はドキッとした。


「・・・うん」

「え・・・」


加藤君は私を見ながら頷いた。


「マジかよ・・・帰る」

「ちょっと待てよ!置いてくなよ!」

「たしかに!」


そう言って三人は加藤君の横を通って去っていった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると興奮します。


一応次で過去編が終了します。

今のところ君子目線でお送りしていますが、真の主人公は最初に出てきたあの男ですからね。

期待していてください。


では次回もお楽しみに!

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