受験勉強
秋も深まり気味な10月下旬。
夕飯を食べ終わった私は、家でセンター試験に向けて勉強をしていた。
『吉野の成績なら今までの過去問を繰り返し解いていけば大丈夫だろ』と先生に言われていたので、少し自信はあったけど、念には念を入れてひたすらケアレスミスを減らすための勉強を繰り返している。
長谷川は推薦を狙うようで、放課後は面接の練習とかに励んでいた。
先生から少し笑顔が足りないと言われて困っていた。
鳴海さんに面接の練習を付き合ってもらっているとの噂。
その鳴海さんはゲームを作るのが夢だったらしく、そっち系の専門学校を志願している。
明子は東京の専門学校に出願して、11月の後半に面接のため一度東京に行くって言ってた。
各自が目標に向かって頑張っている。
私と長谷川の関係だけど、以前健全で穏やかなお付き合いを続けてます。
でもさすがにこの時期になってくると、受験の話とかが多くなってきてしまって、あまりデートらしいデートをしていない。
だからと言って長谷川のことを考えていないわけじゃない。
勉強中にふと集中が途切れてしまったら、すぐに長谷川のことを考えてしまう。
そんな時はメールをしたりして我慢しないようにしている。
そこは長谷川も同じなのか、時々長谷川からもメールや電話がくる時もある。
そして今も机の済に置かれたケータイがオラオラと鳴っていた。
赤いケータイを開いて確認してみると、予想通り長谷川からの電話だった。
「もしもし」
『あぁ!こちらジャックバウワーだ!大統領は無事か!?』
長谷川からの電話は毎回変な内容の出だしで始まる。
「日本に大統領はいませんが私は無事です。どーぞー」
『なにぃ!大統領がいないだと?じゃあ俺は誰を守れば・・・うわっ!やめろ!あー!・・・・・・もしもし。長谷川です』
「今回のは何?」
面白かったけど相変わらずよくわからない内容だったので、笑いながら聞いてみた。
『今回のはあの有名な海外ドラマのマネをしてみた』
「全然会話になってなかったけどね」
『まぁそう細かいことは気にするな。適当にやってるだけだ』
「今日はどうしたの?」
『特に意味はない。ただ単に吉野の声が聞きたくなっただけだ』
嬉しいことを言ってくれるじゃないか。コノヤロー。
まぁ毎回この質問をするとこうやって答えてくれるんだよねー。
しかもそれを聞きたいがために質問をしていると言っても過言ではない。
相変わらずのノロケでごめんなさい。
『今大丈夫だったか?』
「うん。いつも通り過去問やってた」
『そうか。順調?』
「結構順調だよ。8割ぐらいが平均になってきたし」
『目指せ満点だな』
「長谷川は?」
『俺は勉強は大丈夫なんだが、面接が難しい。緊張すると焦ってしまうからどうしても困ってしまう』
「そこは練習あるのみだもんねー」
『心理学科目指してるんだから何かアドバイスしてくれてもいいんじゃないか?』
そう言われて自分の部屋の本棚を見る。
今まではオタク関連の本ばっかりだったけど、今は心理学の本も本棚の隅にいくつか入っている。
「手のひらに『人』って書いてたくさん飲み込んだら落ち着くらしいよ」
『わかった。もしそれで緊張したら吉野のせいだからな』
「なにそれ。人のせいにしないでくださいー」
二人で電話越しにアハハハと笑う。
『じゃあそろそろ切るかな』
「うん。頑張ってね。おやすみ」
『吉野も頑張りすぎるなよ。おやすみ』
「・・・長谷川。大好き」
こちらから切る直前にボソリとつぶやく。
素直に気持ちを伝えて気合を入れ直したところで、ケータイを机の元あった場所に置いて勉強を再開する。
と思ったら、またケータイが鳴り始めた。
音が『ザ・ワールド!』なのでメールのほうだった。
『最後のはなんだ!?凄い嬉しい!(*´∀`*)勉強できねーww』
長谷川からのメールだった。
頑張ってくれるかと思ったら逆効果だったみたいだ。
とりあえず返信する。
『逆効果だったかOTL 勉強頑張りなさいww』
すぐに返信が来る。
『超頑張るしww明日テストなら満点確実だべヽ(*´∀`)ノ』
返信はせずにそのままケータイを閉じた。
あんなに喜んでくれるなんて、可愛いやつめ。
そんな長谷川が大好きすぎて困る。
普通逆なんじゃないか?と思う時もあるけど、人それぞれなので、私と長谷川の関係はこんな感じなのだ。
普通じゃなくたっていいじゃない。
だって人間だもの。
そんなことを考えながら面接と受験前には、長谷川に『好き』と言ってみることにした君子であった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると大変喜びます。
さて。
最終回が近づいてきました!←え
次回もお楽しみに!




