表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/37

青春パワー

放課後。


私は長谷川に言われた通りに、生徒同士の恒例の待ち合わせ場所である2つの玄関の間にやってきた。

私が到着したときには長谷川は既に待っていてくれた。

夏休み明けの学校で、長谷川と初めての待ち合わせをしたことになるのだが、まさかこんな形で待ち合わせすることになろうとは・・・

ちょっと複雑かも。

みんなは結構心配してくれてるみたいだけど、私は前とは違って強くなっていると思ってる。

だからこんなことをしなくてもいいと私は思ってる。


「お待たせー」

「おう。俺も今来たところだ」


片手を上げて長谷川に声をかけた私に、同じく片手を上げて長谷川も応えた。

うひゃー!なんか恋人同士っぽくていいかも!

なんかこの状況を楽しんでいけそうな気がしてきた。


「喜んでいるところ申し訳ないが、そろそろ帰らないか?」


どうやら楽しめそうなのは私だけみたい。

長谷川はまるでSPみたいな動きで私の手を引き歩きだした。

長谷川に引っ張られるようにして小走りで付いていく私。

校門の前まで引っ張られて気づいた。

なんか・・・なんか違う。

そう思ったら自然と足が止まった。

足を止めた私のことを不思議に思ったらしく、足を止めて私を振り返る長谷川。


「どうした?早く行かないと加藤が」

「ねぇ長谷川!」


私の声が長谷川の言葉を遮る。

他の生徒が不思議そうにこちらを見ながら歩いている。

今言わなきゃ。あとでなんて言えない気がした。


「あのね。私、明子と長谷川が心配してくれてるのはとても嬉しい。でもなんか違う」

「違うって何がだ?」

「なんか私も口ではうまく言えないんだけど、また正樹から逃げてるみたいで嫌だ」

「俺は吉野にもう悲しい顔をして欲しくないから・・・」


そう言って少しだけ表情を暗くして足元を見る長谷川。

もちろん長谷川が私のためにしてくれてるってことなのもわかってるつもりだ。


「長谷川。これは私の問題だから。私、長谷川に励まされて・・・いや、あれは励まされたのかどうかわかんないけど。アハハ。でもなんだかんだであの時長谷川がいなかったら、今の私は居なかったからもしれない。だからすごい感謝してる。普段はあんまりこーゆーこと言わないけど、明子にも感謝してる」


少し照れくさくなって頭をポリポリとかく。

よし。まだ余裕はある。


「だから私、今から正樹に会ってぶん殴ってくる!」


そうやって長谷川に向かって宣言すると、踵を返して玄関へと向かう。

長谷川が私の背中に何か言っていたが、もう聞いてやらない。

全部は正樹とのことが片付いてから聞いてやるつもりだ。

これで嫌われても仕方ない。私が悪いんだもん。

後悔は色々済んでからするもんだ。

だから今はとにかく一つの目標に向かって走ってやる!

それが今日の午後の授業中に、先生の話を聞かないで私が出した答えだった。

ちなみに明子にはもうこのとこを伝えてある。

きっと明子は正樹を捕まえていてくれているはずだ。

カバンからケータイを取り出す。

開いてみると、案の定メールが一件来ていた。


『犯人逮捕!現在1組の教室前で待機!』


さすが私の大親友。やることはやってくれる。

明子には今度何かおごってあげようと思う。300円以内で。

長谷川と来た道を走って戻り、玄関で靴を履き替え、階段を1段飛ばしで駆け登る。

すれ違う人からは少し変な目で見られているような気もしたけど、どうせあと半年も無い付き合いだ。

今更変なキャラだと思われてもどうでもいい。

私も全然知らない人達ばっかりだし。

一気に階段を駆け登って、3年1組の教室がある2階へとたどり着いた。

いつもの癖というのは怖いもので、うっかりいつもと同じ階段、つまり1組とは反対の階段で登ってきてしまったので、廊下を反対側までダッシュする羽目になった。


「うぅっ・・・さすがに恥ずかしい・・・」


廊下にいた人たちの視線が私に集まる。

でもこのからだの奥底から沸き上がる青春パワーを止めることは誰にもできなかった。

もちろん私にも制御できなかった。

きっと最初で最後の大爆発になると思う。

そう考えるとテンションが上がってきた。


「加藤正樹っ!!」


一組の教室に着くなり、思わず溢れ出す青春パワーで正樹の名前を叫んでしまった。


「・・・君子?」


教室の中には、真ん中の机に腰を掛けてあっけに取られた顔の正樹と、教壇に立って腹を抱えて必死に笑いを堪えている大親友の明子だけしかいなかった。

ちらりと明子を見て、200円以内の物をおごってやることに決めた。

そのまま正樹を見る。


「正樹。話したいことが山ほどあるんだ」

「だと思ってた。僕も照井さんに呼び出されたときに思った。覚悟を決めてきたからなんでも答えてあげるよ」


空気を読んで教室を出ていく明子。

教室は必然的に私と正樹だけの閉鎖空間となる。

少し悲しそうな顔をして話す正樹。

きっと罵られたり、殴られたり、踏んづけられたりすると考えていて、そんな顔をしているのかもしれない。

そして私は正樹に向かって口を開いた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

感想とか書いていただけると感謝感激雨嵐です。


今回は続きが気になるように書いてみました。

次回の展開が気になるかもしれませんが、次回まで我慢しててくださいな。


ではでは次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ