友達
学年が変わり、高校2年の4月。
学年が上がる際のクラス替えがあったけど、私は明子と同じクラスになれた。
加藤君とも同じクラスだ。
加藤君とは明子ほどではないけどそれなりに親しい関係になっていて、連絡先を交換したり私の趣味を打ち明ける程度の仲にはなっていた。
私はオタクである。
明子と友達になった時は
「ねぇ吉野さん」
「何?というか誰?」
「誰ってヒドイな。私は照井明子。そんなことより、そのケータイに付いてるのって・・・」
「え?わかるの?」
「まぁね。私も好きだし」
「へぇ。ちょっと意外かも」
「それのどんなところが好き?」
そんな感じで明子とは仲良くなった。
でもオタクであることは二人とも隠していた。
同じクラスにオタクっぽい集団がいるんだけど、あからさまに避けられていた。
時々「フヒヒw」とか「マジで萌えるよな!」とか大声で言ってるのを見ると、あんなのと一緒にされたくない気持ちが芽生えた。
どうしてあーゆー人たちはオタクアピールをするのだろう?
吹っ切れたというよりも、何かしらのオタクであることを自慢しているように見えて仕方がなかった。
そんなこともあるせいか加藤君にも隠していたんだけど、これからも友達でいるためには話しておかなければいけないと思いそれとなく話してみた。
「私オタクなんだ」
「へぇー。そうなんだ」
「・・・それだけ?」
「え?なんかごめん。突っ込んだほうがよかった?」
「いや、なんていうか、オタクだよ?」
「えーと・・・別にいいんじゃない?個性だよ。個性」
全然気にしてなかった。
むしろ喜んでた。
「これって僕しか知らないの?」
「まぁ明子は知ってるけど」
「じゃあ男子では僕だけ?」
「まぁそうなるね」
「エヘヘ」
なんかよくわからないけど、軽蔑されたりしなくて良かったと思った。
オタクのことを知っても全然態度が変わらなくて良かった。
加藤君はわりと誰とでも話すみたいで友達も多かった。
話しかけられても嫌な顔一つしないで楽しそうに話していた。
今回もクラス替えがあった直後なのに、クラスのほとんどの人の名前を覚えていた。
今も明子と三人でその話をしていた。
「え?普通じゃないの?」
「加藤君のいう普通ってハードル高くない?ハードルってゆーか棒高跳びの域なんだけど」
「照井さんはもう覚えてるでしょ?」
「名前は自然と頭に入っていくものですよ。加藤君や」
「つまりどういうこと?」
「まだ覚えてないってこと。で、君子は?」
「私に聞いちゃうの?」
「「ですよねー」」
三人で笑った。
こんな日が続くと思ってた。
「アンタ最近調子乗ってない?」
ある日、トイレに行った明子を見送った教室で同じクラスの女子何人かが私の席へ来て言った。
もちろん名前は覚えてない。
加藤君は他の友達とどこかに行っていた。
私は意味が分からず聞き返す。
「調子に乗ってるって?」
「最近アンタ正樹君と仲良いみたいじゃん。それが調子乗ってるって言うんだよ」
「それがどうかしたの?」
「そーゆー態度がムカツクんだよ!」
ガンッと机を蹴る。
その音にビクッとなって教室にいた人たちの視線が私の席に集まる。
しかしそれも一瞬で、みんな視線をすぐにそらす。
私は思った。
これがイジメってやつか。
実際に自分が当事者になるなんて思ってなかったから全然実感がなかった。
でも現に今、明子も加藤君もいないタイミング、つまり私が一人の時に狙ってきたってことはそーゆーことだろう。
からだはいつもよりぎこちない動きをしているけど頭は冷静だった。
「なんか言えよ」
「私と加藤君はただの友達・・・」
「アンタに無理矢理合わせてるだけだっての。それぐらい気づけよ」
最後まで言わせずに連れの女子が笑う。
「とにかく調子に乗りすぎんな。次は無いからな」
「君子?」
明子が教室に戻ってきた。
それを確認すると女子達は去っていく。
少しホッとした。
「どうしたの?なんかあった?」
「ううん。ちょっと話してただけ」
「そう?ならいいけど」
教室の異様な空気に気づいて明子が心配してくれたのに、私はごまかしてしまった。
それが全ての始まりだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。
しばらく鬱展開が続きますが、あと数話の辛抱です。
お付き合いください。
今回は勢いだけじゃないんだからね!
ちゃんとラブコメにしてやるんだからね!
ということで次回もお楽しみに!