デレ期
現在。午後4時。
場所。吉野君子宅。
状況。長谷川と君子の部屋にて二人きり。私が勉強机の椅子、長谷川は前回同様クッキー型クッションの上に座り本棚を物色中。明子は一美の部屋。
感情。ものすごいドキドキ。
表情。ニヤつく顔を抑えるのに全力全開。
行動。椅子の上に座ったまま楽なポーズ。
うん。大丈夫だ。問題ない。
内面は大変なことになってるけど、いつも通りの私にしか見えないはずだ。
明子は明子で、あの一美の元へ何も知らずに行ったのだから心配ではある。
しかし今は自分のこと最優先だ。
それにしてもホントに来るなんて・・・
長谷川も女子高生の部屋にお邪魔するんだから、なんかちょっとは遠慮とかなんかそーゆーのをして欲しい。
でもそんな長谷川が良いわけであって。
・・・きゃー!私ってばなに言ってるんだろ!
頭の中で顔を押さえて悶える私。
そんなことばかり考えていて、ニヤける顔を長谷川には見せられないと思い、表情筋をフル稼働させている。
三次元でもモザイクとかつけれたらいいのに。
「そういえば知ってるか?」
「え、えっ!?何!?」
「・・・大丈夫か?」
急にノーモーションノールックで話しかけられたから声が裏返ってしまった。
長谷川のバカ。話しかけるなら話しかけるって言ってよ!
「大丈夫だ!問題ない!」
「いい装備は出せないけどな。それでだ。この漫画が来年の春にアニメ化するって知ってたか?」
「アニメ化?もうするの?」
長谷川が見せてきた漫画はまだ3巻までしか発行されていない漫画だ。
「らしいぞ」
「でも私アニメってそこまでチェックしてないからわかんないなぁ」
「俺も知らなかったんだが、たまたまネットで見かけてな」
「ネットか・・・」
一応この部屋にもノートパソコンがある。
もちろんニコニコできる動画サイトかアニメを見るぐらいである。
公式サイトとかブログとかも何も見ないからパソコンさんがかわいそうと思う日もある。
だがそれも仕方ない。
だって見たいものがないんだもん。
「それはそうと吉野さん」
「なんですか長谷川さん」
「ひとつお願いがあるんですが」
「お願い?」
急に改まってお願いって・・・
もしかしていくら二人きりだからってエッチなお願いとかは
「この本貸してもらえませんでしょうか?」
「・・・で、ですよねー」
長谷川に限ってそんなことするわけないよねー。
私の脳みそが腐ってやがる。
「やっぱりダメか?」
「いやいや全然いいけど、どれ?」
「これだ」
長谷川が本棚から一冊抜き取ったのは少女漫画だった。
でもまだ3巻までしか出ていない。
「それがいいの?まだ巻数も出てないんだし買えばいいのに」
「いやその・・・しいじゃ・・・」
「え?なんだって?」
横を向いて急に小声になる長谷川。
何言ってるのかわからないので、椅子から立ち上がって身を乗り出す。
「だからその・・・恥ずかしいじゃないか」
「は?」
「この歳にもなって少女漫画をレジに持っていくとか恥ずかしいだろ?」
「だろ?って聞かれても、私は女だし恥ずかしいなんて思ったこともないからわからないし。それに店員さんとかだって気にしないと思うよ?」
「いや、それは分かっているんだが・・・」
何この生き物。
超可愛いんですけど。
無表情なくせに微妙に赤くなって恥ずかしがってるし。
うわー頭撫でてー。
「吉野?」
「長谷川・・・可愛いな」
「・・・は?」
やばい!つい口に出しちゃった!
これどうしたらいいんだ!?
「吉野・・・可愛いってどういうことだ?」
「いや、その、頭の中で考えていたことが口に出てしまったというかなんというか・・・」
「もしかして吉野・・・俺のこと・・・」
嘘っ?そーゆー展開!?
まだ早いって!
「俺のことBLのネタにしてるのか?」
「いや、実は・・・えっ!?いやいや!してないよ!そんなことしてないよ!」
「なんだよその慌て方は。絶対にしてただろ」
「してないってば!私BLとか興味ないし!」
「本当か?なら信じるけど」
うはービックリした。
二重の意味でビックリしたわ。
顔が熱くなったので両手で顔を仰ぐ。
まさかそんなこと考えていたとは。
でもなんかもったいないことしたなぁ。
「それにしても吉野はBLとかは読まないんだな」
「一応知識とかはあるけどそんなに興味がないかな。もしかしてまだ疑ってるの?」
「吉野を信じるよ。女のオタクっていったら半分以上がBL好きのような気がしてたんだ。だから吉野もなのかなと思ってな」
「じゃあ長谷川は興味あるの?」
「勘弁してくれ。兄さんみたいに年の近い兄弟がいると抵抗がありすぎてダメだ。しかも双子だとなおさらだな」
もし長谷川と鳴海さんなら鳴海×長谷川かな?
でも鳴海さんは誘い受けとかもできそう。
長谷川は無表情で落ち着いてるから攻め?
でもさっきのあの恥ずかしがってるところを見ちゃったから受けにしか見えなくなってきた。
「吉野。今考えてたことを全部話してみろ」
「げ。マジですか?」
「俺は怒らないから話してご覧」
すごい満面の笑顔(演技)でこちらを見てくる長谷川。
椅子から降りて正座をする私。
大人しく全部吐いて楽になろう。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
感想とか書いていただけると執筆意欲が高まります。
さてさて長谷川をデレさせてみました
次回は一美のターンです。
次回もお楽しみに!