待ち合わせ
私が長谷川に頼まれたのは『一緒にオタトークがしたい』と言うことだった。
あー見えて長谷川は友達付き合いが下手くそらしく(特に意外じゃなかった)、あまりオタトークをしたことがないらしい。
でも私をストーキングしてる時に垣間見せた、あのオタクならではの返しが気に入ったらしく大絶賛していた。
そりゃネタで振られたらネタで返すのが常識だしね。
しかも真正のジョジョラーに出会ったということもあって、一回腰を据えてじっくりと話をしたかったとのこと。
その話を教室に戻ったら明子にした。
「うはっ。やりおる。長谷川やりおる」
「どういうこと?」
「これで君子に好意が無いってゆーのがすごいな」
「!?」
「私はお邪魔しないから楽しんでおいでよ」
「ちょっと!一緒に来てくれないの?」
「だってジョジョラーじゃないし」
つまり放課後に約束した私からのお礼は、私と長谷川のデート(長谷川はそんなこと思っていない)ということになった。
言われてみればそうだよね。
放課後話がしたい→男女二人きり→カップルにしか見えない→はたから見ればデート
こりゃ大変なことになった。
私だってまだ長谷川のことを好きになった訳じゃないし、長谷川だって私に好意が無いっていうのを言ってるからね。
いや、でもこの場合ってどうなるんだろ?
好意をもってくれたとして考えるべきなのかな?
でもでもただ単にあの時は答えを搾り出した結果、一緒にオタトークしたいって苦し紛れに言っただけかもしれないし。
なんかよくわからなくなってきた。
長谷川も全然表情筋を使って話さないから、感情がよくわからない。
私をストーキングしてたときはすごいコロコロ表情が変わってた気がしたんだけど、あれは演技だったのかなぁ?
ってゆーか・・・私はあいつのどこが好きなんだ!?
いやいや、別に好きじゃないし。
そんなこんなで放課後。
約束通りに待ち合わせをしている東と西の玄関の中間地点に来た。
互いの玄関が違うので、必然的に外での待ち合わせになった。
でもいざ到着して後悔した。
2年間すごしてきて全く知らなかったけど、この場所はカップルたちの待ち合わせ場所になっているらしく、1年も2年も関係なく、カップルたちの片割れみたいな人が待っている。
なんかここにいたら『私彼氏待ってます』みたいなオーラを出しているように見えるんだろうか?
いやいや、そんなオーラ出してないし。
今の私はきっと無表情だし。
ブチャラティのように冷静沈着な顔してるはずだし。
「何ブツブツ言ってるんだ?」
「うおっ!」
「うおっ!って・・・」
突然後ろから話しかけてきた。
長谷川には『背後から忍び寄るスキル』がついているのか?
教室のときといい今といい後ろから声をかけすぎじゃないか?
「びっくりするじゃない。話しかけるなら正面からきてよ」
「仕方ないだろ。西玄関から出たらこっちから来るのは普通だろ。吉野が東側向いてたから後ろから話しかけても不思議ではないと思う」
「た、たしかに」
意外と理論的な思考の持ち主だな。
星の本棚とか入れるんじゃない?
「とりあえずここから離れない?」
「ん?わかった。歩きながら話そう」
そう言って校門へ向かって並んで歩きだした。
なんか変にドキドキしてきた。
チラッと長谷川のほうを見たけど、相変わらずの無表情だった。
「そういえば照井はどうしたんだ?一緒じゃないのか?」
「なんか用事があるから先に帰った」
「そうか」
沈黙。
そういえば長谷川と二人だけで話すのって、ストーカーの時以外で初めてかも。
何話したらいいのか全然わからない。
「そういえば一つ聞きたかったことがあるんだが」
「何?」
「俺がストーキングしていた時、どう思っていたんだ?」
「ウザイと思ってた」
即答。
それ以外に思いつかなかった。
「いや、そうじゃなくて。こいつ変なやつだなーとかってことだ」
「ごめん。ちょっと意味が分からない」
ウザイが答えだとダメなのかな?
すごい的確な答えだと思うんだけど。
「なんて言えばいいのか・・・。たとえば俺は吉野のことが好きな振りをしていた。でも吉野は加藤が好きだった。その状態で告白してきた俺にどんな感情を持っていたのかと思ったんだ。たとえば『少し好きかも』とか『こいつ私を好きになるなんて変な奴』とか」
この間の公園でも思ったけど、説明下手くそだな。
多分頭の中ではわかってるんだけど、人に伝えるのが凄い苦手なんだろう。
でもそんな長谷川は不器用なりに伝えようとしてくれているのが私は嬉しい。
・・・嬉しい?
なんでそんなこと思った?
「で、どう思ってた?」
ひとしきり話した長谷川が相変わらすの無表情で聞いてくる。
私の答えは最初の質問から変わっていない。
「それでもやっぱりウザかった」
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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