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受験戦争閉幕

なんやかんやで受験が終わった。

みんな見事に合格した。

明子は東京の専門学校、鳴海さんはゲームデザイナーの専門学校、長谷川は北海道で一番ランクの高い大学、私は希望していた大学。

春には全員がバラバラの学校へと進んで行くことになる。

まぁ元々鳴海さんは違う学校だったわけだけどね。

私と長谷川の関係は以前と全く変わらない。

そりゃ少しは進展があったりも無かったりもしたけど、それなりにいい関係を続けている。

正直もう少し進展があってもいいとは思っているけれど、そこは高校生で受験生だからというのもあるかもしれない。

長谷川は私のことをとても大事にしてくれている。

長谷川は推薦で合格を決めたから結構早い段階から受験戦争から離脱出来ていたけど、私はセンターも本試験もちゃんと受けての合格だったから、長谷川とは少しずれる形になった。

その時も私から連絡をしない限りは連絡をしてこなかった。

時々メールはしてきたけども、夜の勉強時間とかに送られてくることはなかった。

それでも私とコミュニケーションを取れないのは辛いのか、学校で昼休みに一緒にご飯を食べようと誘ってくることもしばしばあった。

学校は何かない限り一緒に帰ってはいたけど、お互いに何か物足りないような気はしていた。


そして今日。

受験という鎧を脱ぎ捨てて長谷川と久しぶりのデートだ。

長谷川の『待ち合わせをしたい』という要望があり、同じ駅で電車に乗るにも関わらず、あえて街中での待ち合わせにした。

集合時間は正午0時。

太陽は一番高いところにあるが、気温はまだ高くない時期だ。

色々と暦では春とか言われているけど、辺り一面白さが残っている街並みを見ると、北海道の冬の遅さを感じずにはいられない。

とかちょっと真面目なことを考えたりしながら待ち合わせ場所へと向かう。

待ち合わせ時間までまだ10分ぐらいある。

駅の改札を出て、5分もかからない距離での待ち合わせだから、待ち合わせ時間には十分間に合う。

ちなみにデートプランは長谷川が決めてきてくれるらしい。

少しワクテカしている。


「お?あれかな?」


待ち合わせの場所を見ると、長谷川らしき人物がすでに来ていた。

少し小走りで長谷川に近づく。


「長谷川早いね。待った?」

「いや、今来たところだ」

「じゃあ同じ電車だったのかなぁ?」

「・・・・・・」


少し残念そうな顔をする長谷川。

何か変なこと言ったかな?

そういえば少しづつだけど、長谷川の表情がわかるようになってきた。

今回みたいに少し残念な時は眉の両端が少しだけ下がる。

ホントに間違い探し並みの変化だけど、見慣れてくるとわかるようになった。


「・・・そうかもしれないな」


少し間があってから長谷川が答える。

絶対何かあったんだ。私がさりげなく地雷を踏んだのかもしれない。


「ちょっと!今の間は何?なんかあるなら言ってよ!」

「・・・じゃあ言わせてもらおう。俺が待ち合わせをしたかったのはさっきのやりとりをしてみたかったからなんだ」

「さっきのやりとり?」


そう言って自分が体験していた出来事を思い起こす。

そしてやっと気がつく。


「そーゆーことか!」

「わかっていただけただろうか?」

「わかりました」

「ならデートを始めようか」


そう言って私の手を引いて歩き出す長谷川。

いきなり手を握られたもんだから少しビックリしたけど、慌てて長谷川の隣に追いついて並んで歩く。

今日の長谷川はいつもより積極的だな。

そんなにデートをするのが楽しみだったのだろうか?

ちなみに私は、今日のことを考えすぎてついつい夜ふかしをしてしまうほど楽しみだった。

遠足の前の日は寝れなくなるタイプです。


「そういえば今日はどこ行くの?」

「まずは腹ごしらえだ」


そう言って連れてこられたのは、前に鳴海さんと三人で来たオムライス屋さんだった。

あれ以来来ていなかったので少しテンションが上がった。

元々マックスに近いぐらい上がってたのは内緒。

メニューを聞きに来た店員さんに注文を終えて、食べ物が来るのをしゃべって待つ。

しばらくして両手に注文したオムライスを持った店員さんがやってきて、それぞれの前に置く。

私のはトマトソースっぽいソースがかかったオムライス。

長谷川のは前回と同じ天津飯・・・じゃなくてあんかけオムライス。


「長谷川ってそれ好きだよねー。前もそれじゃなかった?」

「ホントに美味しいんだってば。食べてみるか?」

「え?いいの?」

「もちろん。ほれ、アーン」


スプーンにすくって私の方に向けてくる。

これって・・・うわっ!ちょっと恥ずかしい!

そんなことを思っていても、長谷川はすごく楽しそうな顔をしてるから断ることなんてできないし、私も嬉しくて死んでしまいそうなぐらい嬉しい。

ドキドキと鼓動している心臓を飛び出ないように気を付けながら、向かいの長谷川が差し出したスプーンへと口を近づけた。

口の中に広がるあんかけの風味はとても美味しかった。


「どうだ?美味しいか?」

「うん!おいひい!」


まだ口の中をモゴモゴとさせる私に聞いてくる。

ホントに嬉しそうな顔してるな。

そんな長谷川の顔を見ながら私は、今日のデートを精一杯楽しもうと心に誓ったのであった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると踊り狂います。


「なんやかんや」って便利な言葉ですね。

というわけで最終章です。


次回もお楽しみに!

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