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親友として(明子視点)

加藤くんが戻ってきたという知らせを、長谷川くんから聞いた私はまた君子が壊れてしまうのかと思った。

教室に戻った私は、午後の授業中チラチラと君子のことを見ていた。

何か考え事をしているようには見えたけど、悩んで悩んで壊れそうという感じではなかった。

どうせ意味のわからない英語の授業だったから、机からルーズリーフを一枚取り出してスラスラと一行目に文字を書いた。

それを隣の席の君子に渡す。

いわゆる筆談と言うやつである。


『加藤くん戻ってきたらしいけどどう?』


紙を受け取りこっちを向いた君子にアイコンタクトで返事をすると、何かを書いていた君子から紙が戻ってきた。


『ちょっとビックリしたけどどうもしないよ?でもせっかくだから話はしたい』


予想以上に冷静みたい。

変に気を使っていた私と長谷川くんが変に見えるほどだった。


『もっと怖がってるかと思ってた』

『怖がっても仕方ないしね。強くなるって決めたし』

『強すぎるだろw』

『でも殴ってやりたいかな。過去形だけど怒ってたし』


聞き流していた授業が終わり、筆談を終了して直接君子と話した。

そして君子は長谷川くんの元へ、そして私は加藤くんを捕獲してくるという作戦を承った。

教室を出て加藤くんがいるはずの1組へと向かう。

帰宅する生徒達が珍しげに私を見てくるが、モブキャラの存在など全く気にせずに加藤くんだけに声をかけた。


「加藤くん」

「あ、照井さん!久しぶり!」

「ちょっとツラ貸せや」


どうしてあんな口調で言ってしまったのだろう。

今思い出すと凄い後悔している。

そんなこんなで私は加藤くんの捕獲に成功して、空気を完璧に読みきった1組の生徒達がそそくさと教室から出ていった。

1組のみんな!ありがとう!そして、ありがとう!

二人きりになった教室で私は教壇に立って君子にメールをする。

しばらくしてダダダダダっと廊下から足音が聞こえ、教室のドアが開いたと思ったら、


「加藤正樹っ!」


と全力で叫ぶ親友が現れた。

その姿に笑いがこみ上げてきて、吹き出しそうになったけど必死に腹を抱えて我慢する。

でもシリアスなシーンなのに笑うのもアレなので、さりげなく教室をでた。

廊下の壁に寄りかかって終わるのを待っていると、長谷川くんが息を切らして走ってきた。

あんなに必死な表情の長谷川くんは珍しかった。


「あれ?長谷川くんじゃん。なした?」

「吉野が加藤をぶん殴るって言って走っていったから追いかけてきたんだ」

「今教室の中だよ。でも入ろうとしたら私がぶん殴るけどね」


穏やかじゃない会話をしてファイティングポーズをとる私。

教室に入れないとわかって息を整えた長谷川に、ここまでの経緯を話した。


「そうか。決着か」

「なんか君子も強くなりたいんだってさ。ここは親友と彼氏として見守ってあげようよ」

「そうだな」


二人で廊下に座り込み、君子の話をしていると、教室の中から何かを叩いたような大きな音が聞こえた。

それからしばらくしないうちに、顔を押さえた加藤くんだけが教室から出てくる。

隣で座っていた長谷川くんが立ち上がり、加藤くんを見据える。


「加藤」

「長谷川くんか。久しぶりだね」


言うなり教室の中をチラリと見た加藤くん。

私はそれにつられるように中を見る。

教室の真ん中の席に座ってうなだれている君子の姿があった。


「俺は加藤を殴ってやりたいと思っていた。でもここで手を出してしまうと、吉野が頑張った意味が全く無くなってしまう」

「なんだ・・・付き合ってるんだ」

「あぁ。俺なら吉野にあんな顔はさせない」

「君なら出来そうだよ。僕は君ほど必死になれないもん」


そう言って私たちに背を向ける加藤くん。

それと同時に教室の中に入っていく長谷川くん。

二人のやりとりに唖然としてしまって出遅れてしまう私は、去っていく加藤くんをただ呆然と見ていた。

そして教室の中に目をやると、長谷川くんが椅子に座った君子を後ろから抱きしめていた。

とても入れる空気では無かったので、そのままカバンを置きっぱなしにしている自分の教室へと足を向ける。


「私も強くならなきゃなぁ」


少ししか残っていない生徒がいる廊下で静かに呟いた。

君子は凄い強くなった。

親友の君子はあんなに強くなったんだから、次は私の番かな。

あとになればなるほど、言いにくくなって直前まで言えない気がする。

でも自分で決めたことだから後悔はしてない。

君子もよく『後悔は後からするもんだ!』って言って本とか買ってるしね。

この際だから決めてしまおう。


「今日から一週間以内に君子には言おう」


なんか口に出して決意表明をすると緊張してきた。

妹ちゃんに言ったときはすごい残念そうな顔してたから、君子もそんな感じなのかなぁ?

でも今なら長谷川くんもいるから問題ないでしょ。



そう心でいろいろな決意をして、自分の教室に入っていく明子ちゃんなのでした。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると大変喜びます。


今回は明子視点で前回の舞台裏でした。

それでも長谷川はイケメンですねー


というわけで次回もお楽しみに!

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